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第一章 悪役令嬢はナイトメアモードを選ぶ
第29話 悪役令嬢は魔法少女作戦で闇主覚醒を目指す
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「あるこ~♪ あるこ~♪ 私は元気~♪」
翌日、私が元気いっぱいに歌いながらサイファと一緒に湖畔を歩いていたら、サイファが楽しそうに笑ってくれた。
「ほんとに元気だね、デゼル。そこは真っ直ぐ」
「サイファ様、湖が綺麗だよっ」
「うん。でも、落ちないでね?」
落ちないでって言われたから、サイファの手をきゅっと握ったら、サイファも握り返してくれたの。
サイファに地図を読んでもらって、時の神殿を目指しているところよ。
サイファはすごいの。まだ十歳なのに、きちんと地図が読めるの。
サイファね。
夏休みの間は、あんまり、家に帰らなくても大丈夫なんだって。
私は喜んで、昨日も一緒に寝てもらったから、とってもご機嫌なの。
クレイに着替えや夏休みの宿題も持ってきてもらったみたいで、ずっと、一緒にいられるんだよ。
すっごく、嬉しい。
「ねぇ、デゼル」
「あうお~?」
歌ってる途中だったから、へんなお返事になっちゃった。
「デゼルは、その……公子様を断った意味、わかってるよね? クライス様と話してる時、すごかったし。クライス様みたいな立派な大人とあれだけ話せるデゼルが、子供だからわかってないとは、僕、思えなくて」
「……うん。でも、いろんなこと、サイファ様はこれから知って、いつか、デゼルの闇主になったことを、後悔するかもしれないの」
「――デゼルが頑張れないと、公国が滅ぶんだよね? じゃあ、僕は後悔することすらできない予定だ」
うわぁ。
サイファって驚くほど明晰で、潔いの。
考え方がすごく素直で、透き通る空のよう。
私、サイファのとなりにいると、とても気持ちがラクになるの。
「デゼルは、好きな気持ちは変わらないと思う?」
「――わからない。でも、デゼルは今、サイファ様がデゼルを好きでいてくれるなら、傍にいたい。サイファ様がデゼルを好きでいてくれる気持ちが、変わるものだとしても、変わらないものだとしても」
あれ。
どうして、涙が零れたのかな。
「どうしたの? デゼル」
「いつか、サイファ様がデゼルを好きじゃなくなったら、かなしい……」
「僕、デゼルを好きじゃなかったことないよ。これからも、デゼルを好きじゃなくなるなんて、想像もつかない。泣かせてごめんね。母さんに、気持ちは変わるものだって言われて――」
私、知ってる。みんな、変わったの。
だから、『今』だけが確かなの。
私は今、サイファが好き。
私が今のサイファを好きなのは、ずっと、変わらない。
「でも、デゼルは強いね。デゼルの答えを聞いて、もやもやしてた気持ちがスッキリした。僕も、デゼルの気持ちが変わるとしても、変わらないとしても、デゼルが僕を必要としてくれる限り、僕のすべてで、デゼルを傍で守るよ」
吹っ切れた顔で、サイファが笑ってくれた。
「大切なことって、かんたんで美しいんだね」
私もぐしぐし涙を拭って、笑ったの。
「うんっ!」
サイファってほんとにすごい。
十歳でもう賢者のように悟れてしまうのね。
時の神殿まで、馬車から降りた後、子供の足で歩くのは大変だったけど。
==============================
闇巫女デゼルに時空の神クロノスからの祝福が与えられました。
神の祝福により、知力と回避力が一段階上昇し、時空【Lv1】が付与されました。
【時の神殿】の精霊と契約しました。
==============================
時空の神の祝福は、神殿で祈り求めれば頂けるって、完全攻略ガイドに書いてあったの。
湖のほとりに佇む白亜の神殿。
中央には美しい噴水があって、十二の時を刻んでいた。
「夜になっちゃったね」
「大丈夫だよ、こうして、手をつないでね」
自動車も飛行機もないこの世界では、野宿も珍しいことじゃなくて、生活の授業で習うくらいよ。
サイファはたぶん、時の神殿で夜を明かすつもりなのね。
夏だから寒くはないけど、私、お腹が空いたし、お風呂にも入りたい。
「サイファ様、星空が綺麗だよ」
「ほんとだ、天の川がくっきり見える」
私はサイファににっこり微笑みかけると、覚えたばかりのスキルを使った。
「時空【Lv1】」
身体が宙に浮くような、急降下していくような、不思議な感覚の後。
私達は神殿の、私の寝室に戻ったの。
ホームへの帰還が時空【Lv1】。
時の精霊を探して契約すれば、時空【Lv2】で、契約した精霊のいる場所に空間跳躍できるようになるの。
空間跳躍も半端なく便利だけど、私が今、手に入れたいのは時空【Lv6】。
一時的に大人になったり、子供になったりできるスキルよ。
魔法少女ものの定番ね。
今、私は3SPしか持っていないから、いずれかの神の承認を得ないといけない。
承認条件がわかっていて、比較的、承認を得やすいのも同じ時空の神。
クロノスの承認条件は十二ヵ所の時の精霊を探し出して契約すること。
時の精霊の居場所は完全攻略ガイドで調べられるから、叡智【Lv10】なら難しくないの。
私、迷ってる。
サイファを悪役令嬢の悲劇に巻き込むなら、少しでも、サイファの危険を減らすために、サイファを闇主として覚醒させたい。
だけど、まだ十歳のサイファを闇主にしてしまっていいのかな。
サイファは、後悔しないのかな。
翌日、私が元気いっぱいに歌いながらサイファと一緒に湖畔を歩いていたら、サイファが楽しそうに笑ってくれた。
「ほんとに元気だね、デゼル。そこは真っ直ぐ」
「サイファ様、湖が綺麗だよっ」
「うん。でも、落ちないでね?」
落ちないでって言われたから、サイファの手をきゅっと握ったら、サイファも握り返してくれたの。
サイファに地図を読んでもらって、時の神殿を目指しているところよ。
サイファはすごいの。まだ十歳なのに、きちんと地図が読めるの。
サイファね。
夏休みの間は、あんまり、家に帰らなくても大丈夫なんだって。
私は喜んで、昨日も一緒に寝てもらったから、とってもご機嫌なの。
クレイに着替えや夏休みの宿題も持ってきてもらったみたいで、ずっと、一緒にいられるんだよ。
すっごく、嬉しい。
「ねぇ、デゼル」
「あうお~?」
歌ってる途中だったから、へんなお返事になっちゃった。
「デゼルは、その……公子様を断った意味、わかってるよね? クライス様と話してる時、すごかったし。クライス様みたいな立派な大人とあれだけ話せるデゼルが、子供だからわかってないとは、僕、思えなくて」
「……うん。でも、いろんなこと、サイファ様はこれから知って、いつか、デゼルの闇主になったことを、後悔するかもしれないの」
「――デゼルが頑張れないと、公国が滅ぶんだよね? じゃあ、僕は後悔することすらできない予定だ」
うわぁ。
サイファって驚くほど明晰で、潔いの。
考え方がすごく素直で、透き通る空のよう。
私、サイファのとなりにいると、とても気持ちがラクになるの。
「デゼルは、好きな気持ちは変わらないと思う?」
「――わからない。でも、デゼルは今、サイファ様がデゼルを好きでいてくれるなら、傍にいたい。サイファ様がデゼルを好きでいてくれる気持ちが、変わるものだとしても、変わらないものだとしても」
あれ。
どうして、涙が零れたのかな。
「どうしたの? デゼル」
「いつか、サイファ様がデゼルを好きじゃなくなったら、かなしい……」
「僕、デゼルを好きじゃなかったことないよ。これからも、デゼルを好きじゃなくなるなんて、想像もつかない。泣かせてごめんね。母さんに、気持ちは変わるものだって言われて――」
私、知ってる。みんな、変わったの。
だから、『今』だけが確かなの。
私は今、サイファが好き。
私が今のサイファを好きなのは、ずっと、変わらない。
「でも、デゼルは強いね。デゼルの答えを聞いて、もやもやしてた気持ちがスッキリした。僕も、デゼルの気持ちが変わるとしても、変わらないとしても、デゼルが僕を必要としてくれる限り、僕のすべてで、デゼルを傍で守るよ」
吹っ切れた顔で、サイファが笑ってくれた。
「大切なことって、かんたんで美しいんだね」
私もぐしぐし涙を拭って、笑ったの。
「うんっ!」
サイファってほんとにすごい。
十歳でもう賢者のように悟れてしまうのね。
時の神殿まで、馬車から降りた後、子供の足で歩くのは大変だったけど。
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闇巫女デゼルに時空の神クロノスからの祝福が与えられました。
神の祝福により、知力と回避力が一段階上昇し、時空【Lv1】が付与されました。
【時の神殿】の精霊と契約しました。
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時空の神の祝福は、神殿で祈り求めれば頂けるって、完全攻略ガイドに書いてあったの。
湖のほとりに佇む白亜の神殿。
中央には美しい噴水があって、十二の時を刻んでいた。
「夜になっちゃったね」
「大丈夫だよ、こうして、手をつないでね」
自動車も飛行機もないこの世界では、野宿も珍しいことじゃなくて、生活の授業で習うくらいよ。
サイファはたぶん、時の神殿で夜を明かすつもりなのね。
夏だから寒くはないけど、私、お腹が空いたし、お風呂にも入りたい。
「サイファ様、星空が綺麗だよ」
「ほんとだ、天の川がくっきり見える」
私はサイファににっこり微笑みかけると、覚えたばかりのスキルを使った。
「時空【Lv1】」
身体が宙に浮くような、急降下していくような、不思議な感覚の後。
私達は神殿の、私の寝室に戻ったの。
ホームへの帰還が時空【Lv1】。
時の精霊を探して契約すれば、時空【Lv2】で、契約した精霊のいる場所に空間跳躍できるようになるの。
空間跳躍も半端なく便利だけど、私が今、手に入れたいのは時空【Lv6】。
一時的に大人になったり、子供になったりできるスキルよ。
魔法少女ものの定番ね。
今、私は3SPしか持っていないから、いずれかの神の承認を得ないといけない。
承認条件がわかっていて、比較的、承認を得やすいのも同じ時空の神。
クロノスの承認条件は十二ヵ所の時の精霊を探し出して契約すること。
時の精霊の居場所は完全攻略ガイドで調べられるから、叡智【Lv10】なら難しくないの。
私、迷ってる。
サイファを悪役令嬢の悲劇に巻き込むなら、少しでも、サイファの危険を減らすために、サイファを闇主として覚醒させたい。
だけど、まだ十歳のサイファを闇主にしてしまっていいのかな。
サイファは、後悔しないのかな。
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