こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第十章

商談(1)

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 エーアリアスはメアリーを目でカウンターに向かわせるとモーガンに先ほどとは違う穏やかな表情を見せる。

「ついでに部屋も用意させるの。ここで話す内容でもないしね」
「それは助かりますが⋯⋯」
「かかるお金のことは気にしなくて良いの。こっちから持ちかけた話だし、それぐらいこちらで持つの」

 当然のことと言うようにエーアリアスはサラリとそう言った。

「いえ、半分は私が払いますよ。こちらに都合の良い話のようですし」
「別に良いの。それを盾にこちらに不利益がある契約を結ばされても困るしね」
「そんなことはしない、と言っても無駄ですね。私達の間にそんな信頼関係はまだありませんし⋯⋯」

 モーガンがそれならと理解を示したところでちょうどメアリーが戻ってきた。

「お待たせいたしました、お嬢様。部屋の方も問題なく取れまして2階の小部屋だそうです」
「ありがとうなの。エーデルとの違いは?」
「細々としたのがいくつかと税金関連が少々。事前に把握していたものだけです」
「わかったの」

 モーガンを振り返るとエーアリアスは柔らかく笑った。

「楽しい商談の時間なの」
「楽しいかどうかは置いておきましてそうですね。移動しましょうか」

 その返答にエーアリアスは頬を膨らませる。

「ノリが悪いの。一言余計なの」
「⋯⋯お嬢様、それは無茶ぶりが過ぎます」
「え~、そんなことないの」
「それが許されるのはある程度親しい間柄の人間だけです。⋯⋯すいません」

 最後にモーガンに謝るとモーガンは苦笑いをした。

「いえいえ」
「後で責任を持ってゆっくりと言い聞かせて起きますので。⋯⋯お嬢様も謝ってください」
「⋯⋯ごめんなさい」

 モーガンが苦笑いでその謝罪を受け入れると一行はようやく借りた商談用の部屋へと移動した。

「さて、細かい条件とかそういう話はとりあえず置いておいて、本題に入る前に1つ訂正することがあるの」

 部屋に備え付けられたテーブルセットに座り、メアリーがドアを閉めるのを確認するや否や、エーアリアスは神妙な面持ちで口を開いた。

「と、言いますと?」
「シュネー商会は世間ではなぜかエーデル王家御用達商会だと思われているけど、それは間違いなの」
「はい?」

 不可解なことを聞いたとでも言うように固まるモーガンにエーアリアスは淡々と事実を告げる。

「ちょうど良いから噂を否定していないだけで、シュネー商会はエーデル王が商会主を務めている、王族が運営している商会なの」
「⋯⋯はい?」
「そして私の正式名称はエーアリアス・フォン・エーデル。エーデル王国の第二王女なの」
「⋯⋯⋯⋯はい?」
「後でトラブルになっても面倒くさいから言ったけど、別に畏まれとかそういうことを言う気はないの。寧ろそこらの一介の商人とか商会とかと同じように扱って欲しいの」

 そう言って微笑んだエーアリアスは返事がないことに首を傾げた。

「お嬢様、相手が気絶しています」
「⋯⋯これぐらいのことで気絶するなんて、軟弱なの」

 エーアリアスはそっと溜息を吐いた。
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