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デゼル ~どこにも行かないで~
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「……どこにも……行かないで……」
私の涙の質が変わったのに気がついたのか、サイファがじっと私を見詰めて、お湯で泡を流してから、私をぎゅっと抱き締めた。
「うん、だいじょうぶ。どこにも行かない」
私が嬉しくて微笑んだら、サイファも微笑み返してくれた。
胸の奥が、甘くてあたたかな気持ちで満たされて、ずっと、重かったカラダが憑き物が落ちたみたいにラクになった。
「あ、よかった。デゼル、ラクになったみたいだから、髪も洗っちゃうね。冷えないようにくっついててね」
サイファって、どうしてわかるのかな。
私の長い髪はさすがに片手だと洗いにくいから、私をずっと抱き寄せてくれていたサイファの腕が離れて、こんなに近くにいるのにそれが寂しい気持ちと、自分でサイファにくっつくのが恥ずかしい気持ちと、髪を洗ってくれるサイファの手がくすぐったい気持ちと。
すごく、ふわふわした幸福感と心地好さに満たされて、恍惚としていたら、私の髪を流したサイファが、後回しにした前を洗い始めたの。
首回りから胸、おへその方――
「え、そこ、やめっ…! サイファ様、やめて、自分で洗う!」
「感じる? 声、抑えなくていいよ?」
「……あ、ぁっ……」
やだ、やだ、やだ!
「――ごめん、デゼル。冷えないようにと思ったんだけど、ちょっと、熱が上がりすぎたね。顔、洗う? 真っ赤だよ」
震える手で、サイファが汲んでくれた水をすくって顔を洗ったら、冷たくて気持ちよかった、けど。
どうして、私だけめちゃくちゃになるの?
私だけ感じて真っ赤になって、息が乱れて、震えだって止まらないのに、サイファは全然――
「綺麗にできたと思うから、湯冷めしないように湯船につかっててね」
どうしよう、泣いてしまいそう。
肌が重なるようにだっこされるのは、感じすぎて、ずっと、逃げ出したかったのに。
離れると、途端に寂しくなった。
なにもなかったみたいに自分の体を洗ってるサイファを、すごく遠くに感じるの。
心の距離が、遠く、遠く、離れてしまったみたいに感じて、涙が出そうなくらい寂しかった。
いつの間にかみよみよと泣いていたら、体を洗い終わって、ふり向いたサイファが少しあわててくれて、私、嬉しかった。
「デゼル、どうしたの? いやだった?」
広い湯船につかった私を、サイファがのぞき込むようにして、心配してくれたの。
でも、私、どうしたんだろう。
「……サイファ様が……遠くにいたから、寂しかった……どこにも行かないって、約束してくれたのに……」
答えるうちに、また、涙がこぼれてきたの。
それなのに、サイファはどうしてか、すごく嬉しそうに吹き出したの。
「寂しかったの? ごめんね、傍にいたつもりだったんだけど」
湯船に入ってきたサイファが、私を抱き上げて膝に座らせて、きゅっと抱き締めてくれた。
「きゃ」
「これでいい? もう、寂しくない?」
ゆでだこになって、私が何も考えられずにうなずいたら、向かい合うように私を横座りさせたサイファが言ったの。
「少し、入れるね」
「えっ……」
目を伏せたサイファが何度かついばむようなキスをした後、舌を挿して絡めてきて、痺れるかと思う甘さと苦しさが胸にいっぱいに満ちた。
どうして――
私だけ、震えるの。泣かされるの。
「ねぇ、デゼル」
サイファ?
なんだろう、優しく抱いてくれるサイファが、なにか、いつもと違う。
「――しても、いい?」
私の涙の質が変わったのに気がついたのか、サイファがじっと私を見詰めて、お湯で泡を流してから、私をぎゅっと抱き締めた。
「うん、だいじょうぶ。どこにも行かない」
私が嬉しくて微笑んだら、サイファも微笑み返してくれた。
胸の奥が、甘くてあたたかな気持ちで満たされて、ずっと、重かったカラダが憑き物が落ちたみたいにラクになった。
「あ、よかった。デゼル、ラクになったみたいだから、髪も洗っちゃうね。冷えないようにくっついててね」
サイファって、どうしてわかるのかな。
私の長い髪はさすがに片手だと洗いにくいから、私をずっと抱き寄せてくれていたサイファの腕が離れて、こんなに近くにいるのにそれが寂しい気持ちと、自分でサイファにくっつくのが恥ずかしい気持ちと、髪を洗ってくれるサイファの手がくすぐったい気持ちと。
すごく、ふわふわした幸福感と心地好さに満たされて、恍惚としていたら、私の髪を流したサイファが、後回しにした前を洗い始めたの。
首回りから胸、おへその方――
「え、そこ、やめっ…! サイファ様、やめて、自分で洗う!」
「感じる? 声、抑えなくていいよ?」
「……あ、ぁっ……」
やだ、やだ、やだ!
「――ごめん、デゼル。冷えないようにと思ったんだけど、ちょっと、熱が上がりすぎたね。顔、洗う? 真っ赤だよ」
震える手で、サイファが汲んでくれた水をすくって顔を洗ったら、冷たくて気持ちよかった、けど。
どうして、私だけめちゃくちゃになるの?
私だけ感じて真っ赤になって、息が乱れて、震えだって止まらないのに、サイファは全然――
「綺麗にできたと思うから、湯冷めしないように湯船につかっててね」
どうしよう、泣いてしまいそう。
肌が重なるようにだっこされるのは、感じすぎて、ずっと、逃げ出したかったのに。
離れると、途端に寂しくなった。
なにもなかったみたいに自分の体を洗ってるサイファを、すごく遠くに感じるの。
心の距離が、遠く、遠く、離れてしまったみたいに感じて、涙が出そうなくらい寂しかった。
いつの間にかみよみよと泣いていたら、体を洗い終わって、ふり向いたサイファが少しあわててくれて、私、嬉しかった。
「デゼル、どうしたの? いやだった?」
広い湯船につかった私を、サイファがのぞき込むようにして、心配してくれたの。
でも、私、どうしたんだろう。
「……サイファ様が……遠くにいたから、寂しかった……どこにも行かないって、約束してくれたのに……」
答えるうちに、また、涙がこぼれてきたの。
それなのに、サイファはどうしてか、すごく嬉しそうに吹き出したの。
「寂しかったの? ごめんね、傍にいたつもりだったんだけど」
湯船に入ってきたサイファが、私を抱き上げて膝に座らせて、きゅっと抱き締めてくれた。
「きゃ」
「これでいい? もう、寂しくない?」
ゆでだこになって、私が何も考えられずにうなずいたら、向かい合うように私を横座りさせたサイファが言ったの。
「少し、入れるね」
「えっ……」
目を伏せたサイファが何度かついばむようなキスをした後、舌を挿して絡めてきて、痺れるかと思う甘さと苦しさが胸にいっぱいに満ちた。
どうして――
私だけ、震えるの。泣かされるの。
「ねぇ、デゼル」
サイファ?
なんだろう、優しく抱いてくれるサイファが、なにか、いつもと違う。
「――しても、いい?」
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