こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第五章 エイセルの街

マリアとグレンの場合(5)

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 部屋に入ってきたのは、太った中年の男と、若い男の2人だった。中年の男の方は、無駄に豪華な服を身に纏い、指には馬鹿でっかい宝石が付いた指輪をはめていた。

「こちらが今回の商品です。アイゼン様」
「今回は随分と数が多いですね」
「運が良かったんですよ」

 アイゼンと呼ばれた中年の男は、マリアたちを舐めるように見た。

「今回は上玉もいるようですし30枚でどうです?」
「それはお人が悪い。40は貰わなくちゃ割に合いませんよ」
「……35枚。それ以上は出しません」
「それで良いです」

 目の前で自分たちを売る算段をしていることに、子どもたちはガタガタ震えていた。
 そんな中、マリアとグレンの2人は目だけで会話していた。

(こいつが黒幕みたいだね)
(もうこいつらをぶっ飛ばして良いか?)
(待って、多分近づいてくるから)
(了解)

 マリアの思った通り、アイゼンは無防備に近づいてきた。そしてマリアの腕を強く掴んだ。

「きゃっ!」
「マリア!」
「誰が喋って良いと言った!」

 若い男はグレンを思いっ切り蹴り飛ばした。

「グレン!」

 大丈夫だとはわかっていても、容赦のない攻撃にマリアは悲鳴を上げた。

「傷ついたら商品の価値が下がるじゃないですか」
「それはすまねえな」

 人間をものとしか見ていない2人に、マリアの頭は急速に冷めていった。

(一番人間として許せない人たちね)

 マリアは深く深呼吸すると、心を落ち着けた。
 さり気なく見つからないように自分の両手両足を縛っているロープを、無詠唱で出した小さな火で焼き切ると、グレンに視線で合図を出した。

「『《強化》、《防音障壁》』」

 マリアはそう呟くと、自分の腕を掴んでいたアイゼンの手を振り払うと、呆気に取られているその体に思いっ切り回し蹴りを放った。
 アイゼンは数メートル吹っ飛ぶと、ぐったりと動かなくなった。どうやら気を失ったようだ。
 残った男の方を見れば、グレンの首筋に刃物を突きつけて、盾のようにしていた。

「こ、この坊主に怪我をさせたくなければ動くんじゃねぇ!」

 そんな男をマリアは無表情に見た。

「良いよ、別に好きにすれば?」

 そう言って男の方にゆっくりと歩いていった。

「ひっ!こっちに来るんじゃねぇ!誰か!」
「無駄だよ?外に声は聞こえないようにしているからね。誰も来ないよ」

 後退る男に、マリアは笑いながら言った。
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