こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第四章 護衛依頼

十四日目(9) 討伐(マリア)(2)

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(どうしよう)

 実際はマリアの意識はあった。だが、受けたダメージのためか、体をまったく動かせなかった。
 そのため、振り下ろされる腕をただ見ていることしかできなかった。
 腕の動きがが酷く遅く見える中、マリアは必死に頭を働かせた。

(回避は無理。防御するしか方法がない。でも今から魔術を使っても詠唱が間に合わない。残っているのは……。ぶっつけ本番で成功するか怪しいけどやるしかないか。『《光の障壁ライトシールド》』)

 残った方法、それは今まで挑戦したこともない、無詠唱での魔術行使だった。
 次の瞬間マリアの眼前に光で出来た盾が現れた。否、それは盾と呼ぶにはあまりにもお粗末すぎるものだった。ひどく小さく、拳一個分しかない。
 そしてその拳はマリアに──当たらなかった。
 先ほどの盾がオーガキングの拳を防いでいた。
 オーガキングは驚いたのか目を見開いて硬直していた。
 その隙を見逃すマリアではなかった。

「『《ダークアロー》』!」

 すかさず放たれた黒い闇色の矢は、吸い込まれるようにオーガキングの眉間を貫いた。

「魔術は使わないって言いましたが、嘘になっちゃいましたね」

 マリアはもう聞く者がいないにも関わらず、そう呟いた。

「さてと、キングさんを含め、オーガさんたちを片付けないといけないんだけど……まだ動けそうにないわね」

 マリアは苦笑してしばし体を休めた。

「皆のことだから怪我1つしていないんだろうな~。……あっでもアーティス辺りはこう視界が悪い森の中だと相性悪いかな?確かアーティスのメイン武器って弓だし」

 マリアはアーティスが普段使っている武器を思い起こした。

 怪我の治療に治癒魔術を使えば良いということに気づいたのは、その数分後のことだった。

「私も結構うっかりしてるな~。『光よ、傷を癒せ、《キュア》』」

 マリアの体を光が包み込み、傷が塞がった。それでも完治とはいかず、数回重ね掛けしたところでようやく動ける程度まで回復した。

「えっと、確かオーガさんたちの討伐証明部位が右耳、素材が革と眼球だったっけ?キングさんはそれに角が加わるんだよね?」

 マリアは朧気な記憶を頼りに、必要な素材を剥ぎ取っていった。
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