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第一章 入学と第二王子

告白

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 カフェで適当にお茶とケーキを注文した。

「さて、何から話したら良いかな?」
「とりあえず例の件からお願い」
「わかった」

 アルフォードは注文した品が来ると話し始めた。

「ランフォードが裏で暗躍していたのは抱えている諜報員たちから聞いたんだ」

 彼らの腕は信頼できると、アルフォードは笑った。

「ちなみにさっきの店の情報も彼ら経由だよ」

 今度紹介すると言ってあっさり話を終わらせた。

「質問しても良い?」
「どうぞ」
「普通の貴族の諜報員レベルじゃ王族が絡んだ情報は得るのが難しいと思うんだけど……」
「さっきも言っただろう? 彼らの腕はいいって」
「それにしたって限度があると思うんだけど……」

 アルフォードは手に持っていたカップを置いた。

「何が言いたいわけ?」

 アルフォードの顔が少し厳しいものに変わった。

「あなたはいったい何者なの? 今にして思えば色々おかしいのよ。さっきだってお城の中を案内もなしに移動できたし。門のところも止められることさえなかったじゃない」

 少しの間沈黙が満ちた。

「はぁ、本当はまだ言うつもりはなかったんだけどね……」

 アルフォードは仕方がないと溜息を吐いた。

「これから言うことを秘密にできる?」

 できないなら話さないとアルフォードは言った。

「ええ、勿論」

 アルフォードはその返答にホッと息を吐くとお茶を一口飲んだ。その際にさり気なく周りに人がいないことを確認した。

「僕の名前がアルフォード・エルダーというのは嘘だ」

 愛称はあるだけどねと笑った。

「僕の本名はアルデヒド・エルドラント。この国の第四王子だ」
「えっ? でも他の人たちは気づいていなかったけど……」

 マリアは戸惑った。

「君は第四王子の噂を忘れたの?」
「えっと、確か……」

 マリアは必死に記憶を掘り起こした。

「領地で善政を敷くことから民衆から人気がある」
「他には?」

 アルフォードは自分の服を続きを促した。

「病弱でそれを理由に貴族からは国王にするのは反対だと……あっ!」
「気がついたみたいだね」
「病弱ってことは人前には滅多に出てこない。ましてや、貴族の子供と面識があるとはとても思えない」
「その通り」

 アルフォードはマリアに拍手をした。

「まぁ、病弱っていうのは嘘だけどね。僕はあの手のことが嫌いだから出ないための方便だよ。父に頼まれて顔を知られていないことを良いことに時々田舎の貴族のふりをして出たりするけどね。彼ら僕が田舎者だと馬鹿にして口を滑らすんだ」

 アルフォード・エルダーはその時に使う偽名らしい。

「エルダー男爵家は今は没落している田舎貴族だけど、元は王家の親戚筋にあたるのさ」

 アルフォードは愉快そうに笑った。

☆★☆★☆

次回で第二王子にまつわる事件は終了の予定です。今日中に投稿します。
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