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第四章 叶わない願いはないと信じてる
第93話 町人Sは究極の美青年に出会う【後編】
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心配しなくても、僕だって、デゼルがいてくれないと困るんだ。
デゼルは体力がないから、闇巫女として働かないといけない日には、それだけで疲れ切ってしまって、エトランジュをみられない。
だから、僕がエトランジュをみる日も多いんだけど、すごく大変で。
僕はデゼルにかなり手伝ってもらえるから、なんとかなってるけど、一人で何人も子供をみるなんて、世のお母さん達は、よくできるよね。
でも、大変なのは確かだけど、ぐったりしてエトランジュをみられないデゼルの傍についてる時、僕はとても心が満たされて、嬉しくもなるんだ。
エトランジュがいなかった頃は、やっぱり、ガゼル様の方がデゼルを幸せにできたんじゃないかって、ふとしたはずみに不安になったりしたけど、公子の地位にあるガゼル様に、子守りをする時間なんてない。
デゼルはなるべく子守りを侍女任せにはしたくないみたいだから、僕を選んでよかったよねって、僕が誰より、デゼルを幸せにしてあげられてるよねって、よわよわなデゼルをエトランジュと一緒に看病してあげながら、僕、にこにこしてしまって。
デゼルには僕がいる。僕じゃないと駄目。
そういうのって、とっても嬉しい。
「そこの美しいお嬢さん、お名前を聞かせて頂けませんか?」
僕の肩にもたれたデゼルの優しい心地好さを、目を瞑って感じていたから。
愛の歌の弾き語りを終えた吟遊詩人に声をかけられて、少し驚いた。
間近に見ると、ますます綺麗だけど――
「あ」
声をあげたのは、僕じゃない。
何かに気がついた様子のデゼル。
「神様?」
吟遊詩人が吹き出した。
「私が神様に見えますか? そこまで褒めて頂けたのは初めてです。それも、あなたのような美しい方からとは、とても光栄ですよ」
うーん、僕は確かに、彼を神様みたいな歌声と美貌だと思ったんだけど。
デゼルの口調は、あんまり、彼に感嘆してる感じじゃないんだよね。
「ごめんなさい、人違いだったみたいです」
「……え?」
やっぱり。
それに、デゼルはあまり、旅先では名乗りたがらない。
悪名高い伝説の魔女だなんて、知られても、いいことはないから。
「サイファ様、そろそろ、行きましょう」
「彼はいいの? デゼル」
「うん、人違いだったの。エリス様のことを知っている方と間違えたの」
それって誰のことだろう。
少し考えて、察した僕はつい、吹き出しちゃった。
だって、デゼルはきっと、本物の神様と間違えたんだ。
「うん、行こうか」
デゼルにそう答えた後、僕は吟遊詩人に一礼して挨拶した。
「すみません、先を急ぐ旅の途中なので失礼します。心憩う、妙なる調べに乗せた、優しい歌をありがとう」
だって、とっても綺麗な人だし。
彼の歌を聞きたがったのはデゼルなのに、デゼルは彼の歌、もっと言えば、彼の歌を聴くことでもらえる恋人たちへの祝福にしか、興味がなかったみたい。
なんだか、ちょっと、見ていて申し訳ない気持ちになったから。
吟遊詩人の姿が見えなくなる頃、デゼルが僕に聞いてきた。
「サイファ様、さっき、どうして笑ったの?」
「だって、デゼル、あんなに素敵な人に声をかけられて、少しはときめいたりしないの?」
「……? サイファ様にときめいてる時に?」
デゼルが真顔で言うから、また、吹き出しそうになっちゃった。
可愛い。
結婚して七年も経つのに、まだ、僕にときめいてくれるんだ。
「デゼルって、なんで、そんなに僕がいいのかな。――でも、ありがとう」
「???」
きょとんとしたデゼルにキスして、耳元にそっと囁いた。
今度のおやすみの日には、丁寧に、可愛がってあげるねって。
わたわたして頬を紅潮させるデゼルが可愛らしくて、とっても、その日が待ち遠しかった。
デゼルは体力がないから、闇巫女として働かないといけない日には、それだけで疲れ切ってしまって、エトランジュをみられない。
だから、僕がエトランジュをみる日も多いんだけど、すごく大変で。
僕はデゼルにかなり手伝ってもらえるから、なんとかなってるけど、一人で何人も子供をみるなんて、世のお母さん達は、よくできるよね。
でも、大変なのは確かだけど、ぐったりしてエトランジュをみられないデゼルの傍についてる時、僕はとても心が満たされて、嬉しくもなるんだ。
エトランジュがいなかった頃は、やっぱり、ガゼル様の方がデゼルを幸せにできたんじゃないかって、ふとしたはずみに不安になったりしたけど、公子の地位にあるガゼル様に、子守りをする時間なんてない。
デゼルはなるべく子守りを侍女任せにはしたくないみたいだから、僕を選んでよかったよねって、僕が誰より、デゼルを幸せにしてあげられてるよねって、よわよわなデゼルをエトランジュと一緒に看病してあげながら、僕、にこにこしてしまって。
デゼルには僕がいる。僕じゃないと駄目。
そういうのって、とっても嬉しい。
「そこの美しいお嬢さん、お名前を聞かせて頂けませんか?」
僕の肩にもたれたデゼルの優しい心地好さを、目を瞑って感じていたから。
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間近に見ると、ますます綺麗だけど――
「あ」
声をあげたのは、僕じゃない。
何かに気がついた様子のデゼル。
「神様?」
吟遊詩人が吹き出した。
「私が神様に見えますか? そこまで褒めて頂けたのは初めてです。それも、あなたのような美しい方からとは、とても光栄ですよ」
うーん、僕は確かに、彼を神様みたいな歌声と美貌だと思ったんだけど。
デゼルの口調は、あんまり、彼に感嘆してる感じじゃないんだよね。
「ごめんなさい、人違いだったみたいです」
「……え?」
やっぱり。
それに、デゼルはあまり、旅先では名乗りたがらない。
悪名高い伝説の魔女だなんて、知られても、いいことはないから。
「サイファ様、そろそろ、行きましょう」
「彼はいいの? デゼル」
「うん、人違いだったの。エリス様のことを知っている方と間違えたの」
それって誰のことだろう。
少し考えて、察した僕はつい、吹き出しちゃった。
だって、デゼルはきっと、本物の神様と間違えたんだ。
「うん、行こうか」
デゼルにそう答えた後、僕は吟遊詩人に一礼して挨拶した。
「すみません、先を急ぐ旅の途中なので失礼します。心憩う、妙なる調べに乗せた、優しい歌をありがとう」
だって、とっても綺麗な人だし。
彼の歌を聞きたがったのはデゼルなのに、デゼルは彼の歌、もっと言えば、彼の歌を聴くことでもらえる恋人たちへの祝福にしか、興味がなかったみたい。
なんだか、ちょっと、見ていて申し訳ない気持ちになったから。
吟遊詩人の姿が見えなくなる頃、デゼルが僕に聞いてきた。
「サイファ様、さっき、どうして笑ったの?」
「だって、デゼル、あんなに素敵な人に声をかけられて、少しはときめいたりしないの?」
「……? サイファ様にときめいてる時に?」
デゼルが真顔で言うから、また、吹き出しそうになっちゃった。
可愛い。
結婚して七年も経つのに、まだ、僕にときめいてくれるんだ。
「デゼルって、なんで、そんなに僕がいいのかな。――でも、ありがとう」
「???」
きょとんとしたデゼルにキスして、耳元にそっと囁いた。
今度のおやすみの日には、丁寧に、可愛がってあげるねって。
わたわたして頬を紅潮させるデゼルが可愛らしくて、とっても、その日が待ち遠しかった。
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