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番外編 & SS
SS お使い
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お屋敷で住み始めて少し経った頃のお話。
※※※※※
なぜ…なぜこんな事になってしまったのか。
俺はムスッとした顔で隣を歩く、目だけやけに鋭い子供の姿をした男を見た。
「なんだ? さっさと済ませよう」
一見、子供らしく可愛い仕草を見せたりするところが厄介だ。
こんな風に生意気な喋り方をしてくれた方が、色々とおかしく思わずに助かるのかもしれない。
「エドワード、お前と歩くと女の目が気になって仕方がない。どうにかしろ、魔法を使うのも億劫だ」
「どうにかしろって……、こればかりはどうしようもできない」
男二人で歩いているが、ベルトランは子供の姿なのでまるで兄弟のように見られているかもしれない。
相変わらず、視線を集めてしまうので、ため息をつきながらとにかく早く帰ろうと前を向いた。
事の起こりは少し前、屋敷でやる事もなかったので剣の稽古でもしようかとしていたら、アリサが焦った様子で走ってきた。
何やら料理の材料が足りたいとかで、あと一味が出さなくて困っていると言ってきた。
町まで買いに行くには、他にも作るものがあるので忙しいから、買い物に行って欲しいということだった。
心良く了解して出かけようとしていたら、そこにベルトランが通りかかった。
するとアリサがどうせなら二人で行ってきてと残酷なことを言い出した。
それはちょっととか、困るかもと何とか察して欲しかったのだが、アリサは他にも欲しいものがあるから、量が多いとかなんとか言って一緒に行った方がいいと譲らない。
そして、最後の砦だったヤツも、なぜか分かったと言い出したのだ。
こうして悲しいかな、ベルトランと男二人で買い物に行く事になってしまった。
正直言ってベルトランは苦手だ。
元帝国の宮廷魔導士だった頃は、悪魔と呼ばれていたほど残忍で残酷な男だった。
人を殺めることに躊躇いなどないし、荒んで暗い目をしていると聞いていた。
しかし、アリサといる時のベルトランは化け物であるが上手く爪を隠している。
猫の姿がいい例だ。
俺やランスロットと違って、別の角度から可愛がられているし、それを分かりながら当然のように受け入れているヤツも気に入らなかった。
ふと通りかかった店先に目が止まった。
アリサの黒い髪に合いそうな緑色の宝石が付いたブローチを見つけて、それに目が奪われた。
アリサはいつも宝飾品の類は付けない。令嬢なら喜びそうな物にほとんど興味がないと思っていた。
けれどもしかしたら、忙しくてお洒落をする余裕がないのかもしれない。
いつかドレスを作ってあげたい。
それよりも先に、このブローチをプレゼントしようかと思って手に取った。
すると横から伸びてきた手が、隣にあった赤い宝石の付いたブローチ掴んだ。
「……なんだ、ベルトラン。それをどうするつもりだ」
「アリサの黒い髪によく似合いそうだから買っていく」
まさかこの男にそんな機能が備わっていると思わなくて俺は驚いて後ろに引いてしまった。
「エドワード、お前こそ……その緑のダサいやつはなんだ?」
「だだだ…ダサ……!? 何だって! これこそ、アリサに似合うブローチだ! そんな赤くて目がチカチカするやつは似合わない」
「ふっ……、お子様だな。センスも分からんとは…」
「その姿でどっちがお子様だ! よく見ろ、この流れるような曲線で作られていて細工が美しいだろう。そっちは流行遅れだ」
「いや、このガッチリした形こそが女性が好むものだ。どんな服にも合うからな」
「いやいやいや、ベルトラン。お洒落っていうのは、合うとかそういうことではなくて………」
そのまま店先で小一時間、ブローチを持ったまま二人で論議を繰り広げていたら、店の店主にいい加減に買えと言われて、二人してブローチを買ってしまった。
帰りもアリサにはどんな服が似合うかで、ずっとベルトランと言い合いながら帰ったら、玄関で俺達を見たアリサが信じられないという顔で立ち尽くしていた。
「二人とも手ぶら!? え……頼んでいたものは……」
「あ…………」
かなり時間が経っていたが、散歩をして来たんだとごまかして、回れ右してまた町に戻ることになった。
ベルトランは用事ができたと言ってサクッと消えてしまうし、俺だけなんでこんなことにと泣きたかった。
まったく、ベルトランといるとろくなことがない。
それでもプレゼントをいつ渡そうか考えながら、のんびり歩くのは悪くないなと思いながら町へ向かったのだった。
※※※※
※思った以上に帰りの荷物が多くなって、エドワードは、ベルトランくそーと言いながら汗だくで帰ることになるのでした(笑)
※※※※※
なぜ…なぜこんな事になってしまったのか。
俺はムスッとした顔で隣を歩く、目だけやけに鋭い子供の姿をした男を見た。
「なんだ? さっさと済ませよう」
一見、子供らしく可愛い仕草を見せたりするところが厄介だ。
こんな風に生意気な喋り方をしてくれた方が、色々とおかしく思わずに助かるのかもしれない。
「エドワード、お前と歩くと女の目が気になって仕方がない。どうにかしろ、魔法を使うのも億劫だ」
「どうにかしろって……、こればかりはどうしようもできない」
男二人で歩いているが、ベルトランは子供の姿なのでまるで兄弟のように見られているかもしれない。
相変わらず、視線を集めてしまうので、ため息をつきながらとにかく早く帰ろうと前を向いた。
事の起こりは少し前、屋敷でやる事もなかったので剣の稽古でもしようかとしていたら、アリサが焦った様子で走ってきた。
何やら料理の材料が足りたいとかで、あと一味が出さなくて困っていると言ってきた。
町まで買いに行くには、他にも作るものがあるので忙しいから、買い物に行って欲しいということだった。
心良く了解して出かけようとしていたら、そこにベルトランが通りかかった。
するとアリサがどうせなら二人で行ってきてと残酷なことを言い出した。
それはちょっととか、困るかもと何とか察して欲しかったのだが、アリサは他にも欲しいものがあるから、量が多いとかなんとか言って一緒に行った方がいいと譲らない。
そして、最後の砦だったヤツも、なぜか分かったと言い出したのだ。
こうして悲しいかな、ベルトランと男二人で買い物に行く事になってしまった。
正直言ってベルトランは苦手だ。
元帝国の宮廷魔導士だった頃は、悪魔と呼ばれていたほど残忍で残酷な男だった。
人を殺めることに躊躇いなどないし、荒んで暗い目をしていると聞いていた。
しかし、アリサといる時のベルトランは化け物であるが上手く爪を隠している。
猫の姿がいい例だ。
俺やランスロットと違って、別の角度から可愛がられているし、それを分かりながら当然のように受け入れているヤツも気に入らなかった。
ふと通りかかった店先に目が止まった。
アリサの黒い髪に合いそうな緑色の宝石が付いたブローチを見つけて、それに目が奪われた。
アリサはいつも宝飾品の類は付けない。令嬢なら喜びそうな物にほとんど興味がないと思っていた。
けれどもしかしたら、忙しくてお洒落をする余裕がないのかもしれない。
いつかドレスを作ってあげたい。
それよりも先に、このブローチをプレゼントしようかと思って手に取った。
すると横から伸びてきた手が、隣にあった赤い宝石の付いたブローチ掴んだ。
「……なんだ、ベルトラン。それをどうするつもりだ」
「アリサの黒い髪によく似合いそうだから買っていく」
まさかこの男にそんな機能が備わっていると思わなくて俺は驚いて後ろに引いてしまった。
「エドワード、お前こそ……その緑のダサいやつはなんだ?」
「だだだ…ダサ……!? 何だって! これこそ、アリサに似合うブローチだ! そんな赤くて目がチカチカするやつは似合わない」
「ふっ……、お子様だな。センスも分からんとは…」
「その姿でどっちがお子様だ! よく見ろ、この流れるような曲線で作られていて細工が美しいだろう。そっちは流行遅れだ」
「いや、このガッチリした形こそが女性が好むものだ。どんな服にも合うからな」
「いやいやいや、ベルトラン。お洒落っていうのは、合うとかそういうことではなくて………」
そのまま店先で小一時間、ブローチを持ったまま二人で論議を繰り広げていたら、店の店主にいい加減に買えと言われて、二人してブローチを買ってしまった。
帰りもアリサにはどんな服が似合うかで、ずっとベルトランと言い合いながら帰ったら、玄関で俺達を見たアリサが信じられないという顔で立ち尽くしていた。
「二人とも手ぶら!? え……頼んでいたものは……」
「あ…………」
かなり時間が経っていたが、散歩をして来たんだとごまかして、回れ右してまた町に戻ることになった。
ベルトランは用事ができたと言ってサクッと消えてしまうし、俺だけなんでこんなことにと泣きたかった。
まったく、ベルトランといるとろくなことがない。
それでもプレゼントをいつ渡そうか考えながら、のんびり歩くのは悪くないなと思いながら町へ向かったのだった。
※※※※
※思った以上に帰りの荷物が多くなって、エドワードは、ベルトランくそーと言いながら汗だくで帰ることになるのでした(笑)
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