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第三章 闇を彷徨う心を癒したい
第69話 町人Sは災禍の女神にお帰りを願う【後編】
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「いいわ、じゃあ、サイファの前で闇主たちにマワしてもらいなさい。デゼルをマワして、気持ちよくして下さいって、可愛い声でおねだりするのよ? あの洞窟でしたように、可愛いおクチでよぉくご奉仕して、甘い声で誘って、ナカにたくさん出して頂きなさい。それができたら、サイファをあなたの闇主から解放してあげる」
「や……」
「あら、やめるの? 今、断ったら、もう二度としてあげないわよ?」
「あ……あ……」
「ほら、あなたの大好きな闇主たちを呼んでやったわ? おねだりしなさい?」
胸の奥で波立った、黒い感情。
彼らを殺したいと思ってしまったんだ。
だけど、今は、それどころじゃない。
「デ…ゼルを……」
「デゼル、やめて」
デゼル、僕があげたイヤリング、なくしてしまったんだ。
なくしてしまっても、また、贈ってあげるから泣かないでって、約束したけど。
ごめんね、デゼル。
僕、あの約束は、守れないかもしれない。
エリス様にはきっと、満快癒が必要なんだ。
エリス様の魂は呪われすぎていて、なまはんかな癒術じゃ癒せない。
人の身で神を癒すなら、命を懸けなくちゃ――
満快癒は闇主だけに与えられた、命と引き換えにあらゆる呪いを祓い、あらゆる傷病を癒す闇魔法なんだ。
不思議だね。
僕には、確信があった。
満快癒ならエリス様を救えるって。
だけど――
僕は立ち上がれないままのデゼルを、高い高いしてあやすみたいに抱き上げて、驚かせた。
その後、真っ直ぐにデゼルの瞳を見詰めて言ったんだ。
「災禍の神に服従するデゼルなんて、僕は見たくない。僕はデゼルに生きていて欲しいし、僕も生きていたい」
僕が死んでしまったら、きっと、デゼルが泣くから。
満快癒をかける前に、エリス様にお願いしてみようね。
「だけど、僕が傍にいてもデゼルの救いになれないのなら、僕が傍にいてもデゼルが死にたいのなら、そうして、いいんだよ。だから、泣かないで。僕は、デゼルの闇主のままでいい。解放して欲しいなんて、僕は、思っていないんだ」
「サイファ…様……」
「ねぇ、デゼルは誰に従うの? 僕? 女神エリス?」
「……デゼルは……サイファ様に……従います……」
「ありがとう。じゃあ、エリス様にはお帰り頂こうね?」
デゼルって、本当に綺麗。
とっても可愛いと思って笑った。
最後かもしれないから、目に焼きつけておきたかったんだ。
震えるデゼルを、ぎゅっと、抱き締めて囁いた。
何にも怖くないんだよって。
エリス様には必ずお帰り頂くからね。
お帰り頂けない時には、満快癒をかけるから。
そうしたら、きっと、エリス様もデゼルに酷いことはもうなさらない。
僕がいなくなっても、ガゼル様が必ずデゼルを愛して下さるから、デゼルは何にも、怖がらなくていいんだ。
「お帰り下さい、女神エリス」
「……あら、本当に、解放されなくていいのかしら? デゼルは孕まされているわよ?」
エリス様がまた、デゼルを切り刻む言葉を並べ始めた。
なぜ、エリス様は僕を恐れるんだろう。
恐怖に狂ったようなエリス様が並べる穢らわしい言葉の響きは、空虚だった。
そうだとしても、デゼルにはつらいよね。
ごめんね。すぐに満快癒をかけてしまえばいいんだけど。
満快癒をかけなくてもエリス様がお帰り下さるなら、僕、死にたくないんだ。
身体をガタガタ震わせるデゼルを、ぎゅっと抱き締めた。
最後かもしれないから、一生分の想いを込めて。
「デゼル、本当にいいのかしら? このあたしが呪いをかけてあげたから、死ぬまで終わらない。眠る度に夢を見る、マワされて気持ちよかった夢を。とても、素敵な呪いよね? あなたの命、あと何日、もつかしら。あたしを追い返せば災禍も戻る。サイファの腕の中では死ねないわよ?」
「…っ……」
エリス様には、まるで余裕がなかった。
必死になって、デゼルを追い詰めようとしてるけど、こんなのは、女神様らしくもない悪あがきなんだ。
「デゼル、僕はもう、デゼルを一人にしない。僕のために犠牲になるのはもうやめて。何があっても、最後まで一緒にいよう? デゼルが望むなら、僕の腕の中で死ねるよ。大丈夫、僕は、デゼルの傍にいるから」
「サイファ…様……」
デゼルが僕の腕の中では死ねないなんて、そんなこと、全然ないよ。
今、僕の腕の中にいるんだから。
僕はデゼルが望むなら、僕の腕の中でデゼルを死なせてあげるから、大丈夫だよ。
「――お帰り下さい、女神エリス」
「チッ」
舌打ちしたエリス様の青い双眸が、邪悪な燐光を帯びた。
「約束が違う! 逃げて、サイファ様!」
――えっ!?
「時空【Lv2】――目標、スノウフェザー」
「デゼル!」
「や……」
「あら、やめるの? 今、断ったら、もう二度としてあげないわよ?」
「あ……あ……」
「ほら、あなたの大好きな闇主たちを呼んでやったわ? おねだりしなさい?」
胸の奥で波立った、黒い感情。
彼らを殺したいと思ってしまったんだ。
だけど、今は、それどころじゃない。
「デ…ゼルを……」
「デゼル、やめて」
デゼル、僕があげたイヤリング、なくしてしまったんだ。
なくしてしまっても、また、贈ってあげるから泣かないでって、約束したけど。
ごめんね、デゼル。
僕、あの約束は、守れないかもしれない。
エリス様にはきっと、満快癒が必要なんだ。
エリス様の魂は呪われすぎていて、なまはんかな癒術じゃ癒せない。
人の身で神を癒すなら、命を懸けなくちゃ――
満快癒は闇主だけに与えられた、命と引き換えにあらゆる呪いを祓い、あらゆる傷病を癒す闇魔法なんだ。
不思議だね。
僕には、確信があった。
満快癒ならエリス様を救えるって。
だけど――
僕は立ち上がれないままのデゼルを、高い高いしてあやすみたいに抱き上げて、驚かせた。
その後、真っ直ぐにデゼルの瞳を見詰めて言ったんだ。
「災禍の神に服従するデゼルなんて、僕は見たくない。僕はデゼルに生きていて欲しいし、僕も生きていたい」
僕が死んでしまったら、きっと、デゼルが泣くから。
満快癒をかける前に、エリス様にお願いしてみようね。
「だけど、僕が傍にいてもデゼルの救いになれないのなら、僕が傍にいてもデゼルが死にたいのなら、そうして、いいんだよ。だから、泣かないで。僕は、デゼルの闇主のままでいい。解放して欲しいなんて、僕は、思っていないんだ」
「サイファ…様……」
「ねぇ、デゼルは誰に従うの? 僕? 女神エリス?」
「……デゼルは……サイファ様に……従います……」
「ありがとう。じゃあ、エリス様にはお帰り頂こうね?」
デゼルって、本当に綺麗。
とっても可愛いと思って笑った。
最後かもしれないから、目に焼きつけておきたかったんだ。
震えるデゼルを、ぎゅっと、抱き締めて囁いた。
何にも怖くないんだよって。
エリス様には必ずお帰り頂くからね。
お帰り頂けない時には、満快癒をかけるから。
そうしたら、きっと、エリス様もデゼルに酷いことはもうなさらない。
僕がいなくなっても、ガゼル様が必ずデゼルを愛して下さるから、デゼルは何にも、怖がらなくていいんだ。
「お帰り下さい、女神エリス」
「……あら、本当に、解放されなくていいのかしら? デゼルは孕まされているわよ?」
エリス様がまた、デゼルを切り刻む言葉を並べ始めた。
なぜ、エリス様は僕を恐れるんだろう。
恐怖に狂ったようなエリス様が並べる穢らわしい言葉の響きは、空虚だった。
そうだとしても、デゼルにはつらいよね。
ごめんね。すぐに満快癒をかけてしまえばいいんだけど。
満快癒をかけなくてもエリス様がお帰り下さるなら、僕、死にたくないんだ。
身体をガタガタ震わせるデゼルを、ぎゅっと抱き締めた。
最後かもしれないから、一生分の想いを込めて。
「デゼル、本当にいいのかしら? このあたしが呪いをかけてあげたから、死ぬまで終わらない。眠る度に夢を見る、マワされて気持ちよかった夢を。とても、素敵な呪いよね? あなたの命、あと何日、もつかしら。あたしを追い返せば災禍も戻る。サイファの腕の中では死ねないわよ?」
「…っ……」
エリス様には、まるで余裕がなかった。
必死になって、デゼルを追い詰めようとしてるけど、こんなのは、女神様らしくもない悪あがきなんだ。
「デゼル、僕はもう、デゼルを一人にしない。僕のために犠牲になるのはもうやめて。何があっても、最後まで一緒にいよう? デゼルが望むなら、僕の腕の中で死ねるよ。大丈夫、僕は、デゼルの傍にいるから」
「サイファ…様……」
デゼルが僕の腕の中では死ねないなんて、そんなこと、全然ないよ。
今、僕の腕の中にいるんだから。
僕はデゼルが望むなら、僕の腕の中でデゼルを死なせてあげるから、大丈夫だよ。
「――お帰り下さい、女神エリス」
「チッ」
舌打ちしたエリス様の青い双眸が、邪悪な燐光を帯びた。
「約束が違う! 逃げて、サイファ様!」
――えっ!?
「時空【Lv2】――目標、スノウフェザー」
「デゼル!」
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