悪役令嬢と十三霊の神々

冴條玲

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第一章 悪役令嬢はナイトメアモードを選ぶ

第5話 学校は怖いけど

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 サイファにデゼルの家庭教師になってもらって、十日ほどが過ぎたけど、聖女の杖を探しに行ってくれた人達は、まだ、帰ってきていない。
 他国の辺境を三ヶ所も回らないとならないから、仕方がないの。

「――ねぇ、デゼルは学校には行かないの?」

 私はふわっと微笑んだ。

「うん、行かない。サイファ様の教え方がわかりやすいから、行かなくていい」

 ほんとうよ。

「でも――」

 サイファが少し視線を下げて、それから、私をじっと見た。

「デゼルなら友達もたくさんできると思うし、これだけできたら、デゼル、一番になれると思うよ。もったいなくない?」
「ふふ、もったいなくない」

 もう一度、私がやわらかく微笑んで、頬杖をついてサイファを眺めたら、サイファが少し驚いた顔をして、デゼルには敵わないなって、微笑み返してくれたの。
 サイファが微笑むと、もう、うっとりする優しさなのよ。
 そんな笑顔を見る度に、私、心から思うの。サイファのことが大好きだって。

 学校にはね、行きたくないの。
 現世でも、死ぬほど行きたくなかったけど、そんなことは許してもらえなかったから、行ったよ。
 つらかった。
 試験で一番なんて、いつもだったから、もういいよ。
 一番になったって、何のいいこともなかったもの。
 どうして全教科満点とれないんだって、叱られるだけ。

 デゼルはいいなぁ。
 学校なんて行かなくても叱られないし、きっと、一番になったら褒めてもらえるのかもしれないね。
 それでも、行かないよ。
 試験より、友達が怖…………

 あれ?

「サイファ様、お怪我は、どうして……?」

 サイファはよく、怪我をしているの。
 あんまり、やんちゃなイメージじゃないから不思議だったけど。

 サイファは、帝国が攻めてくることを教えてさえ、逃げないで闘おうって言ったもの。
 そういう人は――

「……なんでもないよ、生活の授業とか……」

 ふっと、サイファが目を逸らした。
 たぶん、本当のこと、言えないのね。

 この世界の小学校は、国語と算数と生活だけで、時間も平日の午前中だけ。
 生活の実技は、森や野原で食べられる草や木の実を探したり、釣りをしたりして、その場で料理して食べたりするの。
 だから、私なんて本当によく怪我をするけど。

「やっぱり、デゼルも学校に行こうかな。――サイファ様と同じクラスに編入できたら、行きたい」

 サイファが息をのんで私を見た。
 三年、飛び級するつもりだってことに驚いたのかもしれないけど。
 それとも、私がサイファと同じ、庶民向けの小学校に行くつもりなことかな。

 でも、きっと――

「そんな、四年生の生活の実技とか、デゼルにはまだ無理だよ」
「背が届かなかったら、サイファ様が助けて下さいね」

 やっぱり――
 真っ青になったサイファの恐怖が、痛いくらい伝わってきたから。

「サイファ様のいないクラスには通いたくないの。デゼルができない、生活の実技をなるべく教えて下さい。来週、編入試験を受けてみますね」
「来週って!」
「サイファ様、今から教えて下さい」

 言って、サイファの手を取った。
 こっそり、闇魔法をかけて、サイファの気持ちを落ち着かせるために。
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