見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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十一

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「オオッ!?」

 俺は思わず声を漏らした。

 俺の体はまるでバッタの如く、勢いよく飛び上がった。
慌てて体勢を崩しそうになる。
それをオオムカデンダルがロープを引いて崖の上に引き寄せた。

 ドサッと音をたてて俺はオオムカデンダルの足下に膝を着いた。

「ははッ、最初からこうすれば良かったな」

オオムカデンダルはそう言って笑った。

「な、なんだこれは……?」

 俺は混乱しながら呟いた。

「何だとはなんだ?」

 オオムカデンダルが奇妙なものを見るように俺を見た。

 俺はもう一度言った。

「今のはどういう仕組みだ。凄い跳んだぞ!?」

 言葉の意味を理解してオオムカデンダルが『ああ』と言った。

「お前の足に装着している補助器の能力だよ。着けてりゃ自分でも判るだろ?折れた足でも装着者には全く負担を掛けずに、その器具が一〇〇%、いや、一〇〇〇%お前の力を肩替りしてくれる」

 俺はまじまじと自分の足に装着された補助器を見つめた。

 なんと言うアイテムだ。
こんなの見たことも聞いたこともない。

「もういちいち驚くな。どうせ説明しても理解できんだろうし、そう言う道具だと思って納得しろ」

 オオムカデンダルはそう言ってロープを放り出すと、また歩き始めた。

 俺も立ち上がると直ぐに付いていく。

「あ、そうだ。補助器のつまみは元のボリュームに戻しておけよ。危ないぞ」

 オオムカデンダルが歩きながら言った。
たぶん力を調節するのがあのつまみなのだろう。
そのくらいはなんとなく理解できる。

 俺は素直につまみを元に戻した。
あの力のままだと、確かに何かの弾みで怪我でもしそうだ。

 どのくらい進んだだろうか。
時間にしては小一時間くらいだろうが、距離にすると相当な距離だろう。
おそらく一〇㎞か、あるいはもう少しか。

 最初に意識を取り戻した時、丸一日以上流されていた筈である。
こんなに流されていたのかと今になって驚く。

 それを小一時間程度でここまで戻ってきたのかと思うと更に驚く。

「ここは……」

 俺は辺りを見て呟いた。
ここは俺が最後にヤツとやりあって崖下に落ちた付近だ。

「この辺りか。以前反応があったのも確かにこの近くだな」

 オオムカデンダルはそう言って辺りを見渡した。

 日は傾いて夕暮れが近付いている。
出発した時がすでに午後だったのか。
時間の感覚が無かったのと、必死に後を着いてきた事で、すっかり意識から抜けていた。

 これはあまりよろしくない。
日没はまずい。

 俺は辺りを注意深く見ながらオオムカデンダルの後を追った。

「夜はまずい。一旦ここから離れて朝を待った方が良い」

 俺はオオムカデンダルに声を掛けた。

「あん?なんで?」

 オオムカデンダルが怪訝そうに聞いてくる。
当然の反応だ。

「夜はヤツの時間だ。俺たちは暗闇で行動が制限されるがヤツにはそれがない。むしろ暗闇を味方につけて襲ってくる」

 俺は話ながら当時の様子を思い出して、体中から嫌な汗が噴き出してくるのを感じていた。
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