唇に魔法

朝顔

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SS+続編

奏視点SS(その後の二人)

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※両思いになってからの甘さを追加します!
という事で、奏視点のショートストーリーです。






□□






 シーツの波をかき分けるように、隙間から出ていこうとする手を掴んだ。

「も…だめ、……しぬ……」

 掠れた声が聞こえて、もがいて逃げようとする体を後ろから抱きしめた。

「涼介……どこへ行くんだ?」

「どこって…シャワーだよ」

「俺を置いて? 冷たいな…」

 逃げようとする恋人を捕まえるなんて、今までの俺からしたら考えられない。
 いつもコトが終わればさっさと相手を残して、ベッドから去るのは自分の方だったから。
 再び熱くなったソコをお尻に擦り付けたら、声にならない声が上がった。

「か…なで、いい加減にしろ、おまっ…何回目だ」

「三回目か? それがどうした?」

「五回目だ! 俺をヤリ殺す気か!」

 そういえばそれくらいイっていたのかくらいの感覚だった。涼介と始まれば、時間も回数なんて忘れて夢中になってしまう。
 かつて淡白な人だと言われた自分はもうどこにも存在しない。

 幼稚園時代に近所のお姉さんにフラれてから、恋心なんてものは過去に置いてきたつもりだった。
 プライドが高い人間だというのは認める。
 そうやって自分に虚勢をはっていなければ生きてこられなかった。

 それがなんだ。
 涼介に出会ったことで、すっかり牙をなくしたライオンになってしまった。
 しかし、それが心地いいのだから仕方がない。本来の自分に戻ったみたいに息を吸うのも楽になった。

 一緒に暮らしているが、お互い忙しいので毎日肌を合わせるわけにもいかない。
 だからこうやって週末一緒にいられる時は、底を知らないように求めてしまう。

「だめか……? 涼介……」

 耳元で囁くと、愛しい恋人はぶるりと体を震わせた。耳が弱いことは当然知っている。
 面倒くさがりに見えて意外と頼られるのが好きで、甘い言葉でねだってみれば、結局許してくれることも。
 これでは俺はライオンどころではなく、ただの体のデカイ猫だ。冷血で冷酷人間と社内で恐れられている俺が、こんなデカイ猫だと知られたらほぼ全員が倒れると予想できる。

 そんなところを想像したらおかしくなって口元が緩んでしまった。
 そんな日が来てもいいかもしれない。

「……あと、一回だけだ」

 ほら、やっぱり許してくれた。
 だから可愛くてたまらない。

 すでに俺の形になっている涼介のナカに、またズルリと押し入ると、涼介はシーツを掴んで荒い息を吐いていた。
 涼介の中はすでにトロトロに溶けているが、俺のモノをうねるように締め付けてくるので、もう挿れただけでイキそうになるのをいつも我慢するのが大変だ。

「ま…待って……、だめ……すぐイキそ……なんだ……」

 涼介が自分と同じだと分かればそれだけで、込み上げてきてしまう。たまらなくなって腰を揺らしたら、涼介は切ない声を漏らした。

「あぁ…だめ…だって……」

「なんだ…入れただけでイくのか? 涼介は堪え性がないな」

「あ…ぁ……だっ…うぅ…んっあああ!」

 自分のことは棚に置いて、俺は嬉しくて気持ち良くて、涼介のナカをぐりぐりと動かしたら、涼介は大きな声を上げて喘いだ。

 涼介の声は腰にくる。掠れた声がまた色っぽくてたまらない。
 もう待てないとゆるゆると腰を動かしたら、止まらなくて、欲望の突き動かすままに激しく打ちつけた。

「……ばかっ…強すぎ……やば…って……もう……」

「どこがいいんだ? 好きなところを…擦ってやる」

「……ぶ………」

「ん?」

「ぜん…ぶ、好き……かな…でが…擦るところ……全部……好き……」

 涼介はトロンとした顔でシーツに顔を擦り付けていた。
 もうだめだ。
 何もかも可愛すぎて死ぬ。

「か…かなでもぉ…す…好きって…言ってくれよ」

 俺に揺さぶられながら、涼介は俺を見つめてくる。

 好きだ。

 カレーにソースをかけるところも、蝶々結びができないところも、酒に弱くてすぐ陽気になるところも、甘えてきたくせに甘え返すと恥ずかしがるところも、寝ている時に鼻がヒクヒクするところも、歯磨きの時むせるところも、頭の先から爪先まで全部可愛くて……全部好きだと言ったら、引かれるかもしれない。

「好きだ」

 だから全ての想いを集約してその一言に込めた。

「ああっ……!! 奏……っっ!!」

 涼介が腰を震わせながら達した。シーツにぽたぽたと垂れる音がして、余韻に浸るように震えているところもまたたまらない。

「はぁはぁ…は……ご…ごめ……先にイっちゃ……た……」

「ああ、いいよ。可愛かった」

「あれ……奏は……?」

「俺もイった。涼介がイってぎゅうぎゅう締めてくるから」

「そ…そうか。俺…ごめん……夢中で……」

 涼介がイク時にそっちに集中してしまうのは知っている。
 どうやらバレなかったようだ。
 涼介の好きなところを妄想していたら、先に達していたことは……。

 涼介の前では少しでもカッコつけておきたい。デカイ猫にもプライドはある。

 今度こそ二人でシャワーを浴びるためにベッドを下りた。

「ふふっ…」

 バスルームの前で涼介が口に手を当てて笑い出した。
 どうしたのかと眺めたらごめんごめんと言って、涼介は頬を赤くして幸せそうに笑った。

「奏、そこ、髪がハネて寝癖ができてる。そんなところも好きだと思っちゃうなんて、俺おかしいよな」

 ズキューンと心臓を撃ち抜かれたみたいに、俺の全身は震えた。

「……お…おかしくない! 全然おかしくない!」

「な…なんだよ急に…ぐいぐいと……」

「よし、俺がどれだけ涼介の好きなところがあるか、風呂の中でじっくり教えてやろう」

「え…、それはまぁ…嬉しいけどさ……」

 涼介の背中に手を当ててぐいぐいとバスルームに押し込んだ。

 些細なことも好きだと言ってくれる涼介なら、きっと、俺の愛を受け止めてくれるだろう。嬉しくて笑いが溢れそうになるのを必死で我慢してバスルームのドアを閉めた。







□□□



 ※二人が一緒に住み始めてしばらく経ったくらいのお話。
 この後、歯磨きの時むせる話辺りで、もうやめろと涼介にお湯をかけられることになる奏なのでした(笑)
 お読みいただきありがとうございました。
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