雪月花の物語 ～聖域の悪魔～

第五章 闇血呪

5-2j. 聖域の悪魔【御伽噺】

　昔々あるところに、それは美しい皇妃様がいました。
　皇妃様には一人の皇子様がいました。
　その皇子様は、皇妃様の息がかかった妃を断りました。
　皇妃様は、皇子様が逢引しているとの密告を受けて、相手の若い娘を皇后宮に招きます。
　皇子様とは到底、身分の釣り合わない娘に皇妃様は言いました。

　皇子様を監視して、すべてのことを皇妃様に教えなさい。
　そうすれば、あなたをお妃様にしてあげましょう――

　綺麗なドレスを着て、麗しい皇子様の傍で、その一生を召使にかしずかれて暮らせるのですよと、皇妃様は言いました。

　ただ、皇子様を裏切り続けるだけで――

　断った若い娘は、翌日、バラバラにされて湖のほとりに捨てられていました。
　皇子様と娘の逢瀬を密告した、皇妃様に忠実な美しい娘が、皇子様のお妃様になりました。