幼女先生と不思議な課外授業

青衣

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11月2日【テトラポッドの重さは20トン】

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 今日は仕事が休みだから海までやって来たがこんな時期に海って思うかもしれない。
 しかしここは南国、雪なんかほぼ無縁近い場所に今はいる。
 釣竿とタモ網、釣りに関しては初心者だがそれっぽい装備してな。

 まぁ不安要素をあげるとするなら……真横を振り向くと可愛いお嬢ちゃんだ。

「おい、そっちはコケが生えてて危ないぞ。 気を付けろよ。」

「わかってるです!! こっちのテトラポッドの隙間に大きなアイナメがいるですよ。 私は見入ってるです。」

 今大きなアイナメと言ったか?

 見えてる魚は釣れないとは父さんが言ってはいたが獲物がいるなら釣らない手は無いだろう。
 小さなスキマに釣糸を垂らしてみるがこれ、アイナメ釣り上げても通れないんじゃないか?

「ちょっと勿体ないが撒き餌をバッと大さじ2杯くらい……。 あとはテキトーに食いついてくれれば良いんだが、キタッ!?」

 ものの数秒で入れ食い状態とはこれはラッキーだ。
 問題は大きさだが引きだけじゃいまいちわからない。

「アイナメは小さくても引きが強いのです。 負けてテトラポッドに引きずり込まれるじゃないですよ。」

「それどんだけ非力なんだよ。 だが竿がしなって俺の心が燃えてくるッ!!」



【ズポッ】



 やっぱり頭が突っかかって釣り上げることは不可能だった。

 それに糸を切ろうなら魚は針をのみこんだままこの先生き続ける運命となるなら、初心者の俺でもこれがマナー違反なのは嫌でもわかる。
 こんな後味の悪い状況を打破するためになんとかならないものか。

「うぐぐっ、私の力じゃテトラポッドは動かせそうにないです。 まぁそりゃそうです……普通のサイズでも20トンはあるので。」

「逃がした獲物はやはり大きいのか、ここまでか。」

 やりたくはないが糸を切って諦めるのが1番なのか?
 そう思った矢先だ、マルの発想力は時として窮地に陥った人間を救ってくれる。

「網をテトラポッドの下に固定してるです!! 糸を切り落とせばアイナメごと網に入ってくれる……です。 私の体力が無くなる前に、はや……く。」

「そ、そうか!! でかしたぞマル!!」

 そう言って俺は糸を切り落とした。















 アイナメはマルの目測通りで俺が思っていたよりも大きかった。
 これくらいのサイズならと思って腕に奮って【アイナメの炙り刺し】をマルにたっぷりとご馳走してやった。

 ん?
 俺のぶんか?

 俺は料理がただ単にしたくて新鮮な魚を釣りに来てただけにすぎないし、作って写真を撮ったら捨てる……もったいないと思うかもしれないがそれが俺なのだ。
 でも食べたいって人がいるならそれに越してくれる事はないし、今はマルが笑顔で食べてくれる。
 今日のMVPはお前だよ。

「うまいか?」

 俺はマルの頭に手をポンッと乗せるととびっきりの笑顔を見せてくれる。

「舌の上でとろけるです~!! また釣ってくるですよ。 できれば早めに。 あとごちそうさまです!!」

 その笑顔で俺も腹がいっぱいだ、お互いごちそうさまだな。
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