95 / 177
第二章 魔神ルシフェル ≪永遠のロマンス≫
第59話 町人Sは女神エリスにお帰りを願う
しおりを挟む
「デ…ゼルを……」
声も身体も震えて、涙がとめどなく頬を流れ落ちた。
「デゼル、やめて」
サイファが立ち上がれずにいた私を、高い高いしてあやすみたいに抱き上げて、驚かせた後、真っ直ぐに私の瞳を見詰めたの。
【絵】カゴ様 【背景】瑠于様
「災禍の神に服従するデゼルなんて、僕は見たくない。僕はデゼルに生きていて欲しいし、僕も生きていたい。だけど、僕が傍にいてもデゼルの救いになれないのなら、僕が傍にいてもデゼルが死にたいのなら、そうして、いいんだよ。だから、泣かないで。僕は、デゼルの闇主のままでいい。解放して欲しいなんて、僕は、思っていないんだ」
「サイファ…様……」
「ねぇ、デゼルは誰に従うの? 僕? 女神エリス?」
「……デゼルは……サイファ様に……従います……」
「ありがとう。じゃあ、エリス様にはお帰り頂こうね?」
サイファがそう言って、まるで、「かえっちゃやだ」って泣くティニーをなだめる時みたいな優しさで笑ったの。
ガタガタ震える私を、ぎゅっと、抱き締めてくれたの。
何にも怖くないんだよって、私の耳元に囁いてくれながら。
「お帰り下さい、女神エリス」
「……あら、本当に、解放されなくていいのかしら? デゼルは孕まされているわよ? 闇主たちの汚らわしいものを、ごくごく飲まされて、一糸まとわぬ姿で絡み合って、まさぐられて、なめまわされたのよ? 何十人もの闇主たちと、何度も、何度も、交わったの。とっても、甘い声で啼き続けてた」
私がまた、身体をガタガタ震わせると、サイファもまた、私をぎゅっと抱き締めてくれた。
どうして……?
サイファはどうして、それでもまだ、私を宝物みたいに抱き締めてくれるの……?
サイファの胸が優しいの。私を忌み嫌っていないの。
「デゼル、本当にいいのかしら? このあたしが呪いをかけてあげたから、死ぬまで終わらない。眠る度に夢を見る、マワされて気持ちよかった夢を。とても、素敵な呪いよね? あなたの命、あと何日、もつかしら。あたしを追い返せば災禍も戻る。サイファの腕の中では死ねないわよ?」
「…っ……」
「デゼル、僕はもう、デゼルを一人にしない。僕のために犠牲になるのはもうやめて。何があっても、最後まで一緒にいよう? デゼルが望むなら、僕の腕の中で死ねるよ。大丈夫、僕は、デゼルの傍にいるから」
「サイファ…様……」
「――お帰り下さい、女神エリス」
「チッ」
舌打ちしたエリス様の青い瞳が、邪悪な燐光を帯びたの。
==============================
SPを1消費し、災禍【Lv2】になりました。二人の他人を犠牲に自分を助けます。
SPを1消費し、災禍【Lv3】になりました。三人の他人を犠牲にあらゆる傷病を癒します。
SPを1消費し、災禍【Lv4】になりました。四人の他人を犠牲にあらゆる魔法と神与の一般スキルを跳ね返す衣を四時間まといます。
==============================
「約束が違う! 逃げて、サイファ様!」
違う、サイファを逃がすより、私が空間跳躍した方がはやい!
「時空【Lv2】――目標、スノウフェザー」
「デゼル!」
いつかみたいに目標が変更されることはなく、私の空間跳躍は成功したの。
だけど、エリス様も追ってきていて、すぐ目の前にいたの。
「後悔させてあげるわよ、デゼル。まずは、もう一度、災禍の首飾りをかけてあげましょうね? 今度は、十日で許してあげたりしない。グノースより、もっと、悲惨な場所を探してあげるわ。死ぬまで、悪い男達にマワされ続けなさいよ。それでサイファも死ぬわね。さっき、あたしにちゃあんと、サイファを闇主から解放して下さいって、お願いすればよかったわねぇ?」
「やめて! お願い、もうやめて!」
「おしおきよ、デゼル? あなたはもう、悪い男達にマワされるだけ。サイファには二度と、死ぬまで会わせてあげない。マワされるのは好きでしょ? あなたが生きている間は、サイファも生きていられる。サイファのために、好きなだけ我慢して、悪い男達を悦ばせていいわよ?」
「いや、やめて、助けて! サイファ、サイファ――!!」
エリス様が冷酷に笑いながら、私にかけようとした災禍の首飾りが、その前に、聖なる光にのまれて消滅したの。
声も身体も震えて、涙がとめどなく頬を流れ落ちた。
「デゼル、やめて」
サイファが立ち上がれずにいた私を、高い高いしてあやすみたいに抱き上げて、驚かせた後、真っ直ぐに私の瞳を見詰めたの。
【絵】カゴ様 【背景】瑠于様
「災禍の神に服従するデゼルなんて、僕は見たくない。僕はデゼルに生きていて欲しいし、僕も生きていたい。だけど、僕が傍にいてもデゼルの救いになれないのなら、僕が傍にいてもデゼルが死にたいのなら、そうして、いいんだよ。だから、泣かないで。僕は、デゼルの闇主のままでいい。解放して欲しいなんて、僕は、思っていないんだ」
「サイファ…様……」
「ねぇ、デゼルは誰に従うの? 僕? 女神エリス?」
「……デゼルは……サイファ様に……従います……」
「ありがとう。じゃあ、エリス様にはお帰り頂こうね?」
サイファがそう言って、まるで、「かえっちゃやだ」って泣くティニーをなだめる時みたいな優しさで笑ったの。
ガタガタ震える私を、ぎゅっと、抱き締めてくれたの。
何にも怖くないんだよって、私の耳元に囁いてくれながら。
「お帰り下さい、女神エリス」
「……あら、本当に、解放されなくていいのかしら? デゼルは孕まされているわよ? 闇主たちの汚らわしいものを、ごくごく飲まされて、一糸まとわぬ姿で絡み合って、まさぐられて、なめまわされたのよ? 何十人もの闇主たちと、何度も、何度も、交わったの。とっても、甘い声で啼き続けてた」
私がまた、身体をガタガタ震わせると、サイファもまた、私をぎゅっと抱き締めてくれた。
どうして……?
サイファはどうして、それでもまだ、私を宝物みたいに抱き締めてくれるの……?
サイファの胸が優しいの。私を忌み嫌っていないの。
「デゼル、本当にいいのかしら? このあたしが呪いをかけてあげたから、死ぬまで終わらない。眠る度に夢を見る、マワされて気持ちよかった夢を。とても、素敵な呪いよね? あなたの命、あと何日、もつかしら。あたしを追い返せば災禍も戻る。サイファの腕の中では死ねないわよ?」
「…っ……」
「デゼル、僕はもう、デゼルを一人にしない。僕のために犠牲になるのはもうやめて。何があっても、最後まで一緒にいよう? デゼルが望むなら、僕の腕の中で死ねるよ。大丈夫、僕は、デゼルの傍にいるから」
「サイファ…様……」
「――お帰り下さい、女神エリス」
「チッ」
舌打ちしたエリス様の青い瞳が、邪悪な燐光を帯びたの。
==============================
SPを1消費し、災禍【Lv2】になりました。二人の他人を犠牲に自分を助けます。
SPを1消費し、災禍【Lv3】になりました。三人の他人を犠牲にあらゆる傷病を癒します。
SPを1消費し、災禍【Lv4】になりました。四人の他人を犠牲にあらゆる魔法と神与の一般スキルを跳ね返す衣を四時間まといます。
==============================
「約束が違う! 逃げて、サイファ様!」
違う、サイファを逃がすより、私が空間跳躍した方がはやい!
「時空【Lv2】――目標、スノウフェザー」
「デゼル!」
いつかみたいに目標が変更されることはなく、私の空間跳躍は成功したの。
だけど、エリス様も追ってきていて、すぐ目の前にいたの。
「後悔させてあげるわよ、デゼル。まずは、もう一度、災禍の首飾りをかけてあげましょうね? 今度は、十日で許してあげたりしない。グノースより、もっと、悲惨な場所を探してあげるわ。死ぬまで、悪い男達にマワされ続けなさいよ。それでサイファも死ぬわね。さっき、あたしにちゃあんと、サイファを闇主から解放して下さいって、お願いすればよかったわねぇ?」
「やめて! お願い、もうやめて!」
「おしおきよ、デゼル? あなたはもう、悪い男達にマワされるだけ。サイファには二度と、死ぬまで会わせてあげない。マワされるのは好きでしょ? あなたが生きている間は、サイファも生きていられる。サイファのために、好きなだけ我慢して、悪い男達を悦ばせていいわよ?」
「いや、やめて、助けて! サイファ、サイファ――!!」
エリス様が冷酷に笑いながら、私にかけようとした災禍の首飾りが、その前に、聖なる光にのまれて消滅したの。
0
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
