36 / 139
第二章 白馬の王子様
第33話 悪役令嬢は町人Sと二人で出国はしなかったけど
しおりを挟む
「そういえば、サイファ様の誕生日はいつ?」
「7月27日。デゼルは?」
僕達は今、カモメが飛んでいたりする海の上。
豪華客船に乗って、トランスサタニアン帝国の港を目指しているところ。
「9月7日」
「乙女座だね、デゼルらしい」
僕は獅子座だよ。
似合わないって言われることが多くて残念だけど、かっこいいから、僕、こっそり気に入ってるんだ。
「サイファ様、誕生日はどんなお祝いが嬉しい?」
「デゼルがいてくれたら、嬉しい。時の神殿まで一緒に歩いた日だったから、楽しかったよ。デゼルは?」
父さんが帰ってこなくなって、誕生日に一人じゃないのも、安心できて楽しいのも、当たり前じゃなかったんだって、思い知ったから。
誕生日を大好きなデゼルと一緒に過ごせて、ようやく、安心できる僕の居場所を取り戻せたような気がしたんだ。
だから、母さんとデゼルの誕生日には、今度は僕が一緒にいてお祝いしてあげたい。
「私も、サイファ様が傍にいてくれるのが嬉しいな」
よかった。
僕と一緒にいたがる誰かがいてくれるのって、すごく嬉しくて、自信がわいてくるんだ。それがデゼルなら、なおさら。
三日の予定の船旅で、二人で行かないようにガゼル様に釘を刺されたから、ジャイロも一緒なんだけど。
ジャイロは船酔いが酷いみたいで、船室で苦しそうに唸ってた。
せっかく、豪華客船に乗るなんてすごい経験ができてるのに、気持ち悪いだけなんて、可哀相なんだけど。
船酔いはヒールでは癒せなくて、デゼルにも、どうしようもないみたい。
デゼルと一緒の客室に戻ると、デゼルが書きかけの手紙の続きに取り掛かったから、誰にどんな手紙を書いてるのか、少し気になって聞いてみたんだ。
「読んでもいい?」
「うん」
さっそく、読んでみてびっくりしたよ。
ガゼル様へのお手紙なのはすぐにわかったけど、最初から最後まで、難しい漢字と難しい言葉がたくさん並んでるんだ。
政教分離って……?
辞書を引いたら、読み方はセイキョウブンリ。
政教の意味は政治と宗教だったけど、これに分離がつくとどういう意味になるんだろう。そこまでは辞書にも載ってなくて。
だって、政治と宗教を分離するって、最初から別だよね? 分離してない状態がわからないから、分離する意味もわからない。
御代とか、読み方の見当もつかなくて、デゼルに聞いてみたら、読み方はミヨだって。
「……僕がこの手紙を読もうとするのって、デゼルの邪魔になる?」
「ううん、読んでくれるなら、その方がいい。今度、ガゼル様にお会いする時には、この内容でお断りするつもりだから」
えっ。
じゃあ、これ、婚約をお断りしたいっていうお手紙なんだ。
どうして、それがこんな長文になるんだろう。
「婚約をお断りさせて下さい」じゃ、駄目なんだ……。
身分の高い人達って大変なんだね。
だけど、他人事じゃなくて、僕も当事者になるんだ。
ほんとなら、僕がこのお手紙を書けなくちゃいけないんだと思う。
だから、辞書を片手に、頑張って読んだよ。すごく、時間がかかったけど。
「デゼルって、ほんとにすごいね」
「どうかな、サイファ様の目から見ても、ガゼル様に失礼じゃないかな」
失礼だなんて、全然、そんな内容じゃない。
「僕だったら、こんな手紙をもらえたら嬉しいよ。――だけど」
「よかった。――だけど?」
「余計に、つらくはなりそうかな」
ほどほどにねってデゼルの頭をなでたら、ふにゃって、デゼルが可愛らしく笑うんだ。――もぉ、あんまり可愛いと、デゼルを構って遊びたくなっちゃうよ? そんな場合じゃないのに、デゼルって可愛すぎるんだ。
まだ、手紙を書いてるデゼルを邪魔しないように、ほっぺをつついたりして構いたいのを我慢して、僕はジャイロの様子を見るために、船室を出た。
僕ばっかりデゼルと一緒で、少し、悪いなと思ってたから。
だけど、ジャイロは船酔いがものすごく気持ち悪そうで、それどころじゃなかったみたい。僕が差し入れたリンゴも、うろんな目で一瞥しただけで、食べようとはしなかった。
どうして、ジャイロだけ気持ち悪いのかな。
僕もデゼルも、全然、平気なんだけど。
お父さんがゴリラだからなのかな……。
**――*――**
ジャイロにとっては、まるで永遠かのようだった、長い長い三日間の船旅がようやく終わって。
僕たちは無事に、トランスサタニアン帝国の港に辿り着いた。
おえぇえええってなってるジャイロの背中を、せめてと思って、さすってあげたんだけど。
げっそりしたジャイロが痛々しかった。
この三日間、ジャイロはほとんど食べてないんだ。食べても吐いちゃって。
それにしても、この国ってなんだか――
空も、海も、街並みも灰色に見えるのは、どうしてだろう?
よく見たら、海は実際に濁ってて、汚い泡やゴミが浮かんでた。
空にも、真っ黒な煙をもうもうと吐き出す煙突が何本も見えたから、きっと、灰色に見えるのは気のせいじゃないんだ。
港の隅に、クライス様のお屋敷の庭園にあったのと同じようなオブジェがあって、それに手をかざしたデゼルが、僕達のところにてててって、可愛らしく駆け戻ってくる。
わ、デゼル、転びそう。
ヒヤヒヤしたけど、なんとか、転ばなかった。
デゼル、よく転ぶから、いつもは僕が手をつないであげるんだけど、僕、ジャイロの背中をさすってあげてたから。
「ジャイロ、つらそうね。今回はここまでにして、いったん、帰ろうか」
「えっ」
僕も驚いたけど、それより、ジャイロの顔がゾンビみたいな、土気色になった。
ようやく降りたのに、またすぐ、船に戻れとか拷問だよね……。
「クロノスで帰るから、二人とも、手をつないでね?」
「あ、そうか。今度からはいつでも、ここまで魔法で来られるようになったんだ?」
「うん」
「ジャイロ、よかったね。帰りはもう、船に乗らなくていいんだって」
「……マジか……」
喜ぶと思ったのに、ジャイロはげんなりした顔。
「だったらなぁ、最初から、二人でいったんここまで来いよ……」
「でも、ガゼル様が二人だけで来たらダメって」
「それ、大人と行けって意味だったんじゃねぇ? 今さらだから、いーけどよ……」
「そうね。ジャイロが船酔いするって知ってたら、クレイに頼めばよかったかも」
デゼルが申し訳なさそうに言って差し出した手を、壊さないか心配してるみたいな顔で、おっかなびっくり、ジャイロが取った。
その頬に、少し、赤みがさしてて。
ふふ、夢みたいに可愛いデゼルと手をつなげるの、役得だよね。
ジャイロ、そうでなくても、女の子と手をつなぐのなんて、初めてじゃないのかな。
「時空【Lv1】」
時の神殿から帰還した時みたいに、視界がぐにゃりとゆがんだ。
「7月27日。デゼルは?」
僕達は今、カモメが飛んでいたりする海の上。
豪華客船に乗って、トランスサタニアン帝国の港を目指しているところ。
「9月7日」
「乙女座だね、デゼルらしい」
僕は獅子座だよ。
似合わないって言われることが多くて残念だけど、かっこいいから、僕、こっそり気に入ってるんだ。
「サイファ様、誕生日はどんなお祝いが嬉しい?」
「デゼルがいてくれたら、嬉しい。時の神殿まで一緒に歩いた日だったから、楽しかったよ。デゼルは?」
父さんが帰ってこなくなって、誕生日に一人じゃないのも、安心できて楽しいのも、当たり前じゃなかったんだって、思い知ったから。
誕生日を大好きなデゼルと一緒に過ごせて、ようやく、安心できる僕の居場所を取り戻せたような気がしたんだ。
だから、母さんとデゼルの誕生日には、今度は僕が一緒にいてお祝いしてあげたい。
「私も、サイファ様が傍にいてくれるのが嬉しいな」
よかった。
僕と一緒にいたがる誰かがいてくれるのって、すごく嬉しくて、自信がわいてくるんだ。それがデゼルなら、なおさら。
三日の予定の船旅で、二人で行かないようにガゼル様に釘を刺されたから、ジャイロも一緒なんだけど。
ジャイロは船酔いが酷いみたいで、船室で苦しそうに唸ってた。
せっかく、豪華客船に乗るなんてすごい経験ができてるのに、気持ち悪いだけなんて、可哀相なんだけど。
船酔いはヒールでは癒せなくて、デゼルにも、どうしようもないみたい。
デゼルと一緒の客室に戻ると、デゼルが書きかけの手紙の続きに取り掛かったから、誰にどんな手紙を書いてるのか、少し気になって聞いてみたんだ。
「読んでもいい?」
「うん」
さっそく、読んでみてびっくりしたよ。
ガゼル様へのお手紙なのはすぐにわかったけど、最初から最後まで、難しい漢字と難しい言葉がたくさん並んでるんだ。
政教分離って……?
辞書を引いたら、読み方はセイキョウブンリ。
政教の意味は政治と宗教だったけど、これに分離がつくとどういう意味になるんだろう。そこまでは辞書にも載ってなくて。
だって、政治と宗教を分離するって、最初から別だよね? 分離してない状態がわからないから、分離する意味もわからない。
御代とか、読み方の見当もつかなくて、デゼルに聞いてみたら、読み方はミヨだって。
「……僕がこの手紙を読もうとするのって、デゼルの邪魔になる?」
「ううん、読んでくれるなら、その方がいい。今度、ガゼル様にお会いする時には、この内容でお断りするつもりだから」
えっ。
じゃあ、これ、婚約をお断りしたいっていうお手紙なんだ。
どうして、それがこんな長文になるんだろう。
「婚約をお断りさせて下さい」じゃ、駄目なんだ……。
身分の高い人達って大変なんだね。
だけど、他人事じゃなくて、僕も当事者になるんだ。
ほんとなら、僕がこのお手紙を書けなくちゃいけないんだと思う。
だから、辞書を片手に、頑張って読んだよ。すごく、時間がかかったけど。
「デゼルって、ほんとにすごいね」
「どうかな、サイファ様の目から見ても、ガゼル様に失礼じゃないかな」
失礼だなんて、全然、そんな内容じゃない。
「僕だったら、こんな手紙をもらえたら嬉しいよ。――だけど」
「よかった。――だけど?」
「余計に、つらくはなりそうかな」
ほどほどにねってデゼルの頭をなでたら、ふにゃって、デゼルが可愛らしく笑うんだ。――もぉ、あんまり可愛いと、デゼルを構って遊びたくなっちゃうよ? そんな場合じゃないのに、デゼルって可愛すぎるんだ。
まだ、手紙を書いてるデゼルを邪魔しないように、ほっぺをつついたりして構いたいのを我慢して、僕はジャイロの様子を見るために、船室を出た。
僕ばっかりデゼルと一緒で、少し、悪いなと思ってたから。
だけど、ジャイロは船酔いがものすごく気持ち悪そうで、それどころじゃなかったみたい。僕が差し入れたリンゴも、うろんな目で一瞥しただけで、食べようとはしなかった。
どうして、ジャイロだけ気持ち悪いのかな。
僕もデゼルも、全然、平気なんだけど。
お父さんがゴリラだからなのかな……。
**――*――**
ジャイロにとっては、まるで永遠かのようだった、長い長い三日間の船旅がようやく終わって。
僕たちは無事に、トランスサタニアン帝国の港に辿り着いた。
おえぇえええってなってるジャイロの背中を、せめてと思って、さすってあげたんだけど。
げっそりしたジャイロが痛々しかった。
この三日間、ジャイロはほとんど食べてないんだ。食べても吐いちゃって。
それにしても、この国ってなんだか――
空も、海も、街並みも灰色に見えるのは、どうしてだろう?
よく見たら、海は実際に濁ってて、汚い泡やゴミが浮かんでた。
空にも、真っ黒な煙をもうもうと吐き出す煙突が何本も見えたから、きっと、灰色に見えるのは気のせいじゃないんだ。
港の隅に、クライス様のお屋敷の庭園にあったのと同じようなオブジェがあって、それに手をかざしたデゼルが、僕達のところにてててって、可愛らしく駆け戻ってくる。
わ、デゼル、転びそう。
ヒヤヒヤしたけど、なんとか、転ばなかった。
デゼル、よく転ぶから、いつもは僕が手をつないであげるんだけど、僕、ジャイロの背中をさすってあげてたから。
「ジャイロ、つらそうね。今回はここまでにして、いったん、帰ろうか」
「えっ」
僕も驚いたけど、それより、ジャイロの顔がゾンビみたいな、土気色になった。
ようやく降りたのに、またすぐ、船に戻れとか拷問だよね……。
「クロノスで帰るから、二人とも、手をつないでね?」
「あ、そうか。今度からはいつでも、ここまで魔法で来られるようになったんだ?」
「うん」
「ジャイロ、よかったね。帰りはもう、船に乗らなくていいんだって」
「……マジか……」
喜ぶと思ったのに、ジャイロはげんなりした顔。
「だったらなぁ、最初から、二人でいったんここまで来いよ……」
「でも、ガゼル様が二人だけで来たらダメって」
「それ、大人と行けって意味だったんじゃねぇ? 今さらだから、いーけどよ……」
「そうね。ジャイロが船酔いするって知ってたら、クレイに頼めばよかったかも」
デゼルが申し訳なさそうに言って差し出した手を、壊さないか心配してるみたいな顔で、おっかなびっくり、ジャイロが取った。
その頬に、少し、赤みがさしてて。
ふふ、夢みたいに可愛いデゼルと手をつなげるの、役得だよね。
ジャイロ、そうでなくても、女の子と手をつなぐのなんて、初めてじゃないのかな。
「時空【Lv1】」
時の神殿から帰還した時みたいに、視界がぐにゃりとゆがんだ。
0
あなたにおすすめの小説
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる