26 / 35
十月
十月十九日
しおりを挟む
十月十九日。
救いはないのだ。
夜朧城に四人とも集まるなど稀を見ない光景だとは思うも、ひとつ欠点があるとすれば風見と愛染の二人にとっては少々寒さがこたえるものだ。
夜朧の技術ではまだ薪を燃やして暖をとる程度のものなのだから期待はできないし、これしきで根をあげる聖奈はおろか、極寒の時雨の神まで居るとなると寒さには強すぎる。
しかし、聖奈と恵麻は寒さにはびくともしないが、玄弥と恋にはどうにも苦手。
「寒いぜ……誰かおでんでも買ってこいよ。 お金出すからよ。」
持参した寝袋に毛布を詰めてミノムシの状態の玄弥はむっくりと一言放つと、布団を敷いて暖まりながら顔を出してる恋も反応し出す。
「良いわね、寒い日のおでんは格別よ。」
着物を着ている聖奈は暖かそうなのだから、室内が十度前後でもものともしない。
「具材があれば御作りいたしますよ。」
元から寒さに強い恵麻。
言わなくてもわかる通りだ。
「おでんは買ってくるからこそ、美味しいものもあるんですよー。」
コンビニで手軽に購入できる時代だが、夜朧にはコンビニなど無いため、燎煉のふもとまで行くしかないが、誰も行きたがらないのは当たり前。
しかし、恋はニヤッと笑うとポータルを開いてはあるものを取り出す。
「ロシアンルーレットで決めるわよっ!」
木曜力を詰め込んだ弾丸と、リボルバーの拳銃をニュッと取り出す。
「物騒だなー。」
「【木曜魔法・エアシューター】を限り無く弱くしてあるから、当たってもポンッ……程度よ。」
実弾でやったら脳ミソがぶちまけるのはごめんなので、恋なりの配慮なのだろうが恵麻は苦笑い。
過去にも恵麻と恋はやったことがあるのっが、本人はポンッ程度とは言ったものの、ボンっと重い一撃だったのを思い出したのだ。
「これは……どう扱うのでしょう?」
聖奈はリボルバー拳銃を持ち上げるとじっくりと観察するも、彼女は火縄銃しか扱ったことが無いため、このような片手の拳銃は異質なものとしか思えないのだ。
すると恋はリボルバーを返してもらうと目隠しをし、シリンダーに一発の弾丸を装填しては激しく回転させてはピタリと止めてセットする。
「六分の一の確率よ……。 」
どこに一発が装填された見えないしわからないが、恋は引き金をガチンと引く。
「……。」
数秒ほどの静寂な時間が流れると、恋は目隠しを外しては玄弥に渡す。
「次は玄弥の番よ。」
「悪運の強いヤツめ……まぁ、俺も余裕でセーフだな。」
玄弥は目隠しをしながらシリンダーを回転させては止めるも、拳銃を頭に突きつけると三人は緊張の一瞬が訪れる。
恋側からは見えたものの、シリンダーの断面図を見る限りでは弾丸が見えないためか、下か上かの二択にわかれてしまう。
――玄弥、どう出る?
恋もドキドキしだすも、玄弥は天井に向かって銃口を向ける。
「これには弾丸が入ってるな。」
【パァアンッ!!】
クラッカーのような破裂音が響き渡ると玄弥は目隠しを外し、ニヤリと微笑む。
これでもし、弾丸が入っていなければ玄弥の強制負けなのだが、玄弥も的確な判断を下したのだから勝ちの扱い。
「どこに弾丸があるか止めた時点で音でわかるんだぜ。 へへっ、痛ぇっ!? ウーン……。」
ドヤ顔の表情だが恋にシバかれ悶絶する。
「撃つ必要ないでしょ!? 貴重な弾なのにぃ~っ!!」
二人のコントが極めるなか、聖奈は恵麻に目隠しを施しては準備万端にさせるも、恵麻は頬を染めてはモジモジしてしまう。
「た、たまには目隠しなんて……わ、悪くないです。」
「次は私にもやらせてくださいね。」
そんな茶番を見て玄弥も恋もドキドキしながら、モジモジする恵麻を見つめるも、面白いことを浮かんだようで、玄弥も滅多に使わない拳銃を今度は使用することに。
「しょうがねぇよなぁ? なら、俺のサバゲー用のヤツを貸してやるかぁ! 弾丸使って悪かったなー。」
あからさまな態度の玄弥だが、恋は玄弥に小声でヒソヒソ話。
「ちょっと、ロシアンルーレットよ? なんでオートマ拳銃な訳よ……っぷぷ、絶対じゃない!」
「……?」
オートマチック拳銃を見てもいまいち理解できない聖奈は、勝手に拾い上げると恵麻に渡してしまう。
「お二人がヒソヒソしてるので話が進まないので、私たちで進めましょうね。」
ただし、恵麻は数秒間玄弥の拳銃を握りしめると目隠しを外してはプンスカ怒ってしまう。
怒ってると言っても軽くて、彼女の性格では本気で怒れないものの、可愛らしい拗ねた感じのものだ。
「なんで私だけオートマチックなんですか!? ロシアンルーレット以前に絶対ですよ。」
「いいからさっさと引き金引いて買ってこいよ……。 お釣りはあげるからよ。」
玄弥は寝袋に格納されてはめんどくさそうに言うも納得出来ないが、聖奈も小腹がすいてきたのか、行ってくるように催促する。
聖奈が誰かに頼みを申すのは珍しいが、燎煉は苦手なようなのであまり行きたがらない。
「あらら……えーと、恵麻様は下りない……と言うことは、弾丸は入っていないと見なしますよ。 確かめのために撃ちますよ。」
オートマチックもリボルバーも違いなどわからず知識不足だが、引き金を引けば弾丸が出るか出ないかの勝敗はわかってきたので、恵麻に向けて引き金を引いた。
「ちょっ!?」
突然のことに恋は止めにかかろうとはしたが時はすでに遅かったようで、雷が落っこちたような爆発音が響き渡る。
【バァアアァァンッ!!】
「きゃあっ!?」
聖奈はすさまじい反動でズテンと転がってしまうもい、もはや空気の弩砲と言っても過言じゃない空気砲に恵麻はおろか揉みくちゃになってる玄弥にまで被弾しては、運悪く天守閣の縁側から吹っ飛ばされて燎煉の方角へと星になって行く。
「玄弥までとばっちりを受けたわね……いたた。 玄弥の拳銃、何てメチャクチャな威力……。」
「うーん……。」
聖奈は目を回してダウンしてはその場に伸びてしまったようで、二人がおでんを買って帰ってくるまでは、恋が介護して揚げてたそうな。
地獄確定のルーレット。
確定演出は熱くても、これはイヤです。
救いはないのだ。
夜朧城に四人とも集まるなど稀を見ない光景だとは思うも、ひとつ欠点があるとすれば風見と愛染の二人にとっては少々寒さがこたえるものだ。
夜朧の技術ではまだ薪を燃やして暖をとる程度のものなのだから期待はできないし、これしきで根をあげる聖奈はおろか、極寒の時雨の神まで居るとなると寒さには強すぎる。
しかし、聖奈と恵麻は寒さにはびくともしないが、玄弥と恋にはどうにも苦手。
「寒いぜ……誰かおでんでも買ってこいよ。 お金出すからよ。」
持参した寝袋に毛布を詰めてミノムシの状態の玄弥はむっくりと一言放つと、布団を敷いて暖まりながら顔を出してる恋も反応し出す。
「良いわね、寒い日のおでんは格別よ。」
着物を着ている聖奈は暖かそうなのだから、室内が十度前後でもものともしない。
「具材があれば御作りいたしますよ。」
元から寒さに強い恵麻。
言わなくてもわかる通りだ。
「おでんは買ってくるからこそ、美味しいものもあるんですよー。」
コンビニで手軽に購入できる時代だが、夜朧にはコンビニなど無いため、燎煉のふもとまで行くしかないが、誰も行きたがらないのは当たり前。
しかし、恋はニヤッと笑うとポータルを開いてはあるものを取り出す。
「ロシアンルーレットで決めるわよっ!」
木曜力を詰め込んだ弾丸と、リボルバーの拳銃をニュッと取り出す。
「物騒だなー。」
「【木曜魔法・エアシューター】を限り無く弱くしてあるから、当たってもポンッ……程度よ。」
実弾でやったら脳ミソがぶちまけるのはごめんなので、恋なりの配慮なのだろうが恵麻は苦笑い。
過去にも恵麻と恋はやったことがあるのっが、本人はポンッ程度とは言ったものの、ボンっと重い一撃だったのを思い出したのだ。
「これは……どう扱うのでしょう?」
聖奈はリボルバー拳銃を持ち上げるとじっくりと観察するも、彼女は火縄銃しか扱ったことが無いため、このような片手の拳銃は異質なものとしか思えないのだ。
すると恋はリボルバーを返してもらうと目隠しをし、シリンダーに一発の弾丸を装填しては激しく回転させてはピタリと止めてセットする。
「六分の一の確率よ……。 」
どこに一発が装填された見えないしわからないが、恋は引き金をガチンと引く。
「……。」
数秒ほどの静寂な時間が流れると、恋は目隠しを外しては玄弥に渡す。
「次は玄弥の番よ。」
「悪運の強いヤツめ……まぁ、俺も余裕でセーフだな。」
玄弥は目隠しをしながらシリンダーを回転させては止めるも、拳銃を頭に突きつけると三人は緊張の一瞬が訪れる。
恋側からは見えたものの、シリンダーの断面図を見る限りでは弾丸が見えないためか、下か上かの二択にわかれてしまう。
――玄弥、どう出る?
恋もドキドキしだすも、玄弥は天井に向かって銃口を向ける。
「これには弾丸が入ってるな。」
【パァアンッ!!】
クラッカーのような破裂音が響き渡ると玄弥は目隠しを外し、ニヤリと微笑む。
これでもし、弾丸が入っていなければ玄弥の強制負けなのだが、玄弥も的確な判断を下したのだから勝ちの扱い。
「どこに弾丸があるか止めた時点で音でわかるんだぜ。 へへっ、痛ぇっ!? ウーン……。」
ドヤ顔の表情だが恋にシバかれ悶絶する。
「撃つ必要ないでしょ!? 貴重な弾なのにぃ~っ!!」
二人のコントが極めるなか、聖奈は恵麻に目隠しを施しては準備万端にさせるも、恵麻は頬を染めてはモジモジしてしまう。
「た、たまには目隠しなんて……わ、悪くないです。」
「次は私にもやらせてくださいね。」
そんな茶番を見て玄弥も恋もドキドキしながら、モジモジする恵麻を見つめるも、面白いことを浮かんだようで、玄弥も滅多に使わない拳銃を今度は使用することに。
「しょうがねぇよなぁ? なら、俺のサバゲー用のヤツを貸してやるかぁ! 弾丸使って悪かったなー。」
あからさまな態度の玄弥だが、恋は玄弥に小声でヒソヒソ話。
「ちょっと、ロシアンルーレットよ? なんでオートマ拳銃な訳よ……っぷぷ、絶対じゃない!」
「……?」
オートマチック拳銃を見てもいまいち理解できない聖奈は、勝手に拾い上げると恵麻に渡してしまう。
「お二人がヒソヒソしてるので話が進まないので、私たちで進めましょうね。」
ただし、恵麻は数秒間玄弥の拳銃を握りしめると目隠しを外してはプンスカ怒ってしまう。
怒ってると言っても軽くて、彼女の性格では本気で怒れないものの、可愛らしい拗ねた感じのものだ。
「なんで私だけオートマチックなんですか!? ロシアンルーレット以前に絶対ですよ。」
「いいからさっさと引き金引いて買ってこいよ……。 お釣りはあげるからよ。」
玄弥は寝袋に格納されてはめんどくさそうに言うも納得出来ないが、聖奈も小腹がすいてきたのか、行ってくるように催促する。
聖奈が誰かに頼みを申すのは珍しいが、燎煉は苦手なようなのであまり行きたがらない。
「あらら……えーと、恵麻様は下りない……と言うことは、弾丸は入っていないと見なしますよ。 確かめのために撃ちますよ。」
オートマチックもリボルバーも違いなどわからず知識不足だが、引き金を引けば弾丸が出るか出ないかの勝敗はわかってきたので、恵麻に向けて引き金を引いた。
「ちょっ!?」
突然のことに恋は止めにかかろうとはしたが時はすでに遅かったようで、雷が落っこちたような爆発音が響き渡る。
【バァアアァァンッ!!】
「きゃあっ!?」
聖奈はすさまじい反動でズテンと転がってしまうもい、もはや空気の弩砲と言っても過言じゃない空気砲に恵麻はおろか揉みくちゃになってる玄弥にまで被弾しては、運悪く天守閣の縁側から吹っ飛ばされて燎煉の方角へと星になって行く。
「玄弥までとばっちりを受けたわね……いたた。 玄弥の拳銃、何てメチャクチャな威力……。」
「うーん……。」
聖奈は目を回してダウンしてはその場に伸びてしまったようで、二人がおでんを買って帰ってくるまでは、恋が介護して揚げてたそうな。
地獄確定のルーレット。
確定演出は熱くても、これはイヤです。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる