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一章

第2話:未知への共感(2/9)

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 軽い会釈と共に、彼女は門番に指示を出す。「それじゃ、リーダーのところへ案内してね」と言い、門番は「はい、姉さん。リーダーのもとへご案内します」と緊張しながら返事をする。

 リーダーの部屋に着くと、門番が「新しい転移者です」と報告。中からは三十代と思われる温かな声が「入ってくれ」と返してきた。

 部屋に入るとリーダーは親しげに話しかけ、「アキトかと思ったよ。似てるから、村では大変だっただろうね。さあ、座ってくれ」と言い、飲み物を勧める。「白湯か、こちらで取れる茶葉の緑茶があるけど、どうする?」と。

 蓮司は「白湯で大丈夫です」と答えるが、リーダーは「異世界の日本茶みたいなものを試してみてはどうだい?」と提案する。蓮司は、その気遣いに感謝し、「ありがとうございます、いただきます」と応じる。

 しばらくして、リーダーが急須と湯呑で日本茶に近いお茶を入れてくれる。香りを楽しみながら、蓮司は、その味にふと故郷の風景が脳裏に浮かび、懐かしさに包まれる。

 「これは本当に日本茶みたいで、驚きました」と言うと、リーダーも「こちらでこんなに日本茶に近いものが飲めるとは思わなかったよ。嬉しい発見だね」と共感する。

 二人の会話からは、異世界での生活の中でも、故郷の味や文化を大切にしようとする姿勢が垣間見え、蓮司は新たな場所での生活への希望を感じ始めるのだった。


「名前をまだ名乗っていなかったね。僕は冴島伸一、ここ転移者村のリーダーだよ」と冴島が言う。蓮司は自己紹介を返す。「俺は桧蓮司です。大学1年でAIを専攻していました」。

 会話は転移者村の日常や未来への展望に広がっていく。村人たちは魔力を持たないが、科学の力で生活を豊かにしようと日々努力していると冴島は説明する。また、周辺の環境や村での自給自足の生活、魔獣から得られる魔石の利用方法についても話が及ぶ。

 ふとした瞬間、蓮司は窓外の景色を見ながら、魔力がなくとも何か新しいことを見つけられないかと考え込む。その姿に気付いた冴島が、蓮司に向けて言葉を投げかける。「レン君、何か心に決めたことがあるのかな?」。

 蓮司はためらいつつも、自分の考えを冴島に打ち明ける。「魔力がない人々も力を得られるような方法を見つけたいんです。魔獣がいるこの世界で、それができれば……」。

 冴島は蓮司の考えに興味を示し、前向きに応じる。「その発想、まさに革命的だね。我々は確かに科学の力を借りて日々を豊かにしている。だが、レン君の持ち込む新風は、私たちのコミュニティに新たな息吹を与えるだろう」。

「本当にやってみていいんですか?」蓮司が尋ねると、冴島は笑顔で応える。「もちろんだ。新しい試みはいつでも歓迎だよ。一緒に村をより良い場所にしよう」。

 蓮司は感謝の気持ちを込めて「ありがとうございます」と返答する。その一言が、彼らの未来への新たな一歩となることを予感させる瞬間だった。

 
「やはり、よく似ているね」と冴島が言った。蓮司が尋ねる、「アキトさんという人に似ているんですか?」。

「うん、瓜二つと言っていい。普通に話していても、私だって間違えそうだよ。アキトも似たようなことを言っていたからね。ただ、少し雰囲気が違うかな」。

「何か心情を共有しているのかもしれませんね。翔子さんが突然抱きついてきたときは、本当に驚きました。深い関係があったんですね」。

「そう、二人は恋人同士だったんだ。そして彼が彼女のために犠牲になり、彼女が生き延びた。この話をすれば、聡明な君には理解できるだろう」。

「余計なことを尋ねてしまい、申し訳ありません。ただ、皆がとても驚いていたので……」。

「問題ないよ。こちらこそ、申し訳ない。一瞬アキトが蘇ったかと驚いてしまったくらいだからね」。

「彼には及ばないかもしれませんが、自分なりに努力します」と蓮司は前向きに答えた。
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