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第四章 叶わない願いはないと信じてる
第93話 町人Sは究極の美青年に出会う【前編】
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翌日。
デゼルが珍しく、息抜きをしたいと言ったから、僕は二つ返事で賛成した。
僕に殺されかけた昨日の今日で、デゼルはショックで寝込んでいたっておかしくないんだ。デゼルはやすまなきゃ。
でも、聖サファイアにある、風光明媚な街に行きたいって言うから、エトランジュも一緒にと思ったら。
神様の承認がかかった試練がある街だから、危ないかもしれないって言うんだ。
デゼル……――
ねぇ、やすむ気ある?
無理にでもやすませた方がいいんじゃないのかな。
でも、今度、ケイナ達に会ったら?
今のままじゃ、今度こそ、殺されてしまうかもしれない。
僕達、無理しないといけないのかな。エトランジュのためにも――
「サイファ様、この町の吟遊詩人の愛の歌は、恋人たちに祝福を与えてくれるんだよ」
足取りと気持ちが重かった僕に、デゼルがわくわくした声で話しかけてきて、その声を聞いたら、僕の気持ちもふっと軽くなった。
なんだ、エトランジュを連れてこなかったのは、念のためなんだね。
うん、この街は聖サファイア。
万が一、ケイナ達と会わないとも限らない。
それを警戒しただけで、デゼルはちゃんと、やすんでくれるつもりだったんだ。よかった。
「聴いて行く?」
「うん!」
デゼル、嬉しそうでよかった。
こんな、リラックスして楽しそうなデゼルは久しぶり。
エトランジュが生まれてから、楽しかったけど大変で、なかなか、ひといきつけなかったから。僕もデゼルも。
サイファの子だからよって、よく、言われるんだけど。ちょっと目を離したスキに、エトランジュってどこで何をし始めるかわからないんだもん。
五秒前にここにいたよねって思うのに、もう、隣にいなかったりするんだ。
まだ歩けないのに、信じられないよ。
エトランジュが這うペースって馬鹿にできないし、どこにもぐり込むかわからなさはもう、秘密の隠し通路を見つける天才の域。
でも、僕に似たって言われるのは心外なんだ。
だって、デゼルがこの調子で大人の目をかいくぐって、闇神殿を抜け出して、公園に遊びに来てくれてたから、僕はデゼルと出会えたんだよ。
なんだか、景色もデゼルもすべてが愛しくなってきて、微笑んでデゼルにキスしたら、デゼルの白い頬がほんのり桜色に染まって、もっと綺麗になった。
近くに湖があって緑豊かで、風が心地好い街なんだ。
オプスキュリテ公国みたいで懐かしい。
帰りたいな、あの頃に。
いつか、エトランジュも連れて公国に帰りたい。
誰も、デゼルに石を投げたりしない、僕達が出会った頃の、僕達が生まれ育った公国に――
**――*――**
デゼルと手をつないで広場に向かうと、吟遊詩人が来ているみたいで、三段もある立派な噴水のところに、人だかりができていた。
緩く波打つ白金の髪を片側に素敵に結い上げた、世にも優麗な美貌の青年が、噴水の縁に腰かけて、ロマンティックな愛の歌を奏でていたんだ。
「すごい。あの人、すごく綺麗だね」
歌声も美貌も、まるで神様みたい。
僕が感嘆して聞き惚れていたら、デゼルが僕の肩に頭をもたせてきて。
痺れるような、心地好い甘さが僕の胸を満たした。
今日は本格的に、僕達の休暇なんだね。
今だけは、悲しいことはみんな、忘れてしまってもいいのかもしれない。
こんなに、ほっとした様子のデゼルと過ごすのは、公国を追放されてからは初めてかもしれない。
もっと、いつでも安心させてあげられたらいいんだけど。
エトランジュが可愛すぎるから、到底、無理かなぁ。
小さな子供がいたら、それだけで、安心なんてしていられない。
朝から晩まで気が抜けなくて、こまぎれにしか眠れないこの感じ、たとえ眠っていても、殺気で目を覚ますための聖闘士の修行に似てる。
でも、もっと過酷かもしれない。
眠っていても、エトランジュが目を覚ました気配だけで目を覚まさないと大変なことになるんだ。
殺気なんてないよ。そんなたいそうなものはないんだ。
何にも考えてないエトランジュが、何にも考えてないから、思いつきで何をするかわからないことが大変なんだもん。
ハラハラしっぱなしなのに、あまり疲れないから、子供を育てるのって摩訶不思議。
「サイファ様……」
「なに?」
「私……サイファ様にずっと、傍にいて欲しい」
わ。わ。
せっかく、デゼルとゆっくり二人きりの時に、僕、エトランジュのことばかり考えてたみたい。
ごめんね、デゼル。
デゼルをきゅっと抱き締めて、優しくキスしてあげたら、心地好さそうに笑ってくれて、ほっとした。
デゼルが珍しく、息抜きをしたいと言ったから、僕は二つ返事で賛成した。
僕に殺されかけた昨日の今日で、デゼルはショックで寝込んでいたっておかしくないんだ。デゼルはやすまなきゃ。
でも、聖サファイアにある、風光明媚な街に行きたいって言うから、エトランジュも一緒にと思ったら。
神様の承認がかかった試練がある街だから、危ないかもしれないって言うんだ。
デゼル……――
ねぇ、やすむ気ある?
無理にでもやすませた方がいいんじゃないのかな。
でも、今度、ケイナ達に会ったら?
今のままじゃ、今度こそ、殺されてしまうかもしれない。
僕達、無理しないといけないのかな。エトランジュのためにも――
「サイファ様、この町の吟遊詩人の愛の歌は、恋人たちに祝福を与えてくれるんだよ」
足取りと気持ちが重かった僕に、デゼルがわくわくした声で話しかけてきて、その声を聞いたら、僕の気持ちもふっと軽くなった。
なんだ、エトランジュを連れてこなかったのは、念のためなんだね。
うん、この街は聖サファイア。
万が一、ケイナ達と会わないとも限らない。
それを警戒しただけで、デゼルはちゃんと、やすんでくれるつもりだったんだ。よかった。
「聴いて行く?」
「うん!」
デゼル、嬉しそうでよかった。
こんな、リラックスして楽しそうなデゼルは久しぶり。
エトランジュが生まれてから、楽しかったけど大変で、なかなか、ひといきつけなかったから。僕もデゼルも。
サイファの子だからよって、よく、言われるんだけど。ちょっと目を離したスキに、エトランジュってどこで何をし始めるかわからないんだもん。
五秒前にここにいたよねって思うのに、もう、隣にいなかったりするんだ。
まだ歩けないのに、信じられないよ。
エトランジュが這うペースって馬鹿にできないし、どこにもぐり込むかわからなさはもう、秘密の隠し通路を見つける天才の域。
でも、僕に似たって言われるのは心外なんだ。
だって、デゼルがこの調子で大人の目をかいくぐって、闇神殿を抜け出して、公園に遊びに来てくれてたから、僕はデゼルと出会えたんだよ。
なんだか、景色もデゼルもすべてが愛しくなってきて、微笑んでデゼルにキスしたら、デゼルの白い頬がほんのり桜色に染まって、もっと綺麗になった。
近くに湖があって緑豊かで、風が心地好い街なんだ。
オプスキュリテ公国みたいで懐かしい。
帰りたいな、あの頃に。
いつか、エトランジュも連れて公国に帰りたい。
誰も、デゼルに石を投げたりしない、僕達が出会った頃の、僕達が生まれ育った公国に――
**――*――**
デゼルと手をつないで広場に向かうと、吟遊詩人が来ているみたいで、三段もある立派な噴水のところに、人だかりができていた。
緩く波打つ白金の髪を片側に素敵に結い上げた、世にも優麗な美貌の青年が、噴水の縁に腰かけて、ロマンティックな愛の歌を奏でていたんだ。
「すごい。あの人、すごく綺麗だね」
歌声も美貌も、まるで神様みたい。
僕が感嘆して聞き惚れていたら、デゼルが僕の肩に頭をもたせてきて。
痺れるような、心地好い甘さが僕の胸を満たした。
今日は本格的に、僕達の休暇なんだね。
今だけは、悲しいことはみんな、忘れてしまってもいいのかもしれない。
こんなに、ほっとした様子のデゼルと過ごすのは、公国を追放されてからは初めてかもしれない。
もっと、いつでも安心させてあげられたらいいんだけど。
エトランジュが可愛すぎるから、到底、無理かなぁ。
小さな子供がいたら、それだけで、安心なんてしていられない。
朝から晩まで気が抜けなくて、こまぎれにしか眠れないこの感じ、たとえ眠っていても、殺気で目を覚ますための聖闘士の修行に似てる。
でも、もっと過酷かもしれない。
眠っていても、エトランジュが目を覚ました気配だけで目を覚まさないと大変なことになるんだ。
殺気なんてないよ。そんなたいそうなものはないんだ。
何にも考えてないエトランジュが、何にも考えてないから、思いつきで何をするかわからないことが大変なんだもん。
ハラハラしっぱなしなのに、あまり疲れないから、子供を育てるのって摩訶不思議。
「サイファ様……」
「なに?」
「私……サイファ様にずっと、傍にいて欲しい」
わ。わ。
せっかく、デゼルとゆっくり二人きりの時に、僕、エトランジュのことばかり考えてたみたい。
ごめんね、デゼル。
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