全てを識る指先

SF

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第15章

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「お前を騎士団見習いにする」

唐突に父親の書斎で告げられ、フラヴィオは開いた口が塞がらなかった。

「デッケン子爵邸に行きなさい。そこで奉公するんだ。成人まで勤め上げれば騎士団に口を効いてもらえるだろう」
「デッケン子爵ですって?!」

酒場で聞いたことがある。国境沿いにある駐屯地の師団長で、隣国からの侵略を何度も食い止めたことで功績を上げ、爵位を賜った貴族だ。引退した今では身分を問わず後進の育成に力を入れていると言うが、騎士見習いや奉公に来た少年に手を出しているという黒い噂が付き纏っていた。
それを父親に進言するが

「噂でしかない。それに本当だとしても、お前なら上手くやれるだろう」

とため息をつく。フラヴィオは怒りと羞恥にカアッと顔が熱くなる。

「いい加減独り立ちしなさい。いつまでもお前の面倒は見ていられないんだ」
「それならば、家を出ましょう。僕はマルコムの工房に弟子入りします」

マルコムは絵描きの筆頭だ。職人を集めて貴族の肖像画や劇場の広告画の依頼を一手に引き受けている。

「慰み者になるより絵を描きながらのたれ死んだ方がましです」

本心であったし、今はもうセシリオ以外に抱かれる気はなかった。

「駄目だ。支度金を頂いているんだ」
「なら返せばいい」
「これ以上私の顔に泥を塗る気か!なぜ言う通りにしない!お前の為に道を用意してやっているというのに!」

父親は激昂し立ち上がる。見たこともない剣幕にフラヴィオは思わず口を噤んだ。

「もう決まったことだ。行きなさい」

フラヴィオの両隣に従者が並び、屋敷の外へ連れて行かれた。お仕着せを着た従者の手には大きなトランクが下がっている。もう一人は上着を掛けてきた。
玄関の扉を開ければ冷たい空気が肌を刺した。ひゅうひゅうと風が鳴き粉雪が舞い踊っている。馬車が玄関前につけられており、誘うように扉から温かな色の照明が漏れていた。
フラヴィオは迷わず寒風が吹きすさぶ森へ走った。フラヴィオの頭にあったのはセシリオのことだけだった。走ってたどり着けるとは思えない。だが今生の別れになるかもしれないと思うと心臓が引き絞られフラヴィオの足を動かした。
行手には森の木々が檻のように立ち並び、ふくらはぎまで積もる雪が、一歩進むたびに足を捕らえる。足が氷のように冷たい。冷たい空気に肺まで凍りそうだ。それでも引き返したくなかった。
しかし無情にも追いかけてきた従者にあっという間に捕らえられる。トランクとともに馬車の中に押し込められ、丸3日は地面を踏むことがなかった。
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