こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第一章 入学と第二王子

謁見前

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 週末、マリアは朝早くから街の広場でアルフォードを待っていた。

(目立たないように地味な格好で来てって言ったけど大丈夫かな……)

一抹の不安を抱えて。

「ごめん。待ったか?」

 そんな不安を余所に現れた当の本人はマリアがお願いしたようにかなり地味な格好をしていた。それでもよく見れば仕立てがいい高級品だとわかる。

「ううん、大丈夫だよ」
「そうか……。時間もないし行くぞ」

 そう言ってアルフォードは歩き出した。

(そう言えばお貴族様なのにお供の一人もつけないで出掛けて大丈夫なのかな)

 アルフォードを追いかけながらそんなことを思う。
 アルフォードが向かった先は服屋だった。マリアが普段使っているような中古の服を売っているような店ではなく、新品の服を売っている高級店だ。

「ここで今日着ていく服を買うから。予算は気にしなくていいから好きなのを選んで」

 そう言うとアルフォードは自分の服を選んで来ると言って、男物の服が並んでいる方に行ってしまった。
 予算は気にするなと言われたもののなんとなく見た値札にマリアは頭がくらくらした。大体マリアの普段着の100倍以上だ。
 それが高かっただけかとほかの服の値段も見たが、ほとんど変わらなかった。

(服ってこんなに高いものだっけ?)

 実はこの店、王都でも片手の指に数えられるような高級店だったりするが、マリアはその事実を知らない。ただ単に新品の服は高いだけだと思っている。

「決まった?」

 アルフォードが自分の服を選び終わり、戻って来た。服を手に固まっているマリアを見て、不思議そうな顔をした。

「まだだけど」
「そうか……。悩んでいるなら2着でも3着でも選んじゃって良いからね。後パーティードレスも1着選んでおいて」
「えっ? でも……」

 普通の人間なら喜ぶところだが、マリアは気が引けた。

「忘れているようだけど来月には学園主催のダンスパーティーがあるんだからね。そのためにもそれなりの服は必要でしょ?」

 マリアはもう値段を気にするのはやめた。
 開き直ってからのマリアの行動は早かった。並んでいる自分に合うサイズの服の中から飾りが少な目のシンプルなデザインの服を数着選んだ。とは言っても子供用の服だけあってあっちこっちにフリルやレースが満載だったが。

「それで良いの?」
「うん!」

 そのままドレスが並んでいる区画に移動したが、ドレス選びは難航した。まず、並んでいるドレスの数が多いのだ。そしてその中からマリアが気に入ったものを見つけてもアルフォードからダメ出しが入った。

「じゃあこれはどう?」
「少し飾りが少なすぎる。これなんかどうだ?」
「それはちょっと私には派手すぎるよ」

 難航した最大の理由は今の流行とマリアの好みの違いだ。マリアが飾りが少な目のシンプルなものを好むのに対し、今の流行はこれでもかという程レースやフリルをふんだんにあしらったものだ。アルフォードはマリアが恥をかかないようにとマリアの意見を取り入れつつできるだけ流行に近いものを勧めていた。
 結局二人が納得するドレスが決まるまでそれから1時間ほどかかった。決定したドレスは薄い青だが、上から下にかけてだんだん色が薄くなっていた。裾や胸元などには白いレースがあしらわれていたが、そこまで量は多くない。所々に縫い付けられたビーズが光っているのが印象的な1着だ。

「会計を頼む」

 ドレスを選んでいる間に近くに来ていた店員に会計を頼んだ。

「こちらに男性ものの服が1着で金貨5枚、女性ものの服が4着で金貨23枚、ドレスが1着で金貨30枚で全部で金貨58枚になります」

 アルフォードは財布を取り出すと白金貨を1枚渡した。

「これに着替えていくことはできるか?」
「はい、あちらが更衣室になっております」

 さっそく買ったばかりの服に着替えた。

「マリア、アイテムボックスは使えるか?」
「はい」
「だったら他の服をアイテムボックスにしまっておいてもらえるか?」
「わかった」

 マリアが服をしまい終わると店を出た。

「馬車を呼んであるから行くぞ」

 馬車は店の近くの駐車スペースに止まっていた。
 二人が乗り込むと馬車はすぐに走り出した。

☆★☆★☆

 貨幣は下から順に銅貨、小銀貨、大銀貨、金貨、白金貨となります。金貨までは10枚で次の貨幣1枚と両替ができます。白金貨だけは金貨100枚です。単位は一応エルです。
 服装についてですが、正装はドレスですが、着るのは基本的にパーティーの時だけです。
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