130 / 464
第四章 護衛依頼
十六日目(7) 契約
しおりを挟む
「さてと、じゃあ契約してもらおっか」
《あ、あの~、僕帰っちゃダメ?》
「何言ってるの。契約でも何でもするって言ったのは、あなたの方じゃない」
マリアは呆れたような目を向けた。
紅龍は周囲に助けを求めたが、全員視線を合わせないように目を逸らした。
「約束は守ってもらいましょうか?」
《はい……》
紅龍は渋々と頷いた。
《『我、紅龍が一人、グレンは汝と契約を結ぶ。我は如何なる時も汝に危害を与えず、呼ばれれば直ちに駆けつけ、汝らに力を貸すことをここに誓う《召喚契約》』》
そう言うと、紅龍──グレンから紅い光が放たれ、マリアに向かった。
「えっと、確か……『我はその契約を承認す』」
曖昧な記憶から最後の文言を掘り起こして唱えると、光はマリアの中に吸い込まれ、代わりに七色の光がマリアから放たれ、グレンに吸い込まれていった。
「……紅龍だから想像はついていたけど、適性火だけって」
マリアはがっかりしたように呟いた。
《う、うるさい!僕だって気にしているんだからね!仲間には落ちこぼれって呼ばれて、住んでいた山を追い出されたし……》
最後の方は涙目だった。
「……なんか悪いこと聞いちゃったね。ごめん」
謝る声は僅かに震えていた。
《な、泣くんじゃない!まるで僕が悪者みたいじゃないか!?》
グレンはそれを見て、慌てふためき始めた。
「泣いてなんかないもん!」
言葉とは裏腹に、頬に涙が伝っていた。
「ちょっと昔のことを思い出しちゃっただけ……」
その声には力がなかった。
(そう言えば、マリアから家族のことを聞いたことがなかったな)
(昔何かあったのかしら)
(聞きたいけど、訊いちゃダメだよな……)
自然とその場の空気は重苦しくなった。
「もうこの話はお終い!」
マリアがそう宣言するまで、誰も何も言葉を発しなかった。
「それよりも依頼を達成させないとね?時間もないし、早く探そう?」
声は明るいが、それは無理をして明るく振る舞っていることを、それなりの付き合いになってきた3人は察した。
「そうね……」
「後1時間ぐらいで暗くなり始めるしな」
《依頼って、何のこと?》
それでもマリアの気持ちを思い、気づかない振りをした。1名ほど気づいていないものもいるが──。
「あっ、グレンはその体だと目立つからここで一旦お別れね?必要な時に呼ぶから」
《そう言って、お前らも僕を捨てるのか?》
グレンの目には涙が溜まってきた。
「そんな気は……。でもその大きさだと目立ち過ぎるし、街にも絶対に入れないよ?」
《だったら、小さければ良いんだな?》
そう言うとグレンの体が紅く発光した。光が収まるとそこには──。
《あ、あの~、僕帰っちゃダメ?》
「何言ってるの。契約でも何でもするって言ったのは、あなたの方じゃない」
マリアは呆れたような目を向けた。
紅龍は周囲に助けを求めたが、全員視線を合わせないように目を逸らした。
「約束は守ってもらいましょうか?」
《はい……》
紅龍は渋々と頷いた。
《『我、紅龍が一人、グレンは汝と契約を結ぶ。我は如何なる時も汝に危害を与えず、呼ばれれば直ちに駆けつけ、汝らに力を貸すことをここに誓う《召喚契約》』》
そう言うと、紅龍──グレンから紅い光が放たれ、マリアに向かった。
「えっと、確か……『我はその契約を承認す』」
曖昧な記憶から最後の文言を掘り起こして唱えると、光はマリアの中に吸い込まれ、代わりに七色の光がマリアから放たれ、グレンに吸い込まれていった。
「……紅龍だから想像はついていたけど、適性火だけって」
マリアはがっかりしたように呟いた。
《う、うるさい!僕だって気にしているんだからね!仲間には落ちこぼれって呼ばれて、住んでいた山を追い出されたし……》
最後の方は涙目だった。
「……なんか悪いこと聞いちゃったね。ごめん」
謝る声は僅かに震えていた。
《な、泣くんじゃない!まるで僕が悪者みたいじゃないか!?》
グレンはそれを見て、慌てふためき始めた。
「泣いてなんかないもん!」
言葉とは裏腹に、頬に涙が伝っていた。
「ちょっと昔のことを思い出しちゃっただけ……」
その声には力がなかった。
(そう言えば、マリアから家族のことを聞いたことがなかったな)
(昔何かあったのかしら)
(聞きたいけど、訊いちゃダメだよな……)
自然とその場の空気は重苦しくなった。
「もうこの話はお終い!」
マリアがそう宣言するまで、誰も何も言葉を発しなかった。
「それよりも依頼を達成させないとね?時間もないし、早く探そう?」
声は明るいが、それは無理をして明るく振る舞っていることを、それなりの付き合いになってきた3人は察した。
「そうね……」
「後1時間ぐらいで暗くなり始めるしな」
《依頼って、何のこと?》
それでもマリアの気持ちを思い、気づかない振りをした。1名ほど気づいていないものもいるが──。
「あっ、グレンはその体だと目立つからここで一旦お別れね?必要な時に呼ぶから」
《そう言って、お前らも僕を捨てるのか?》
グレンの目には涙が溜まってきた。
「そんな気は……。でもその大きさだと目立ち過ぎるし、街にも絶対に入れないよ?」
《だったら、小さければ良いんだな?》
そう言うとグレンの体が紅く発光した。光が収まるとそこには──。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
856
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる