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その後もおしゃべりを楽しんだ四人は、時計の針が午後六時半になったのを見て、ファミレスを出た。学校からの指導で、午後七時までには家に帰りなさいというのが徹底されていたからだ。
帰り道も、海斗と七海、美咲の三人は会話を弾ませていたが、リーダーに選ばれたプレッシャーと闘っていた拓海は、口数が重くなっていた。
しばらく歩いたところで、美咲が手を振り、三人とは違う道を曲がっていった。拓海と海斗、七海の三人は家も近かったが、美咲は、少し離れた場所に住んでいた。
美咲と別れた三人も、その後、七海、海斗、拓海の順に、家に着いた。
「遅かったのね」家の玄関で靴を脱いでいた拓海に向って、母親が顔をのぞかせた。
「海斗たちとしゃべっていたから」
基本的に、学校から帰る時間が夕方を過ぎる理由は、これしかなかった。
「もうすぐご飯できるから、着替えて、手を洗って、うがいをしてきなさい」
母親が口うるさく言ってくれるおかげで、外から帰った時の手洗いとうがいは、拓海の習慣になっていた。おかげで、ここ何年間か風邪を引いたことがない。
着替えと手洗い、うがいを済ませた拓海は、ダイニングキッチンへ移動した。食卓には、すでに父親と三歳上の姉の姿があった。父親は、枝豆をつまみにビールを飲んでおり、姉はリビングのテレビを見ていた。
「新しいクラスは、どんな感じだ?」グラスのビールを飲み干した父親が、拓海に聞いてきた。
「どんな感じとは?」拓海が聞き返す。
「雰囲気だとかさ。幼馴染の彼らとは、同じクラスになれたのか?」
「うん」
「まじ? それって、奇跡じゃない?」
テレビを見ていた姉が、拓海に視線を向けた。姉も、小学校三年の時以外は、海斗と七海と同じクラスであることを知っている。
「縁があるのよ、三人は」
天ぷらの盛られた皿を食卓に運んできた母親も、口をはさんだ。
「今日も、彼らとしゃべってきたんだよね?」
「七海の友達も入れた四人でね。この間お父さんからもらった小遣いで、ファミレスでご馳走しちゃった」
「えっ? ご飯、食べてきたの?」
「軽めにね。でも、もうお腹すいた」
「それなら、いいんだけど」
母親が、ほっとしたような表情を浮かべた。
晩御飯を終えた家族四人は、リビングに移動し、並んでソファーに座った。
拓海の家では、家族全員がそろう晩御飯のときは、食後にデザートを食べながら、みなでテレビを見る習慣があった。
今日のデザートは、母親がスーパーで買ってきたイチゴと父親が会社からもらってきたクッキーだった。いつもはデザートと一緒に緑茶が出てくるのだが、今日はクッキーがあるので、母親が紅茶を入れてくれた。
テレビには、高齢者の孤独死をテーマにしたドキュメンタリー番組が流れていた。画面の右上に、『本格的な高齢化社会を迎えた日本の現実』というタイトルが踊っている。
一人暮らしの老人が人知れず息を引き取り、死後時間が経ってから発見されるという悲しい現実が、次々と紹介されていた。
「うちのおじいちゃんやおばあちゃんのところも、いずれどちらかが先に死んで、残された方が一人になるのよね」姉が、しみじみとした口調で呟いた。父方、母方ともに祖父母は健在だが、高齢であり、どちらかが亡くなった場合、もう片方が一人で残される運命にある。
「田舎ってさ、隣近所がみーんな仲がいいから、孤独死みたいなことにはならないと思うけどねー」ビールでほろ酔い気分になった父親が、歌うように語る。
「こういうのって、都市部のほうが深刻みたいよね。お父さんが言うように、田舎は、隣近所が家族同然の付き合いをしているけど、都市部は、そういうのはないから、こういうことがよく起こるみたいよ」クッキーに手を伸ばした母親が、したり顔で口にした。
「都会に住む老人は、寂しいんだね」姉が、しみじみと言う。
「生活には便利かもしれないけどね」
「このあたりも、一人暮らしの老人って、けっこういるんでしょ?」
「いそうね」
「なんで、都会の老人って、閉鎖的なのかな?」
「田舎は、みんなのライフスタイルが似通っているから集団に溶け込みやすいんだろうけど、都会は、人それぞれだから、溶け込みづらいんじゃないの?」
「そんなの、老人同士で友達になっちゃえばいいんじゃないのかなって思っちゃうんだけど。みんなで集まってワイワイやっていれば、孤独を感じるみたいなことにはならないと思うんだけどな」
「誰もがさ、歳を取ってくると、人づきあいが億劫になってくるんだよ。足腰が弱ってくると、外出するのも面倒になるし、自分から何かをしようという気力も失せてくるんだよ」
母親と姉との会話に、父親が割り込んできた。
「でも、自分から行動を起こさなかったら、寂しさから解放されるなんてことはないと思うんだけど」姉が、納得のいかない表情を浮かべる。
「そう思わない?」姉が、拓海に同意を求めてきた。
「そうだね」拓海も、そのように感じていた。
「お前たちは若いから、行動しようと思ったらなんでもすっとできるんだろうけど、歳を取ってくると、なんていえばいいのかな、気力が落ちてくるからか、何でもかんでも即行動っていう風にはならないんだよ」
「ふーん」父親の言葉に、拓海も姉も、わかったようなわからないようなという顔をした。
「それにな、歳を取ると、自分のペースを乱されたくないっていう気持ちも強くなるから、お前たちみたいに、すぐに誰かと友達になるっていうわけにもいかないんだよ」
父親が言い放ったその言葉に、母親も、そうなのよねえと同調した。
拓海の胸に、歳を取ることに対するマイナスなイメージが広がっていった。
帰り道も、海斗と七海、美咲の三人は会話を弾ませていたが、リーダーに選ばれたプレッシャーと闘っていた拓海は、口数が重くなっていた。
しばらく歩いたところで、美咲が手を振り、三人とは違う道を曲がっていった。拓海と海斗、七海の三人は家も近かったが、美咲は、少し離れた場所に住んでいた。
美咲と別れた三人も、その後、七海、海斗、拓海の順に、家に着いた。
「遅かったのね」家の玄関で靴を脱いでいた拓海に向って、母親が顔をのぞかせた。
「海斗たちとしゃべっていたから」
基本的に、学校から帰る時間が夕方を過ぎる理由は、これしかなかった。
「もうすぐご飯できるから、着替えて、手を洗って、うがいをしてきなさい」
母親が口うるさく言ってくれるおかげで、外から帰った時の手洗いとうがいは、拓海の習慣になっていた。おかげで、ここ何年間か風邪を引いたことがない。
着替えと手洗い、うがいを済ませた拓海は、ダイニングキッチンへ移動した。食卓には、すでに父親と三歳上の姉の姿があった。父親は、枝豆をつまみにビールを飲んでおり、姉はリビングのテレビを見ていた。
「新しいクラスは、どんな感じだ?」グラスのビールを飲み干した父親が、拓海に聞いてきた。
「どんな感じとは?」拓海が聞き返す。
「雰囲気だとかさ。幼馴染の彼らとは、同じクラスになれたのか?」
「うん」
「まじ? それって、奇跡じゃない?」
テレビを見ていた姉が、拓海に視線を向けた。姉も、小学校三年の時以外は、海斗と七海と同じクラスであることを知っている。
「縁があるのよ、三人は」
天ぷらの盛られた皿を食卓に運んできた母親も、口をはさんだ。
「今日も、彼らとしゃべってきたんだよね?」
「七海の友達も入れた四人でね。この間お父さんからもらった小遣いで、ファミレスでご馳走しちゃった」
「えっ? ご飯、食べてきたの?」
「軽めにね。でも、もうお腹すいた」
「それなら、いいんだけど」
母親が、ほっとしたような表情を浮かべた。
晩御飯を終えた家族四人は、リビングに移動し、並んでソファーに座った。
拓海の家では、家族全員がそろう晩御飯のときは、食後にデザートを食べながら、みなでテレビを見る習慣があった。
今日のデザートは、母親がスーパーで買ってきたイチゴと父親が会社からもらってきたクッキーだった。いつもはデザートと一緒に緑茶が出てくるのだが、今日はクッキーがあるので、母親が紅茶を入れてくれた。
テレビには、高齢者の孤独死をテーマにしたドキュメンタリー番組が流れていた。画面の右上に、『本格的な高齢化社会を迎えた日本の現実』というタイトルが踊っている。
一人暮らしの老人が人知れず息を引き取り、死後時間が経ってから発見されるという悲しい現実が、次々と紹介されていた。
「うちのおじいちゃんやおばあちゃんのところも、いずれどちらかが先に死んで、残された方が一人になるのよね」姉が、しみじみとした口調で呟いた。父方、母方ともに祖父母は健在だが、高齢であり、どちらかが亡くなった場合、もう片方が一人で残される運命にある。
「田舎ってさ、隣近所がみーんな仲がいいから、孤独死みたいなことにはならないと思うけどねー」ビールでほろ酔い気分になった父親が、歌うように語る。
「こういうのって、都市部のほうが深刻みたいよね。お父さんが言うように、田舎は、隣近所が家族同然の付き合いをしているけど、都市部は、そういうのはないから、こういうことがよく起こるみたいよ」クッキーに手を伸ばした母親が、したり顔で口にした。
「都会に住む老人は、寂しいんだね」姉が、しみじみと言う。
「生活には便利かもしれないけどね」
「このあたりも、一人暮らしの老人って、けっこういるんでしょ?」
「いそうね」
「なんで、都会の老人って、閉鎖的なのかな?」
「田舎は、みんなのライフスタイルが似通っているから集団に溶け込みやすいんだろうけど、都会は、人それぞれだから、溶け込みづらいんじゃないの?」
「そんなの、老人同士で友達になっちゃえばいいんじゃないのかなって思っちゃうんだけど。みんなで集まってワイワイやっていれば、孤独を感じるみたいなことにはならないと思うんだけどな」
「誰もがさ、歳を取ってくると、人づきあいが億劫になってくるんだよ。足腰が弱ってくると、外出するのも面倒になるし、自分から何かをしようという気力も失せてくるんだよ」
母親と姉との会話に、父親が割り込んできた。
「でも、自分から行動を起こさなかったら、寂しさから解放されるなんてことはないと思うんだけど」姉が、納得のいかない表情を浮かべる。
「そう思わない?」姉が、拓海に同意を求めてきた。
「そうだね」拓海も、そのように感じていた。
「お前たちは若いから、行動しようと思ったらなんでもすっとできるんだろうけど、歳を取ってくると、なんていえばいいのかな、気力が落ちてくるからか、何でもかんでも即行動っていう風にはならないんだよ」
「ふーん」父親の言葉に、拓海も姉も、わかったようなわからないようなという顔をした。
「それにな、歳を取ると、自分のペースを乱されたくないっていう気持ちも強くなるから、お前たちみたいに、すぐに誰かと友達になるっていうわけにもいかないんだよ」
父親が言い放ったその言葉に、母親も、そうなのよねえと同調した。
拓海の胸に、歳を取ることに対するマイナスなイメージが広がっていった。
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