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第四章 叶わない願いはないと信じてる
第106話 決戦! 魔皇の宮殿【前編】
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それから十日ほどかかって、僕達は残りの魔物をすべて、人の姿に戻してあげられた。
ケイナ様達が手伝ってくれたのはもちろん、利き腕を失った僕を気遣って、光の使徒が二人、僕達についてくれたんだ。
おかげで、片腕でもなんとか無事に、すべての仕事を終えられた。
だけど、隻腕になってから、気になってること――
夜、エトランジュを寝かしつけて明かりを落とすと、デゼルが声を殺して泣くことがあるんだ。
サイファ、サイファ、好きになってごめんなさい、私の悲劇に巻き込んでごめんなさいって、僕に泣いて謝るんだ。
「僕がデゼルにプロポーズしたのに、どうして謝るの? ずっと、デゼルのことが大好きだよ」
デゼルは僕に従っただけ。
僕は後悔してない。
邪神を祓うのに腕一本なら、安い代償だって思うもの。
両腕で抱き締めてあげたかったけど、できないから。
せめて左腕で、そんなデゼルを優しく抱き締めて、目を伏せた。
僕、別に不幸じゃないんだけどな。
何か、思い詰めた様子のデゼルが心配なんだ。
できなくなってしまったことは多いけど、闇主としての魔力も、神の武具も取り上げられなかったから、できることだって、僕にはまだ、たくさんある。
デゼルが泣くことなんて、何にもないのに――
**――*――**
「誘惑!」
容姿端麗の魔法で、夢みたいに綺麗になったデゼルの誘惑は凶悪だった。
僕、デゼルが容姿端麗の魔法を使うのは大好き。
だって、僕のデゼルが綺麗なのって、ときめいて嬉しくなって、心が弾むんだ。
「よもや、トランスサタニアン帝国の皇宮にこれほど平和に乗り込めようとは……」
最年長の光の使徒、金華様がなかばあきれた様子で言いながら、誘惑されて抵抗しない闇の使徒や、その直属の部下を縛っていく。
エリス様を祓ってからは、ケイナ様も光の使徒も、僕達に酷いことはもうしなかった。デゼルが惨殺される運命は、きっと、エリス様を祓った日に霧消したんだ。
面白いくらい次々と、ネプチューン様の配下はみんな、デゼルの誘惑にかかってくれた。
おかげで、僕達は犠牲者を出さずに玉座の間まで到達できたんだ。
闇の使徒も、衛兵も、近衛もみんな。
「フルポテンシャルを解除します。さらに、戦術【Lv10】――容姿端麗を【Lv1】にリセットします」
玉座の間に乗り込む前に、デゼルがどうしてか、能力や魅力を上げる魔法を解除した。
玉座の間には今、ネプチューンとユリシーズ、それにジャイロとルーカスがいるはず。ユリシーズとジャイロには話を通してあるから、戦闘にはならないはず。
ユリシーズはもちろん、渋ったらしいけど。
ルーカスの命には代えられないから、ユリシーズとルーカス、ジャイロの助命を条件に、僕達についてもらったんだ。
ユリシーズ達は、ネプチューン様を真正面から裏切ったりはしないよ。
玉座の間の隅で、怖くて震えるルーカスを抱いたユリシーズを、仁王立ちしたジャイロが守るっていう自然な構図で、お互いに手出しはしない約束なんだ。
「京奈、準備はいい?」
「……私、やってみせるわ」
うん、頑張って。
ケイナ様が玉座の間の扉を開け放つと、玉座に悠然と腰かけていたネプチューン様が立ち上がり、ケイナ様を称賛した。
「よく、ここまで辿り着いたな。さすがだと褒めておこう、聖女ケイナ」
玉座の間に飛び込んで行くデゼルとケイナ様、十人の光の使徒を見送って、僕はため息を吐いた。
決戦に臨むのは錚々たる顔ぶれで、僕は参加させてもらえなかったんだ。
ケイナ様に物凄くズバっと「あなた足手まといなのよ。デゼルの攻略ってあなたを狙えば楽勝なのよ?」って、言われてしまって。
ここまで案内させてもらうのも、護衛に光の使徒を二人、僕につけてもらうことが条件だったくらい。
だけど、ケイナ様はもちろん意地悪で言ってるわけじゃないんだ。
仕方がないよね。
僕が光の使徒の誰にも敵わないのは事実で、ジャイロだって、玉座の間にいるだけで、参戦するわけじゃない。
陛下と光の使徒の強さは桁違いだから。
もっとも、ここまで辿り着いたのはデゼルが活躍したからで、ケイナ様も光の使徒も、まだ、ほとんど何もしてない。
だから、陛下がケイナ様を称賛するのを聞いたら、なんだかおかしくて、ニヤニヤしちゃった。僕、参加してなくてよかった。たぶん、僕の顔なんて、今は誰も見てないから。
ケイナ様が頑張るのはこれからだよ。
ケイナ様達が手伝ってくれたのはもちろん、利き腕を失った僕を気遣って、光の使徒が二人、僕達についてくれたんだ。
おかげで、片腕でもなんとか無事に、すべての仕事を終えられた。
だけど、隻腕になってから、気になってること――
夜、エトランジュを寝かしつけて明かりを落とすと、デゼルが声を殺して泣くことがあるんだ。
サイファ、サイファ、好きになってごめんなさい、私の悲劇に巻き込んでごめんなさいって、僕に泣いて謝るんだ。
「僕がデゼルにプロポーズしたのに、どうして謝るの? ずっと、デゼルのことが大好きだよ」
デゼルは僕に従っただけ。
僕は後悔してない。
邪神を祓うのに腕一本なら、安い代償だって思うもの。
両腕で抱き締めてあげたかったけど、できないから。
せめて左腕で、そんなデゼルを優しく抱き締めて、目を伏せた。
僕、別に不幸じゃないんだけどな。
何か、思い詰めた様子のデゼルが心配なんだ。
できなくなってしまったことは多いけど、闇主としての魔力も、神の武具も取り上げられなかったから、できることだって、僕にはまだ、たくさんある。
デゼルが泣くことなんて、何にもないのに――
**――*――**
「誘惑!」
容姿端麗の魔法で、夢みたいに綺麗になったデゼルの誘惑は凶悪だった。
僕、デゼルが容姿端麗の魔法を使うのは大好き。
だって、僕のデゼルが綺麗なのって、ときめいて嬉しくなって、心が弾むんだ。
「よもや、トランスサタニアン帝国の皇宮にこれほど平和に乗り込めようとは……」
最年長の光の使徒、金華様がなかばあきれた様子で言いながら、誘惑されて抵抗しない闇の使徒や、その直属の部下を縛っていく。
エリス様を祓ってからは、ケイナ様も光の使徒も、僕達に酷いことはもうしなかった。デゼルが惨殺される運命は、きっと、エリス様を祓った日に霧消したんだ。
面白いくらい次々と、ネプチューン様の配下はみんな、デゼルの誘惑にかかってくれた。
おかげで、僕達は犠牲者を出さずに玉座の間まで到達できたんだ。
闇の使徒も、衛兵も、近衛もみんな。
「フルポテンシャルを解除します。さらに、戦術【Lv10】――容姿端麗を【Lv1】にリセットします」
玉座の間に乗り込む前に、デゼルがどうしてか、能力や魅力を上げる魔法を解除した。
玉座の間には今、ネプチューンとユリシーズ、それにジャイロとルーカスがいるはず。ユリシーズとジャイロには話を通してあるから、戦闘にはならないはず。
ユリシーズはもちろん、渋ったらしいけど。
ルーカスの命には代えられないから、ユリシーズとルーカス、ジャイロの助命を条件に、僕達についてもらったんだ。
ユリシーズ達は、ネプチューン様を真正面から裏切ったりはしないよ。
玉座の間の隅で、怖くて震えるルーカスを抱いたユリシーズを、仁王立ちしたジャイロが守るっていう自然な構図で、お互いに手出しはしない約束なんだ。
「京奈、準備はいい?」
「……私、やってみせるわ」
うん、頑張って。
ケイナ様が玉座の間の扉を開け放つと、玉座に悠然と腰かけていたネプチューン様が立ち上がり、ケイナ様を称賛した。
「よく、ここまで辿り着いたな。さすがだと褒めておこう、聖女ケイナ」
玉座の間に飛び込んで行くデゼルとケイナ様、十人の光の使徒を見送って、僕はため息を吐いた。
決戦に臨むのは錚々たる顔ぶれで、僕は参加させてもらえなかったんだ。
ケイナ様に物凄くズバっと「あなた足手まといなのよ。デゼルの攻略ってあなたを狙えば楽勝なのよ?」って、言われてしまって。
ここまで案内させてもらうのも、護衛に光の使徒を二人、僕につけてもらうことが条件だったくらい。
だけど、ケイナ様はもちろん意地悪で言ってるわけじゃないんだ。
仕方がないよね。
僕が光の使徒の誰にも敵わないのは事実で、ジャイロだって、玉座の間にいるだけで、参戦するわけじゃない。
陛下と光の使徒の強さは桁違いだから。
もっとも、ここまで辿り着いたのはデゼルが活躍したからで、ケイナ様も光の使徒も、まだ、ほとんど何もしてない。
だから、陛下がケイナ様を称賛するのを聞いたら、なんだかおかしくて、ニヤニヤしちゃった。僕、参加してなくてよかった。たぶん、僕の顔なんて、今は誰も見てないから。
ケイナ様が頑張るのはこれからだよ。
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