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欠けてゆくもの
欠けてゆくもの4
しおりを挟むやはりあれから眠ることは出来ず、教室に一番最初に登校していた。
もしかしたら手紙でも靴箱に無いかな、なんて思った自分が嫌になる。
いい加減現実を見ないといけないのに。
私は、ただぼんやりと席に座っていた。
「おはよう」
実咲の声に私は上を向いた。
どうやら気がつくと寝てしまっていたようだった。
「寝不足?酷い顔だけど」
机の上に鞄を置きながら、振り返り私の顔を見る実咲に、苦笑いで答えた。
「うん、なんか眠れなかったんだよね」
「もしかして藤原先生となんかあったの?」
「えっ?」
「いや、だって昨日相談に行ったんでしょ?
あまり良い解決にならなかったの?」
少し心配そうな実咲に私は口ごもる。
どうしよう、本当の事なんて言えるわけが無い。
「あ、えっと、実は会えなくて。
それに本当に単なる寝不足なの。
心配かけてごめんね」
実咲は私をじっと見た後、そっか、また今度話せばいいね、と笑った。
きっと勘のいい実咲は、私の嘘に気がついているのかもしれない。
でも深く聞いてこない実咲の優しさが、今の私にはありがたかった。
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