こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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閑話

とある少年の淡い思い(下)

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「ローザ婆さんに? 親戚か何かか?」
「いえ、私は……ただ親に捨てられただけのどこにでもいる普通の女の子です」

 そう言って苦笑する彼女は、俺には泣いているようにも見えた。

「わ、わりぃっ! 変に踏み込んだことを訊いちまって……」
「いえ、私が勝手に言ったことですから。それよりも何か買いに来たんじゃ」
「あ、そうだ。母ちゃんに傷薬を買ってこいって頼まれたんだ」

 いつの間にかお使いのことはすっかり頭から抜け落ちていた。

「傷薬ですね。量はどれぐらいですか?」
「これに一杯だ」

 そう言って持ってきた薬入れを見せた。

「ちょっと待ってくださいね。今量りますので」

 そう言って一旦奥に引っ込むと、華奢な腕で重そうな金属製の秤を軽々と持ってきた。

「重くないのか?」
「これぐらいだったら大丈夫ですよ。大した重さなんてないですし」

 その言葉とは裏腹に、カウンターに置かれた秤は重そうな音を立てた。

「これなんて軽い方ですよ? 漬物石の方がよっぽど重いぐらいです」

 そう言って手早く薬を量り始めた。

「……なぁ、1つ訊いても良いか?」

 沈黙が堪えられなくて、俺はふと気になったことを訊いてみることにした。

「? なんですか?」
「好きなやつってどんなやつだ?」

 近所のやつらはどうせ訊いても、金を一杯稼ぐやつだとか、見た目が良いやつだとか言うだろう。だが彼女はそんな答えは出さないような、そんな予感がした。

「そうですね……何事にも一生懸命な人は尊敬しますね。少なくとも何でも人に押し付けて、自分は何もしない人は大っ嫌いです」

 何でも人に押し付けて、自分は何もしない……それは完全に俺のことだった。

「そ、そうか……」

 自分を全否定されたように感じ、落ち込む。

「でもそんな人でも、そんな自分を変えようとする人は好感が持てますね」

 その言葉に落ち込んだ心が少しだけ浮上した。

「お代は20エルになります」

 ちょうど量り終わったのか代金を告げられ、持ってきた巾着袋を開いた。ぴったし小銀貨が2枚。母ちゃんは余計な金を入れる気はないらしい。

「はい、ちょうどですね。またのご来店、お待ちしております」

 彼女の弾けんばかりの笑顔に、偶にはお使いも悪くないと、そう思った。

「ああ、また来る」

 帰る道すがら、明日から家の手伝いもちゃんとしようと、そう心に誓った。少なくとも彼女に、マリアちゃんに大っ嫌いだなんて言われた日には立ち直れる自信なんてない。それに一生懸命頑張る人は好きだと言っていた。怠け者な自分を変えようとする人は好感が持てるとも。

「それにもしかしたら……」

 俺は頬が緩むのを。抑えきれなかった。
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