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第三章 闇を彷徨う心を癒したい
第82話 神罰【後編】
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翌月、デゼルが大地母神テラ・マーテル様の収穫祭のために地上に滞在している間に、僕は闇主たちを呼び集めた。
収穫祭の間は、ガゼル様がデゼルを守って下さるから。
少しも心配じゃないわけじゃないけど、ネプチューン様の副官であるデゼルと僕が、長い間、揃って皇宮を留守にするわけにはいかないんだ。
僕は絶対零度の眼差しで彼らを見渡すと、口を開いた。
「ねぇ、君達って」
僕の話を聞いたことで、彼らにかけられた魅了の魔法が解けるといけないから。
念のため、ジャイロにも立ち会ってもらって、万が一の場合には、掃討してしまうつもりだった。その時には、僕が一人でデゼルを手伝うから。闇主は僕がいれば足りる。彼らは、別にいらないんだ。
闇主たちは今、デゼルがネプチューン様から与えられた魔力でかけた、魅了の魔法にかかって、デゼルの手駒として帝国で働いてる。
デゼルがかけていた緑石のペンダントが、魅了の魔法に必要な発動体なんだって。
「どうして、十歳の少女にあんな残虐な真似ができたんだろう」
三十人近くもいる彼らが寄ってたかって、まだ十歳にしかならない、いたいけな少女に何をしたか。
「君達は、デゼルが闇神殿に連れてこられてから七年かけて、懸命な努力を重ねて築き上げてきた幸せを、木っ端微塵に破砕したんだ。デゼルは癒やすことのできない無惨な傷を、その心とからだと名に刻まれて、もう永遠に、やり直すことすら許されない」
彼らはいつ死んだって構わないくらい不幸だから、一人でも多くの他人を同じ不幸に陥れようとするんだ。
死にたい彼らの望み通りにしてあげたって、彼らは決して、犯した罪の重さを知ることはない。
「君達はこれから七年かけて、闇主として得がたい居場所を手に入れるだろう。親切にしてあげるよ、君達が死にたくなくなるように」
デゼルの痛みと苦しみを思い知らせたい。
「七年後、君達はデゼルと同じ目に遭うんだ」
残念ながら、デゼルほど酷い目には遭わせてあげられないけど――
「君達はね、平和で安定した暮らしに慣れて、死にたくなくなる頃に、キリがない数の魔物に、その四肢を切り裂かれる仕事をしないとならなくなるんだ。鋭い爪に切り裂かれ、鉤爪に突き刺され、毒牙に噛みつかれて、死ぬほど痛い思い、苦しい思いを何度も、何度もするだろう。だけど、死ねない。その度に仲間で助け合ってヒールするんだ。デゼルが僕とガゼル様を守るために死ねなくて、死にかける度、夜明けの守護を使って命をつないだように!」
怒りと悲しみのあまり、声とこぶしが震えた。
デゼル、どんなにつらかっただろう。
僕とガゼル様のために、懸命に命をつないでくれた。
「キリがないと言ったって、きっと、君達がデゼルに強いた数くらいに過ぎないよ。君達一人一人が、デゼルに何度もしたんだってね? エリス様が仰った。同じ数だけ、魔物たちに寄ってたかって切り刻んでもらって」
それでも彼らの悪名が、歴史に永遠に刻まれることはないんだ。
「それだけの魔物の呪いを解いてあげる頃には、君達はきっと感謝されるだろう。君達を愛してくれる女性だって、現れるかもしれない。でも、駄目だよ。すべての仕事が終わったら、君達は処刑される。ねぇ、わかる? ――デゼルは!」
僕、激昂したのって初めてかもしれない。
「僕を失う覚悟で、僕を闇主から解放したら死ぬ覚悟で、耐え抜いたんだ。ただ、僕とガゼル様を守るためだけに! 同じ目に遭って。ねぇ。君達も、この苦難の後に待つのは死だけだって、その絶望の中で頑張って。いいね? 身を呈しても、人々のために尽くすのが闇主の役割なんだ。デゼルは拒否したのに、無理強いしたのは君達なんだから。何度でも、闇巫女様の盾になって魔物たちに食い裂かれるんだよ。闇主として頑張って。――解散」
収穫祭の間は、ガゼル様がデゼルを守って下さるから。
少しも心配じゃないわけじゃないけど、ネプチューン様の副官であるデゼルと僕が、長い間、揃って皇宮を留守にするわけにはいかないんだ。
僕は絶対零度の眼差しで彼らを見渡すと、口を開いた。
「ねぇ、君達って」
僕の話を聞いたことで、彼らにかけられた魅了の魔法が解けるといけないから。
念のため、ジャイロにも立ち会ってもらって、万が一の場合には、掃討してしまうつもりだった。その時には、僕が一人でデゼルを手伝うから。闇主は僕がいれば足りる。彼らは、別にいらないんだ。
闇主たちは今、デゼルがネプチューン様から与えられた魔力でかけた、魅了の魔法にかかって、デゼルの手駒として帝国で働いてる。
デゼルがかけていた緑石のペンダントが、魅了の魔法に必要な発動体なんだって。
「どうして、十歳の少女にあんな残虐な真似ができたんだろう」
三十人近くもいる彼らが寄ってたかって、まだ十歳にしかならない、いたいけな少女に何をしたか。
「君達は、デゼルが闇神殿に連れてこられてから七年かけて、懸命な努力を重ねて築き上げてきた幸せを、木っ端微塵に破砕したんだ。デゼルは癒やすことのできない無惨な傷を、その心とからだと名に刻まれて、もう永遠に、やり直すことすら許されない」
彼らはいつ死んだって構わないくらい不幸だから、一人でも多くの他人を同じ不幸に陥れようとするんだ。
死にたい彼らの望み通りにしてあげたって、彼らは決して、犯した罪の重さを知ることはない。
「君達はこれから七年かけて、闇主として得がたい居場所を手に入れるだろう。親切にしてあげるよ、君達が死にたくなくなるように」
デゼルの痛みと苦しみを思い知らせたい。
「七年後、君達はデゼルと同じ目に遭うんだ」
残念ながら、デゼルほど酷い目には遭わせてあげられないけど――
「君達はね、平和で安定した暮らしに慣れて、死にたくなくなる頃に、キリがない数の魔物に、その四肢を切り裂かれる仕事をしないとならなくなるんだ。鋭い爪に切り裂かれ、鉤爪に突き刺され、毒牙に噛みつかれて、死ぬほど痛い思い、苦しい思いを何度も、何度もするだろう。だけど、死ねない。その度に仲間で助け合ってヒールするんだ。デゼルが僕とガゼル様を守るために死ねなくて、死にかける度、夜明けの守護を使って命をつないだように!」
怒りと悲しみのあまり、声とこぶしが震えた。
デゼル、どんなにつらかっただろう。
僕とガゼル様のために、懸命に命をつないでくれた。
「キリがないと言ったって、きっと、君達がデゼルに強いた数くらいに過ぎないよ。君達一人一人が、デゼルに何度もしたんだってね? エリス様が仰った。同じ数だけ、魔物たちに寄ってたかって切り刻んでもらって」
それでも彼らの悪名が、歴史に永遠に刻まれることはないんだ。
「それだけの魔物の呪いを解いてあげる頃には、君達はきっと感謝されるだろう。君達を愛してくれる女性だって、現れるかもしれない。でも、駄目だよ。すべての仕事が終わったら、君達は処刑される。ねぇ、わかる? ――デゼルは!」
僕、激昂したのって初めてかもしれない。
「僕を失う覚悟で、僕を闇主から解放したら死ぬ覚悟で、耐え抜いたんだ。ただ、僕とガゼル様を守るためだけに! 同じ目に遭って。ねぇ。君達も、この苦難の後に待つのは死だけだって、その絶望の中で頑張って。いいね? 身を呈しても、人々のために尽くすのが闇主の役割なんだ。デゼルは拒否したのに、無理強いしたのは君達なんだから。何度でも、闇巫女様の盾になって魔物たちに食い裂かれるんだよ。闇主として頑張って。――解散」
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