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第四章 護衛依頼
十四日目(8) 討伐(マリア)(1)
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どこかから叫び声が聞こえた。
「あっちは方角的にアルかな?」
マリアはそちらの方を見ながらそう呟いた。間違っても敵の目の前でとる行動ではない。
「皆ほとんど魔術が使えないって縛りがあるんだから、私が魔術を使いまくったら卑怯だよね?」
マリアは目の前のオーガにそう問いかけた。勿論返事があるわけもなく、威嚇の声と共に攻撃が放たれた。
「えっと、そこの方ってもしかしてキングさんですか?」
マリアは他のオーガよりも一回り大きく、額に立派な角が生えたオーガ──オーガキングに問いかけた。
「ということはこの群れを率いているのはあなたですか。3人にはちょっと悪いけど相手として不足なしです」
マリアは上衣の内ポケットに右手を入れた。引き抜かれた手には細長い針が指の間に1本ずつ挟まれていた。
「実戦では魔術ばかりで、これを使ったことはないですけど、良い機会です。練習台になってください」
マリアは横薙ぎに振るわれた腕をしゃがんで回避すると、その腕に左手をついて逆立ちすると、その首筋に手の針を打ち込んだ。
同じ要領でマリアはひたすら攻撃を──時にしゃがみ、時にはジャンプして躱し、隙を伺い、隙を見つけるとすかさず近寄り、首筋に深々と手の中の針を打ち込んだ。
オーガは一瞬ピクリと震え、動かなくなった。
「射程距離が短いのが難点だね、やっぱ。短剣よりはましだけど」
本来この針は仕留めるというよりは、動きを阻害するための武器なのだが、マリアはそのことに気づいていない。
「使い捨てだし、割に合わないかな?」
そのことに気づかぬまま、マリアはオーガキング以外の普通のオーガ12匹を倒し切った。
その間、オーガキングはじっと食い入るようにマリアの動きを見ており、攻撃に参加することはなかった。
「残りはあなただけですね」
マリアはオーガキングと相対した。針は使い切っており、その手には何も握られていない。
「行きます!」
マリアは宣言すると、オーガキングに向かって駆け出した。
「魔術は使わないと言いましたけど、武器がないので仕方ありません。『《錬成》』!」
マリアが手を空中に差し出しながら唱えると、虚空に小ぶりな短剣が現れた。
装飾の類はほとんどなく、柄に小さく龍が彫り込まれている。
マリアはそれを掴むと、構えた。
「えいっ!」
そしてそのままオーガキングを切りつけた。
オーガキングはそれを易々と躱すとマリアに向かって手を振り下ろした。
「きゃっ!」
マリアはそれを辛うじて避けたが、あまりの威力に地面が抉れ、土塊がマリアを襲った。
動きを止めた隙を見逃さず、オーガキングは渾身の拳をマリアに放った。
「えっ?きゃあっ!」
とっさに短剣で逸らしたが、受け流しきれず、マリアは吹き飛ばされて近くの木に叩き付けられた。手に持っていた短剣も粉々に砕け散った。
オーガキングはそれを見てニヤリと笑うとゆっくりとマリアに近寄っていった。マリアは意識を失っているのかまったく動かない。
そしてオーガキングはその腕を勢いよく振り下ろした。
「あっちは方角的にアルかな?」
マリアはそちらの方を見ながらそう呟いた。間違っても敵の目の前でとる行動ではない。
「皆ほとんど魔術が使えないって縛りがあるんだから、私が魔術を使いまくったら卑怯だよね?」
マリアは目の前のオーガにそう問いかけた。勿論返事があるわけもなく、威嚇の声と共に攻撃が放たれた。
「えっと、そこの方ってもしかしてキングさんですか?」
マリアは他のオーガよりも一回り大きく、額に立派な角が生えたオーガ──オーガキングに問いかけた。
「ということはこの群れを率いているのはあなたですか。3人にはちょっと悪いけど相手として不足なしです」
マリアは上衣の内ポケットに右手を入れた。引き抜かれた手には細長い針が指の間に1本ずつ挟まれていた。
「実戦では魔術ばかりで、これを使ったことはないですけど、良い機会です。練習台になってください」
マリアは横薙ぎに振るわれた腕をしゃがんで回避すると、その腕に左手をついて逆立ちすると、その首筋に手の針を打ち込んだ。
同じ要領でマリアはひたすら攻撃を──時にしゃがみ、時にはジャンプして躱し、隙を伺い、隙を見つけるとすかさず近寄り、首筋に深々と手の中の針を打ち込んだ。
オーガは一瞬ピクリと震え、動かなくなった。
「射程距離が短いのが難点だね、やっぱ。短剣よりはましだけど」
本来この針は仕留めるというよりは、動きを阻害するための武器なのだが、マリアはそのことに気づいていない。
「使い捨てだし、割に合わないかな?」
そのことに気づかぬまま、マリアはオーガキング以外の普通のオーガ12匹を倒し切った。
その間、オーガキングはじっと食い入るようにマリアの動きを見ており、攻撃に参加することはなかった。
「残りはあなただけですね」
マリアはオーガキングと相対した。針は使い切っており、その手には何も握られていない。
「行きます!」
マリアは宣言すると、オーガキングに向かって駆け出した。
「魔術は使わないと言いましたけど、武器がないので仕方ありません。『《錬成》』!」
マリアが手を空中に差し出しながら唱えると、虚空に小ぶりな短剣が現れた。
装飾の類はほとんどなく、柄に小さく龍が彫り込まれている。
マリアはそれを掴むと、構えた。
「えいっ!」
そしてそのままオーガキングを切りつけた。
オーガキングはそれを易々と躱すとマリアに向かって手を振り下ろした。
「きゃっ!」
マリアはそれを辛うじて避けたが、あまりの威力に地面が抉れ、土塊がマリアを襲った。
動きを止めた隙を見逃さず、オーガキングは渾身の拳をマリアに放った。
「えっ?きゃあっ!」
とっさに短剣で逸らしたが、受け流しきれず、マリアは吹き飛ばされて近くの木に叩き付けられた。手に持っていた短剣も粉々に砕け散った。
オーガキングはそれを見てニヤリと笑うとゆっくりとマリアに近寄っていった。マリアは意識を失っているのかまったく動かない。
そしてオーガキングはその腕を勢いよく振り下ろした。
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