二十二年前の君にも、愛していると伝えたい

朝顔

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後編

後編②

「ポケットに入っていたんだよ。って、おい、だいぶ飲んだな。フラフラじゃないか」
「……ホワイトルティア。花言葉は感謝と……」
 ジェレミーはバルコニーの柵に倒れかかったので、ヨランは手を伸ばし、脇を支えた。
「大丈夫か?」
「あー……だいじ……ぶ……」
 ジェレミーはヨランが持っていた花を掴み、ポイッとバルコニーの外へ投げてしまった。
「あ……おいっ」
「サイラスもアレだけど、ヨランもだ。どこの誰からか分からないものを貰うなんて」
「だからポケットに……って、お……おい、重い」
 かなり酔ったのか、ジェレミーはヨランに掴まり体重をかけてきた。本格的に寝られてしまったら、自分よりデカくて体重のある男を支えきれない。
「仕方ない。部屋に行こう……二階だったな。ジェレミー、歩けるか?」
「んー……だ……ぶ、……ける……」
 全然大丈夫ではなさそうだ。
 ジェレミーの腕を自分の肩に乗せ、グラグラしながら二人で歩き始めた。
 会場はダンス大会でもしているのか、手拍子をして大盛り上がりだ。二人の様子を気にかける者などいない。何とか手すりを利用して階段を上り、二階にたどり着いたヨランだが、ジェレミーの部屋が分からなかったので、とりあえず自分の部屋に連れて行った。
 ジェレミーの体をベッドに転がして、ハァハァと息を吐いて床に座り込む。汗だくになったので、上着を脱いでシャツの袖を捲った。
 ヨランの苦労など知らず、ぐうぐうと寝ているジェレミーを見て、フゥと息を漏らす。
 時を戻り、サイラスの悲劇を止めることができたら、どうしようかと考えていた。
 もう一度好きになってもらえるかもしれないなんて、期待を持っていた。
 一度目はジェレミーが好きになってくれて、情熱的に口説かれ付き合うことになった。サイラスのことは記憶にあったが、二人が付き合っていたかも曖昧であったし、過去のことだとして考えないようにした。
 悪夢にうなされるジェレミーを見て、いつか癒やされる日が来ると、抱きしめることしかできなかった。
 そして今、時を戻り、サイラスが生きている世界にいる。
 ジェレミーがサイラスを見る目は特別だ。
 サイラスの想いは他にあっても、変わらない献身的な態度は、愛に通じるものがある。
 いや、きっとジェレミーはサイラスを愛している。
 その想いを隠しているんだ。
 サイラスが失恋した時、側にいるべき人はジェレミーしかいない。一度目の時はきっと、ジェレミーが気付かずにいたのだろう。
 傷ついたサイラスをジェレミーが癒す、それはジェレミーの幸せにも繋がるのだ。
 月明かりが差し込む静かな部屋。自分の体が孤独に染まった気がした。
「そうなったらもう……俺は必要ない」
 時を戻り、過去を変えることは、二人の未来を変えることになる。
 それは分かっていた。
 何よりもジェレミーの幸せを願う。
 そう覚悟してきたはずだ。
「俺を撫でてよ、ジェレミー……。愛しているって言って、キスをして……」
 ジェレミーの寝息の音が聞こえる。
 温もりが欲しい、ジェレミーに触れたい。
 バカだなと思ったヨランは、立ち上がり窓辺の椅子に座る。テーブルの上には、酒瓶とグラスが用意してあった。飲み足りない客のためのサービスだろう。
 ヨランは瓶を開け、グラスに酒を注いだ。
 一口飲めば、胸を抉るような痛みを忘れられる。
 二口飲めば、切ない気持ちも全部……。
 ヨランは月を見上げながら、グラスを傾けた。
 忘れるわけがない。杯を重ねても、何年時を重ねても、時を戻っても、愛しているのはジェレミーだけ。
 初めて愛した男、初めて体を重ねた男、何もかも、初めてはジェレミーだった。
 ジェレミーのいない人生など考えられない。
 ジェレミーはこれ以上ないほど尽くしてくれた。
 自分はどうだったか……。
 家族というものに抵抗があり、自分がなくなってしまう気がして、本心で受け入れることができなかった。
 そんなヨランにジェレミーは寄り添ってくれた。
 だから戻ったこの世界では、ジェレミーのためだけに生きる。
 
 カタンとグラスが机に倒れ、底に残っていた酒が溢れる。
 酔いが回った頭でぼんやりとそれを眺め、溢れた酒を指で拭った。
「ん……、ここは……?」
 音がして目が覚めたのか、ジェレミーがベッドから起き上がる。ヨランはふふっと笑い、指についた酒を舐めた。
「よく眠れた? と言っても、まだ夜だけど」
「ヨラン……。ここは、客用の部屋か……、俺、酔って………悪い、ここまで運んでくれたのか……」
「その時は歩けたから、支えただけ。もういいから、自分の部屋に戻って」
「あ……悪いな。ベッドを占領してしまった。それじゃ俺は……」
 急いでベッドから降りたジェレミーは、窓辺の椅子に座るヨランに近づいて来た。
 ヨランはぼんやりとした頭でジェレミーを眺めて、また机に溢れた酒をすくって舐めた。
「ヨラン? 何を……酔っているのか?」
「ん? 酔ってない。もったいないから」
 またすくって舐めようとしたら、ジェレミーに手首を掴まれて止められた。
「待て待て、溢れた酒なんてもういいだろう。ほら、ヨランがベッドを使ってくれ」
 先ほどはジェレミーが酔っ払いだったが、今度は逆だ。机の上にあった瓶は二本も空になっており、ヨランの頭はふわふわして、いい気分になっている。
 先ほどと違うのは、ジェレミーは簡単にヨランを横抱きにして持ち上げ、ベッドに降ろしてくれた。
「今布団を……」
「ジェレミー……」
 ヨランは離れて行こうとするジェレミーの腕を掴む。
「行かないで」
「え……」
 ジェレミーの目が大きく開かれる。
 ぼんやりしたヨランの頭には、目の前にいるのが、一緒に暮らしていた頃のジェレミーに見えてしまう。
「あれ? 皺がない」
「あ? 皺だって? 誰かと間違えているのか?」
「間違えてない。ジェレミーはジェレミー……」
 ヨランはジェレミーの首の後ろに手を回し、自分の方へ引き寄せた。ジェレミーは焦った顔になり、口をパクパクと動かしている。
「ふふっ、可愛い顔」
「なっ……どうし……ヨラン、嘘だろ、待て、どうしたんだ?」
「待たない」
 ヨランはジェレミーの背中に捉まり、彼の唇に自分の唇を寄せた。チュと音が響いて、嬉しくなったヨランは、チュッチュッと音を立ててジェレミーの下唇に吸い付く。
「ヨ、ヨランっ、待てって。酔ったらキス魔になるのか? 待ってくれ、こんなことをされたら……」
「キス魔? キス魔だよ。でも、ジェレミーにだけだから」
 ヨランは自分の唇を指でなぞった後、その指をジェレミーの唇に乗せて、ニコッと微笑んだ。
 困った顔をしていたジェレミーの目がギラリと光る。彼の目が光るのは、すごく興奮している時。久しぶりだなと嬉しくなったヨランは、着ていたシャツを脱ぎ捨て、ジェレミーの頬に触れる。
「おいで」
「…………っっ!」
 ジェレミーが覆い被さってくる。いつもの慣れた手つきではなく、やけに荒々しく感じて、嬉しくなる。
 歯をぶつける勢いで口付けられ、舌をめちゃくちゃに舐められる。気持ちいいかと言われたら、何だか勢いだけすごいなと感じるが、ジェレミーの興奮した様子が嬉しくて、だんだん気持ち良くなってくる。
「はぁ……はぁ……ジェレミー、ちょ……」
 いつも優しく触ってくる胸の尖をガシガシと爪で擦られ、荒々しい触り方も気持ちいいと思ってしまう。
「んっん、あっ……ふふっ」
 キスをしながらお互いの服を脱がす。その間もベッドに縫い付けられそうな勢いなので、ちょっと待っても言えない。
 するりと下穿きを抜き取られて裸になったが、ジェレミーはピタリと動きを止め、ヨランの全身を舐めるように見てきた。
「…………綺麗だ」
 そんな風に褒めてくれるなんて、久しぶりで嬉しい。もっと見て欲しくて、ヨランは全身をくねらせる。
「やばい……、嘘だろ……想像よりもっと……ううっ」
 膝立ちになり、真っ赤な目元をして、口を手で覆ったジェレミーは何だか幼く見えて可愛い。大好きなソコに視線を移すと、はち切れんばかりに勃ち上がっているのが見えた。しかもポタポタと滴を垂らしており、今にも爆ぜてしまいそうだ。
「溜まっていたの? 可愛いね」
「あっ……っっ、だっ……」
 ムクリと起き上がったヨランは、大胆に舌を出して、ソコをペロリと舐めた。
「ううっ……」
 ジェレミーのモノはひと舐めしただけでブルっと震え、ぷっくりとしたソコの中心から白濁が飛び出した。
「わっ……」
「あっ、……あ……ヨラン。俺は……なんてことを!」
 飛び散った白濁はヨランの顔にかかってしまい、ハッとしたジェレミーは、慌ててシーツを掴んで拭こうとしてきた。
「だめ、ジェレミーの……好きなんだから」
 手でソレを拭ったヨランは、ペロリと舐め取った。
「ゔゔ……苦い……」
「……あ、そんなモノ……舐めるなって、ほら、ここに出してくれ」
「やーだ、飲んじゃったし」
 べっと舌を見せると、ジェレミーは信じられないという顔をした。今日のジェレミーはいちいち反応が可愛い。ゴロンとベッドに転がったヨランは、自ら足を持ち上げ蕾を見せた。
「ねぇ、きてよ。ここにも、ジェレミーが欲しい」
 ジェレミーの喉が上下し、ゴクリと唾を飲み込む音がした。
「こっ……ここって、それ……大丈夫なのか?」
「んー? だいじょーぶ、指で……んっ痛っ!」
 ジェレミーのソレで濡れていた指を使い、いつものように指で軽く慣らそうとしたら、蕾は硬く閉じており、指先も入らない。
「ほら、無理するなよ。初めてなんだろう? 準備が必要だって……そ、その……聞いたことがあるだけで……」
「んー? ……じゅんび?」
「そう、準備だよ。だから……ほらこっちに……」
 ヨランの隣に寝転んだジェレミーはぐっと体を重ねる。すでに回復し硬くなったソコを、ヨランのモノと一緒に合わせ、ゆるゆると擦ってきた。
「な……こうするだけで、気持ちいい……だろ?」
「ん、んんっ、……きもちい……」
 ジェレミーに触れられるだけで気持ちいい。ソコを一緒に擦られたら、もっと気持ちいい。
 ウットリとジェレミーを見上げると、彼は唇に吸い付いてきた。
「ん……は…………はっ……んっ……あっ」
「…………っっ、ヨラン……はぁ……ヨラン……」
 名前を呼ばれる度に強く感じてしまい、腰をビクビクと揺らす。ジェレミーはそんなヨランの反応が嬉しいのか、舌を絡ませ徐々に激しく擦ってくる。
 先っぽで擦り合うと気持ち良くて意識が飛びそうだ。
 本当はもっと奥に欲しいけど、今はこれで十分気持ちいい。
「ジェレ……み……イッちゃ……出る……」
「ああ、俺も……また……」
「あっ……あ……くっ……、ううっ、んっぁ、んっ……ぁぁ……ぁぁ……」
 ヨランは達したが、ジェレミーが激しく擦るので、射精感が止まらない。そのうちにジェレミーも達したのか、ビクビクと腰を揺らした。ヨランは腹上にねっとりとした熱を感じ、ジェレミーの胸に顔を寄せた。
 ジェレミーの匂いに安心して眠くなってしまう。ふわっとあくびをした後、目を閉じた。
 ジェレミーが優しく頭を撫でてくれる。
 大好き、そう頭の中で繰り返しながら、深い眠りに落ちていった。
 

 

 なんてことをしてしまったんだろう。
 何だか飲みまくったことは覚えている。その後は、ところどころ抜けているが、ジェレミーを自分からベッドに誘った。
 ジェレミーをジェレミーと間違えて……。
 いや、間違えたというか、ジェレミーはジェレミーなんだが、夫のジェレミーだと思い込み、今のジェレミーと……。
「あーー! 俺は何てことを!!」
 職場のデスクで頭を抱えていたら、声まで出してしまい、周囲の視線が集中していることに気がつく。
 ヨランは慌てて頭を下げ、自分の口を手で塞いだ。

 サイラスの邸で行われたパーティーで、酔ったヨランは、ジェレミーと寝てしまった。
 最後までは至らなかったとか、そんな問題でない。
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