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第四章 叶わない願いはないと信じてる

第106話 決戦! 魔皇の宮殿【後編】

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「ネプチューン、会いたかったわ」
「ほう?」

 ケイナ様は生まれる前から、ずっと、陛下に会いたかったんだって。
 女の人の情熱ってすごい。
 だって僕は、ケイナ様との決戦で死ぬかもしれないと思った時にも、生まれ変わった後のことなんて、何ひとつ考えたりしなかったんだ。
 今、デゼルを支えてあげなくちゃって、僕のために泣いてくれるデゼルにせめて、愛してるって伝えてあげなくちゃって、それしか、考えられなかった。

「光の使徒様、ネプチューンを抑えて! デゼル、お願い!」
「ふ、いよいよ本格的に裏切ったというわけか、デゼル!」

 散開した光の使徒が一斉にネプチューン様を抑えにかかるけど、陛下はさすがに強くて、簡単には取り押さえられなかった。
 だけど、多勢に無勢だから。

忘却レーテー【Lv4】――ターゲット・ネプチューン。京奈の記憶をすべて抹消します!」
「なにっ!? デゼル、きさ――」

 ネプチューン様はしきりにデゼルを攻撃しようとしてたけど、光の使徒が次々とデゼルを庇いに入って、陛下の攻撃はついに、デゼルには一度も届かなかったんだ。

「京奈、今よ!」

 うなずいたケイナ様が、高らかに声を張り上げた。

「ネプチューン、もうやめて! 私の話を聞いて!」

 ケイナ様の記憶を消された陛下は、ケイナ様を見て、ひどく驚いた様子になった。
 たぶん、亡くなったはずのユリア様にそっくりだから。

容姿端麗アフロディーテ【Lv10】――ターゲット・ネプチューン。私はあなたのユリア。あなただけのユリア」

 わ、ケイナ様も容姿端麗アフロディーテの魔法を使えるんだ。
 容姿端麗アフロディーテの魔法の【Lv10】って、すごいんだよ。
 僕、デゼルにかけてもらったことがあって。
 そうでなくても綺麗なデゼルが、誰よりも綺麗に見えるんだ。
 そんなデゼルが僕のものって、じたばたしたくなるくらい嬉しくて、すごく楽しくて、たまらなく幸せな気持ちになった。

 だけど、どうしてここで?

 ネプチューン様がはっと、ケイナ様の女神もかくやな美しさに気がついたような表情になって、大きく、目を見開いた。


 ――そうか!

 僕、作戦名だけデゼルに教えてもらって知っていたんだけど。
 『二人は出会った途端、恋に落ち、もう二度と運命に引き裂かれることはない』作戦の意味が、僕、わかったよ!

 戦闘の真っ最中だろうがお構いなしで、ここで運命の恋に落ちてしまうんだね。
 すごいな。
 仇敵同士とか、陛下の罪状とか、二人の運命の恋の前には何でもないことなんだ。
 
「私は聖サファイア共和国の光の聖女ケイナ。――あなたのユリアよ」
「なに……」

 ネプチューン様がチラッとユリシーズに視線を走らせた。
 そう、どうするつもりなの?
 いくら運命の恋でも、陛下、お妃様もお子様も、もういらっしゃるのに。

「ネプチューン、もう、ユリアを復活させる必要はないの。もう、罪を重ねる必要はないの。だって、あなたのユリアはここにいるもの! あなたともう一度出会うために、生まれ変わった私がユリアよ!」
「まさか……」

 ネプチューン様がチラッとデゼルに視線を走らせた。
 本当か? って、聞きたいのかな。

 それにしても、ケイナ様の迫力がすごい。
 なんだか、ケイナ様の後ろに大輪の薔薇の花が咲き乱れて見えるんだ。

「会いたかった、愛しているわ、ネプチューン。ユリアだった前世の私も、そして、京奈として生まれ変わった今の私も、あなたを世界中の誰よりも愛しているわ!」
「……ユリア! もう二度と離さない!!」

 えぇッ!!
 すごいな、ネプチューン様。
 ケイナ様こそはユリア様の生まれ変わりだって、たちまち確信されたんだ。
 もう二度と離さない覚悟を、こんなにすぐに決められるなんて。
 僕って、ガゼル様やネプチューン様に比べたら、何かを確信したり、何かの覚悟を決めたりするのに、ずいぶん、時間がかかるみたい。


 そんなことを考えていたら、ふいに、中空を見詰めたデゼルが満面の笑顔になって、両のこぶしを控えめに握り締めたんだ。
 たぶん、ガッツポーズかな?

 うまくいったんだね。
 誰も死んだり、怪我したりしなくてよかった。
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