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第四章 護衛依頼

十六日目(7) 契約

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「さてと、じゃあ契約してもらおっか」
《あ、あの~、僕帰っちゃダメ?》
「何言ってるの。契約でも何でもするって言ったのは、あなたの方じゃない」

 マリアは呆れたような目を向けた。
 紅龍は周囲に助けを求めたが、全員視線を合わせないように目を逸らした。

「約束は守ってもらいましょうか?」
《はい……》

 紅龍は渋々と頷いた。

《『我、紅龍が一人、グレンは汝と契約を結ぶ。我は如何なる時も汝に危害を与えず、呼ばれれば直ちに駆けつけ、汝らに力を貸すことをここに誓う《召喚契約》』》

 そう言うと、紅龍──グレンから紅い光が放たれ、マリアに向かった。

「えっと、確か……『我はその契約を承認す』」

 曖昧な記憶から最後の文言を掘り起こして唱えると、光はマリアの中に吸い込まれ、代わりに七色の光がマリアから放たれ、グレンに吸い込まれていった。

「……紅龍だから想像はついていたけど、適性火だけって」

 マリアはがっかりしたように呟いた。

《う、うるさい!僕だって気にしているんだからね!仲間には落ちこぼれって呼ばれて、住んでいた山を追い出されたし……》

 最後の方は涙目だった。

「……なんか悪いこと聞いちゃったね。ごめん」

 謝る声は僅かに震えていた。

《な、泣くんじゃない!まるで僕が悪者みたいじゃないか!?》

 グレンはそれを見て、慌てふためき始めた。

「泣いてなんかないもん!」

 言葉とは裏腹に、頬に涙が伝っていた。

「ちょっと昔のことを思い出しちゃっただけ……」

 その声には力がなかった。

(そう言えば、マリアから家族のことを聞いたことがなかったな)
(昔何かあったのかしら)
(聞きたいけど、訊いちゃダメだよな……)

 自然とその場の空気は重苦しくなった。

「もうこの話はお終い!」

 マリアがそう宣言するまで、誰も何も言葉を発しなかった。

「それよりも依頼を達成させないとね?時間もないし、早く探そう?」

 声は明るいが、それは無理をして明るく振る舞っていることを、それなりの付き合いになってきた3人は察した。

「そうね……」
「後1時間ぐらいで暗くなり始めるしな」
《依頼って、何のこと?》

 それでもマリアの気持ちを思い、気づかない振りをした。1名ほど気づいていないものもいるが──。

「あっ、グレンはその体だと目立つからここで一旦お別れね?必要な時に呼ぶから」
《そう言って、お前らも僕を捨てるのか?》

 グレンの目には涙が溜まってきた。

「そんな気は……。でもその大きさだと目立ち過ぎるし、街にも絶対に入れないよ?」
《だったら、小さければ良いんだな?》

 そう言うとグレンの体が紅く発光した。光が収まるとそこには──。
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