上 下
60 / 464
第三章 魔術の授業

決着

しおりを挟む
 激しい音とともに炎の球はフェリシーに当たり爆散した。

「やったかな?」

 マリアは勝利を確信していたが火が消えるまで油断はしなかった。
 やがて火が消えるとそこには無傷のフェリシーが立っていた。

「これぐらいで倒せると思ったら大間違いですのよ」

 フェリシーは当たる寸前に《マジックシールド》を使っていた。

「あれで倒せないなんて……」

 マリアはフェリシーのことを少し甘く見過ぎていたと反省した。そして次に何が来ても良いように身構えた。

「今度はこちらの番ですわ。『《ファイアストーム》』」
「っ!?」

 しかし詠唱を省略されて放たれた魔術にマリアは反応しきれなかった。今度はマリアが火に包まれる番だった。

「初級魔術の《ファイアストーム》ですわ。炎に焼かれて醜く死になさい!」

 フェリシーは勝ち誇った笑みを浮かべた。
 次の瞬間炎からマリアが飛び出してきた。

「『《ダークボール》』!」
「っ!?」

 強化された脚力で瞬時に無防備なフェリシーに近づくと、そのまま詠唱を省略した魔術を放った。
 フェリシーは避けきれないことを悟るとマリアに向かってレイピアで切りつけた。
 どちらもほとんど同時に相手に当たった。
 数瞬後──。

ドサッ

 フェリシーが崩れ落ちた。
 マリアも怪我をしているがそれも治癒の魔術を掛ければ治る程度だった。

「勝者、マリア!」

 学園長の宣言の後一瞬置いて歓声が上がった。

(この人どれだけ好き放題していたんだろう?)

 マリアはそんな生徒たちを見てそんな疑問を持った。

「マリア、勝者としてフェリシーに望むことは何じゃ?」
「この前の謝罪と罰則を受け、金輪際私に近づかないことです」

 マリアは学園長の問いかけに予め決めてあった答えを返した。

「うむ、謝罪の方は気がつき次第させ、近づかないことを契約書に書かせよう。勿論罰則もきちんと受けさせよう」

 学園長の言葉に再び歓声が上がった。フェリシーに迷惑を被った人も少なくないのかもしれない。

「マリア、おめでとう!」

 エリザベートがマリアに抱き付きながらそう言った。
 そんな貴族らしくない姿にエリザベートの後ろでアルフォードが苦笑いを浮かべた。

「「ありがとう!」

 そんな2人の姿にマリアは自然と笑顔になった。
しおりを挟む

処理中です...