二十二年前の君にも、愛していると伝えたい

朝顔

文字の大きさ
8 / 15
後編

後編②

しおりを挟む
「ポケットに入っていたんだよ。って、おい、だいぶ飲んだな。フラフラじゃないか」
「……ホワイトルティア。花言葉は感謝と……」
 ジェレミーはバルコニーの柵に倒れかかったので、ヨランは手を伸ばし、脇を支えた。
「大丈夫か?」
「あー……だいじ……ぶ……」
 ジェレミーはヨランが持っていた花を掴み、ポイッとバルコニーの外へ投げてしまった。
「あ……おいっ」
「サイラスもアレだけど、ヨランもだ。どこの誰からか分からないものを貰うなんて」
「だからポケットに……って、お……おい、重い」
 かなり酔ったのか、ジェレミーはヨランに掴まり体重をかけてきた。本格的に寝られてしまったら、自分よりデカくて体重のある男を支えきれない。
「仕方ない。部屋に行こう……二階だったな。ジェレミー、歩けるか?」
「んー……だ……ぶ、……ける……」
 全然大丈夫ではなさそうだ。
 ジェレミーの腕を自分の肩に乗せ、グラグラしながら二人で歩き始めた。
 会場はダンス大会でもしているのか、手拍子をして大盛り上がりだ。二人の様子を気にかける者などいない。何とか手すりを利用して階段を上り、二階にたどり着いたヨランだが、ジェレミーの部屋が分からなかったので、とりあえず自分の部屋に連れて行った。
 ジェレミーの体をベッドに転がして、ハァハァと息を吐いて床に座り込む。汗だくになったので、上着を脱いでシャツの袖を捲った。
 ヨランの苦労など知らず、ぐうぐうと寝ているジェレミーを見て、フゥと息を漏らす。
 時を戻り、サイラスの悲劇を止めることができたら、どうしようかと考えていた。
 もう一度好きになってもらえるかもしれないなんて、期待を持っていた。
 一度目はジェレミーが好きになってくれて、情熱的に口説かれ付き合うことになった。サイラスのことは記憶にあったが、二人が付き合っていたかも曖昧であったし、過去のことだとして考えないようにした。
 悪夢にうなされるジェレミーを見て、いつか癒やされる日が来ると、抱きしめることしかできなかった。
 そして今、時を戻り、サイラスが生きている世界にいる。
 ジェレミーがサイラスを見る目は特別だ。
 サイラスの想いは他にあっても、変わらない献身的な態度は、愛に通じるものがある。
 いや、きっとジェレミーはサイラスを愛している。
 その想いを隠しているんだ。
 サイラスが失恋した時、側にいるべき人はジェレミーしかいない。一度目の時はきっと、ジェレミーが気付かずにいたのだろう。
 傷ついたサイラスをジェレミーが癒す、それはジェレミーの幸せにも繋がるのだ。
 月明かりが差し込む静かな部屋。自分の体が孤独に染まった気がした。
「そうなったらもう……俺は必要ない」
 時を戻り、過去を変えることは、二人の未来を変えることになる。
 それは分かっていた。
 何よりもジェレミーの幸せを願う。
 そう覚悟してきたはずだ。
「俺を撫でてよ、ジェレミー……。愛しているって言って、キスをして……」
 ジェレミーの寝息の音が聞こえる。
 温もりが欲しい、ジェレミーに触れたい。
 バカだなと思ったヨランは、立ち上がり窓辺の椅子に座る。テーブルの上には、酒瓶とグラスが用意してあった。飲み足りない客のためのサービスだろう。
 ヨランは瓶を開け、グラスに酒を注いだ。
 一口飲めば、胸を抉るような痛みを忘れられる。
 二口飲めば、切ない気持ちも全部……。
 ヨランは月を見上げながら、グラスを傾けた。
 忘れるわけがない。杯を重ねても、何年時を重ねても、時を戻っても、愛しているのはジェレミーだけ。
 初めて愛した男、初めて体を重ねた男、何もかも、初めてはジェレミーだった。
 ジェレミーのいない人生など考えられない。
 ジェレミーはこれ以上ないほど尽くしてくれた。
 自分はどうだったか……。
 家族というものに抵抗があり、自分がなくなってしまう気がして、本心で受け入れることができなかった。
 そんなヨランにジェレミーは寄り添ってくれた。
 だから戻ったこの世界では、ジェレミーのためだけに生きる。
 
 カタンとグラスが机に倒れ、底に残っていた酒が溢れる。
 酔いが回った頭でぼんやりとそれを眺め、溢れた酒を指で拭った。
「ん……、ここは……?」
 音がして目が覚めたのか、ジェレミーがベッドから起き上がる。ヨランはふふっと笑い、指についた酒を舐めた。
「よく眠れた? と言っても、まだ夜だけど」
「ヨラン……。ここは、客用の部屋か……、俺、酔って………悪い、ここまで運んでくれたのか……」
「その時は歩けたから、支えただけ。もういいから、自分の部屋に戻って」
「あ……悪いな。ベッドを占領してしまった。それじゃ俺は……」
 急いでベッドから降りたジェレミーは、窓辺の椅子に座るヨランに近づいて来た。
 ヨランはぼんやりとした頭でジェレミーを眺めて、また机に溢れた酒をすくって舐めた。
「ヨラン? 何を……酔っているのか?」
「ん? 酔ってない。もったいないから」
 またすくって舐めようとしたら、ジェレミーに手首を掴まれて止められた。
「待て待て、溢れた酒なんてもういいだろう。ほら、ヨランがベッドを使ってくれ」
 先ほどはジェレミーが酔っ払いだったが、今度は逆だ。机の上にあった瓶は二本も空になっており、ヨランの頭はふわふわして、いい気分になっている。
 先ほどと違うのは、ジェレミーは簡単にヨランを横抱きにして持ち上げ、ベッドに降ろしてくれた。
「今布団を……」
「ジェレミー……」
 ヨランは離れて行こうとするジェレミーの腕を掴む。
「行かないで」
「え……」
 ジェレミーの目が大きく開かれる。
 ぼんやりしたヨランの頭には、目の前にいるのが、一緒に暮らしていた頃のジェレミーに見えてしまう。
「あれ? 皺がない」
「あ? 皺だって? 誰かと間違えているのか?」
「間違えてない。ジェレミーはジェレミー……」
 ヨランはジェレミーの首の後ろに手を回し、自分の方へ引き寄せた。ジェレミーは焦った顔になり、口をパクパクと動かしている。
「ふふっ、可愛い顔」
「なっ……どうし……ヨラン、嘘だろ、待て、どうしたんだ?」
「待たない」
 ヨランはジェレミーの背中に捉まり、彼の唇に自分の唇を寄せた。チュと音が響いて、嬉しくなったヨランは、チュッチュッと音を立ててジェレミーの下唇に吸い付く。
「ヨ、ヨランっ、待てって。酔ったらキス魔になるのか? 待ってくれ、こんなことをされたら……」
「キス魔? キス魔だよ。でも、ジェレミーにだけだから」
 ヨランは自分の唇を指でなぞった後、その指をジェレミーの唇に乗せて、ニコッと微笑んだ。
 困った顔をしていたジェレミーの目がギラリと光る。彼の目が光るのは、すごく興奮している時。久しぶりだなと嬉しくなったヨランは、着ていたシャツを脱ぎ捨て、ジェレミーの頬に触れる。
「おいで」
「…………っっ!」
 ジェレミーが覆い被さってくる。いつもの慣れた手つきではなく、やけに荒々しく感じて、嬉しくなる。
 歯をぶつける勢いで口付けられ、舌をめちゃくちゃに舐められる。気持ちいいかと言われたら、何だか勢いだけすごいなと感じるが、ジェレミーの興奮した様子が嬉しくて、だんだん気持ち良くなってくる。
「はぁ……はぁ……ジェレミー、ちょ……」
 いつも優しく触ってくる胸の尖をガシガシと爪で擦られ、荒々しい触り方も気持ちいいと思ってしまう。
「んっん、あっ……ふふっ」
 キスをしながらお互いの服を脱がす。その間もベッドに縫い付けられそうな勢いなので、ちょっと待っても言えない。
 するりと下穿きを抜き取られて裸になったが、ジェレミーはピタリと動きを止め、ヨランの全身を舐めるように見てきた。
「…………綺麗だ」
 そんな風に褒めてくれるなんて、久しぶりで嬉しい。もっと見て欲しくて、ヨランは全身をくねらせる。
「やばい……、嘘だろ……想像よりもっと……ううっ」
 膝立ちになり、真っ赤な目元をして、口を手で覆ったジェレミーは何だか幼く見えて可愛い。大好きなソコに視線を移すと、はち切れんばかりに勃ち上がっているのが見えた。しかもポタポタと滴を垂らしており、今にも爆ぜてしまいそうだ。
「溜まっていたの? 可愛いね」
「あっ……っっ、だっ……」
 ムクリと起き上がったヨランは、大胆に舌を出して、ソコをペロリと舐めた。
「ううっ……」
 ジェレミーのモノはひと舐めしただけでブルっと震え、ぷっくりとしたソコの中心から白濁が飛び出した。
「わっ……」
「あっ、……あ……ヨラン。俺は……なんてことを!」
 飛び散った白濁はヨランの顔にかかってしまい、ハッとしたジェレミーは、慌ててシーツを掴んで拭こうとしてきた。
「だめ、ジェレミーの……好きなんだから」
 手でソレを拭ったヨランは、ペロリと舐め取った。
「ゔゔ……苦い……」
「……あ、そんなモノ……舐めるなって、ほら、ここに出してくれ」
「やーだ、飲んじゃったし」
 べっと舌を見せると、ジェレミーは信じられないという顔をした。今日のジェレミーはいちいち反応が可愛い。ゴロンとベッドに転がったヨランは、自ら足を持ち上げ蕾を見せた。
「ねぇ、きてよ。ここにも、ジェレミーが欲しい」
 ジェレミーの喉が上下し、ゴクリと唾を飲み込む音がした。
「こっ……ここって、それ……大丈夫なのか?」
「んー? だいじょーぶ、指で……んっ痛っ!」
 ジェレミーのソレで濡れていた指を使い、いつものように指で軽く慣らそうとしたら、蕾は硬く閉じており、指先も入らない。
「ほら、無理するなよ。初めてなんだろう? 準備が必要だって……そ、その……聞いたことがあるだけで……」
「んー? ……じゅんび?」
「そう、準備だよ。だから……ほらこっちに……」
 ヨランの隣に寝転んだジェレミーはぐっと体を重ねる。すでに回復し硬くなったソコを、ヨランのモノと一緒に合わせ、ゆるゆると擦ってきた。
「な……こうするだけで、気持ちいい……だろ?」
「ん、んんっ、……きもちい……」
 ジェレミーに触れられるだけで気持ちいい。ソコを一緒に擦られたら、もっと気持ちいい。
 ウットリとジェレミーを見上げると、彼は唇に吸い付いてきた。
「ん……は…………はっ……んっ……あっ」
「…………っっ、ヨラン……はぁ……ヨラン……」
 名前を呼ばれる度に強く感じてしまい、腰をビクビクと揺らす。ジェレミーはそんなヨランの反応が嬉しいのか、舌を絡ませ徐々に激しく擦ってくる。
 先っぽで擦り合うと気持ち良くて意識が飛びそうだ。
 本当はもっと奥に欲しいけど、今はこれで十分気持ちいい。
「ジェレ……み……イッちゃ……出る……」
「ああ、俺も……また……」
「あっ……あ……くっ……、ううっ、んっぁ、んっ……ぁぁ……ぁぁ……」
 ヨランは達したが、ジェレミーが激しく擦るので、射精感が止まらない。そのうちにジェレミーも達したのか、ビクビクと腰を揺らした。ヨランは腹上にねっとりとした熱を感じ、ジェレミーの胸に顔を寄せた。
 ジェレミーの匂いに安心して眠くなってしまう。ふわっとあくびをした後、目を閉じた。
 ジェレミーが優しく頭を撫でてくれる。
 大好き、そう頭の中で繰り返しながら、深い眠りに落ちていった。
 

 

 なんてことをしてしまったんだろう。
 何だか飲みまくったことは覚えている。その後は、ところどころ抜けているが、ジェレミーを自分からベッドに誘った。
 ジェレミーをジェレミーと間違えて……。
 いや、間違えたというか、ジェレミーはジェレミーなんだが、夫のジェレミーだと思い込み、今のジェレミーと……。
「あーー! 俺は何てことを!!」
 職場のデスクで頭を抱えていたら、声まで出してしまい、周囲の視線が集中していることに気がつく。
 ヨランは慌てて頭を下げ、自分の口を手で塞いだ。

 サイラスの邸で行われたパーティーで、酔ったヨランは、ジェレミーと寝てしまった。
 最後までは至らなかったとか、そんな問題でない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

声なき王子は素性不明の猟師に恋をする

石月煤子
BL
第一王子である腹違いの兄から命を狙われた、妾の子である庶子のロスティア。 毒薬によって声を失った彼は城から逃げ延び、雪原に倒れていたところを、猟師と狼によって助けられた。 「王冠はあんたに相応しい。王子」 貴方のそばで生きられたら。 それ以上の幸福なんて、きっと、ない。

【短編】【完結】王子様の婚約者は狼

天田れおぽん
BL
 サティ王子はクルクルした天然パーマな茶髪が可愛い18歳。婚約者のレアンは狼獣人で、子供の頃は子犬のように愛くるしかったのに、18歳となった今はマッチョでかっこよくなっちゃった。 「レアンのこと大好きだから守りたい。キミは信じてくれないかもしれないけれど……」  レアン(すでにオレは、貴方しか見ていませんが?)  ちょっと小柄なカワイイ系王子サティと、美しく無口なゴツイ系婚約者レアンの恋物語。 o♡o。+。o♡o。+。o♡o。+。o♡o。+。o♡o。 ノベルバにも掲載中☆ボイスノベルがあります。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

おしまいのそのあとは

makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……

王太子殿下に触れた夜、月影のように想いは沈む

木風
BL
王太子殿下と共に過ごした、学園の日々。 その笑顔が眩しくて、遠くて、手を伸ばせば届くようで届かなかった。 燃えるような恋ではない。ただ、触れずに見つめ続けた冬の夜。 眠りに沈む殿下の唇が、誰かの名を呼ぶ。 それが妹の名だと知っても、離れられなかった。 「殿下が幸せなら、それでいい」 そう言い聞かせながらも、胸の奥で何かが静かに壊れていく。 赦されぬ恋を抱いたまま、彼は月影のように想いを沈めた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎月影 / 木風 雪乃

処理中です...