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第二章 白馬の王子様
第44話 町人Sは公国滅亡と悪役令嬢の破滅を視る
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大公陛下をはじめ貴族諸侯が見に来ていたのは、もちろん、僕達ただの小学生なんかじゃない。
水神の加護を授かったというガゼル様と、発表の間、ずっと、ガゼル様の傍についていた水神と、その奇跡。
だから、グループ研究を中心になって準備したのはマリアで、デゼルはなんとか、授賞式の壇上に上がる代表はマリアにしたかったみたいなんだけど、どうしたって、そうはいかなかったみたい。
仕方がないよ、同じクラスに闇巫女様のデゼルがいて、グループ研究を企画したのも指揮したのも、そのデゼルなんだから。
代表がしないといけないことって、壇上でガゼル様に最敬礼して、トロフィーを受け取るだけのことなんだけどね。
水神がいなくなっても、みんな、『公国の秘宝と謳われる美しさの闇巫女様』も見てみたいから、ほとんど誰も帰らない。
あー……。
おっかなびっくり出てきたデゼルは、恐怖と緊張で真っ青だった。
僕が一緒に壇上に上がれれば、よかったんだけど。
デゼル、こういうのほんとに駄目なんだ。
今にも倒れそうな様子で、デゼルはそれでも、ガゼル様に綺麗に最敬礼した。
ガゼル様からトロフィーを受け取って、さがろうとしたデゼルを。
どうしたのか、ガゼル様が引き寄せた。
聞いてなかったから、僕は思わず椅子を蹴立てて立ち上がってた。
驚いた様子のデゼルを軽く抱き上げるようにしたガゼル様が、デゼルにキス、したんだ。
僕は頭の中が真っ白になって、何が起きているのかわからなかった。
えっと、授賞式の最中に、何かの縁起かつぎとか?
でも、デゼルは承知してた?
そんなはず、ないと思う。そんな話があったら、デゼルが僕に相談しないはずがないし、そうだ、だって、デゼルはさがろうとしてた。聞いてなかったんだ。
ガゼル様にキスされたデゼルが、苦しがって泣くのを見たら、僕はもう立場も忘れて、やめさせようと駆け出してた。
僕がみんなをかきわけて、壇上にデゼルを助けに行こうとした時――
デゼルの身が、軽々と中空に舞い上がったんだ。
月から闇がさして、デゼルを闇に包み込み、伏せられたデゼルの目が開かれた。
透明感の高い蒼のはずのデゼルの瞳が、闇の中、神秘的な翡翠の輝きを放って、僕たちを見下ろしてた。
『妾は闇の神オプスキュリテ。――妾を召喚せし、ガゼル・オーブ・オプスキュリテよ、そなたに公国の運命を視せましょう。この運命は、より高次の神に紡がれしもの。かの神の前に妾の加護はあまりに儚く、運命に立ち向かい得る者は――』
デゼルに闇の神オプスキュリテが降臨した!? ガゼル様が召喚したって――
闇の女神が放った闇が、ガゼル様と僕を撃った。
立っていられなくなるくらいの衝撃を受けて、視界が暗転した。
漆黒に塗りつぶされた視界の中に、炎が揺れた。
僕が視たものは、三年後、公国が滅ぼされる未来だった。
公国の人々が、家々が、美しかった山林が、炎に呑み込まれて黒い灰になった。
見知らぬ黒髪の青年が公邸に踏み込んできて、大公陛下と公妃様を斬り殺した。
青年は最後に、その剣をガゼル様に狙い定めて突き入れた。
すべてが闇に塗り潰された。
景色が変わった。
デゼルの傍に、妖艶な邪神が佇んでいた。
どうしてだろう、僕にはその人が邪神だってわかったんだ。
その魂が持つ絶大なエネルギー、禍々しさ、姿は妖艶な美女でも、魂が人間のものじゃなかった。
闇の神どころか、水の神の加護まで授かったデゼルに、禍々しい呪いをかけることができる、魔の神。
何、これ――!?
聞いてない。
僕、公国が滅びるとは聞いてたけど、デゼルがこんな!
あまりに、おぞましい運命に呑まれたデゼルの瞳から、心が失せた。
公国を滅ぼした青年のもとに、闇の十二使徒が集う――
クライス様と、闇幽鬼のユリシーズ。
まるで別人のように、心を失くした瞳をした、氷の美貌の闇巫女デゼル。
残りの人達は、誰だかわからなかった。
見知らぬ光の聖女のもとに、光の十二使徒が集う――
光と闇が絡まり、やがて。
追い詰められたデゼルが、心を失くしたようだった瞳から涙を落として、闇主を庇う光景が見えたんだ。
――また!
僕は怒りを抑えられなかった。
闇主の顔は見えない。
光の聖女と使徒たちは、闇主の眼前でデゼルを惨殺して、通り過ぎて行った。
より高次の神が紡ぐ運命って、いったい何!?
どうして、こんな酷い――!!
はっと気がついた時には、いつかのジャイロみたいな苦しみ方をしたガゼル様が、壇上に倒れてしまっていた。
デゼルが空から落ちてくると感じて、僕は、慌てて受け止めに走った。
「――デゼル!!」
水神の加護を授かったというガゼル様と、発表の間、ずっと、ガゼル様の傍についていた水神と、その奇跡。
だから、グループ研究を中心になって準備したのはマリアで、デゼルはなんとか、授賞式の壇上に上がる代表はマリアにしたかったみたいなんだけど、どうしたって、そうはいかなかったみたい。
仕方がないよ、同じクラスに闇巫女様のデゼルがいて、グループ研究を企画したのも指揮したのも、そのデゼルなんだから。
代表がしないといけないことって、壇上でガゼル様に最敬礼して、トロフィーを受け取るだけのことなんだけどね。
水神がいなくなっても、みんな、『公国の秘宝と謳われる美しさの闇巫女様』も見てみたいから、ほとんど誰も帰らない。
あー……。
おっかなびっくり出てきたデゼルは、恐怖と緊張で真っ青だった。
僕が一緒に壇上に上がれれば、よかったんだけど。
デゼル、こういうのほんとに駄目なんだ。
今にも倒れそうな様子で、デゼルはそれでも、ガゼル様に綺麗に最敬礼した。
ガゼル様からトロフィーを受け取って、さがろうとしたデゼルを。
どうしたのか、ガゼル様が引き寄せた。
聞いてなかったから、僕は思わず椅子を蹴立てて立ち上がってた。
驚いた様子のデゼルを軽く抱き上げるようにしたガゼル様が、デゼルにキス、したんだ。
僕は頭の中が真っ白になって、何が起きているのかわからなかった。
えっと、授賞式の最中に、何かの縁起かつぎとか?
でも、デゼルは承知してた?
そんなはず、ないと思う。そんな話があったら、デゼルが僕に相談しないはずがないし、そうだ、だって、デゼルはさがろうとしてた。聞いてなかったんだ。
ガゼル様にキスされたデゼルが、苦しがって泣くのを見たら、僕はもう立場も忘れて、やめさせようと駆け出してた。
僕がみんなをかきわけて、壇上にデゼルを助けに行こうとした時――
デゼルの身が、軽々と中空に舞い上がったんだ。
月から闇がさして、デゼルを闇に包み込み、伏せられたデゼルの目が開かれた。
透明感の高い蒼のはずのデゼルの瞳が、闇の中、神秘的な翡翠の輝きを放って、僕たちを見下ろしてた。
『妾は闇の神オプスキュリテ。――妾を召喚せし、ガゼル・オーブ・オプスキュリテよ、そなたに公国の運命を視せましょう。この運命は、より高次の神に紡がれしもの。かの神の前に妾の加護はあまりに儚く、運命に立ち向かい得る者は――』
デゼルに闇の神オプスキュリテが降臨した!? ガゼル様が召喚したって――
闇の女神が放った闇が、ガゼル様と僕を撃った。
立っていられなくなるくらいの衝撃を受けて、視界が暗転した。
漆黒に塗りつぶされた視界の中に、炎が揺れた。
僕が視たものは、三年後、公国が滅ぼされる未来だった。
公国の人々が、家々が、美しかった山林が、炎に呑み込まれて黒い灰になった。
見知らぬ黒髪の青年が公邸に踏み込んできて、大公陛下と公妃様を斬り殺した。
青年は最後に、その剣をガゼル様に狙い定めて突き入れた。
すべてが闇に塗り潰された。
景色が変わった。
デゼルの傍に、妖艶な邪神が佇んでいた。
どうしてだろう、僕にはその人が邪神だってわかったんだ。
その魂が持つ絶大なエネルギー、禍々しさ、姿は妖艶な美女でも、魂が人間のものじゃなかった。
闇の神どころか、水の神の加護まで授かったデゼルに、禍々しい呪いをかけることができる、魔の神。
何、これ――!?
聞いてない。
僕、公国が滅びるとは聞いてたけど、デゼルがこんな!
あまりに、おぞましい運命に呑まれたデゼルの瞳から、心が失せた。
公国を滅ぼした青年のもとに、闇の十二使徒が集う――
クライス様と、闇幽鬼のユリシーズ。
まるで別人のように、心を失くした瞳をした、氷の美貌の闇巫女デゼル。
残りの人達は、誰だかわからなかった。
見知らぬ光の聖女のもとに、光の十二使徒が集う――
光と闇が絡まり、やがて。
追い詰められたデゼルが、心を失くしたようだった瞳から涙を落として、闇主を庇う光景が見えたんだ。
――また!
僕は怒りを抑えられなかった。
闇主の顔は見えない。
光の聖女と使徒たちは、闇主の眼前でデゼルを惨殺して、通り過ぎて行った。
より高次の神が紡ぐ運命って、いったい何!?
どうして、こんな酷い――!!
はっと気がついた時には、いつかのジャイロみたいな苦しみ方をしたガゼル様が、壇上に倒れてしまっていた。
デゼルが空から落ちてくると感じて、僕は、慌てて受け止めに走った。
「――デゼル!!」
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