こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第五章 エイセルの街

アルフォードの場合

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 他の4人が部屋を出ていくと、アルフォードは執務机に目を向けた。

「どれがまだ終わっていない書類だ?」
「向かって右が確認済み、真ん中が未処理、左が保留のものです」
「保留?」
「私では処理ができない領主の印が必要なものです」
「ああ、なるほど。俺はそれからやれば良いのか?」
「はい、お願いします。それと、口調が素に戻っていますよ?」

 レインは楽し気に笑った。

「良いだろ、別に。他に人もいないんだし」
「そういうことにしておきますね。……それにしても珍しいですね。アル様があれだけ素に近い状態で接しているなんて。我が目を疑いましたよ」
「それは言い過ぎじゃないか?あれは……最初はいつも通り接していたんだ。一緒に過ごしているうちにだんだんな。……そう言えばエリンが呼んでいたぞ?」

 アルフォードは誤魔化すように言った。

「本当ですか?多分この件に関する話だと思うので、すぐに行ってきますね。後はお願いします」

 レインはそれだけ言って、部屋から足早に出ていった。

「そんな気はなかったんだがな……」

 ポツリと呟いた言葉が部屋に響いた。その言葉は誰に向けたものだったのかはわからない。レインに向けてだったのか、自分自身への言葉だったのか、それとも別の誰かか……。
 アルフォードは頭を軽く振って気持ちを切り替えると、執務机に座り、書類に目を通していった。

「……条例の見直し案か。考えたな。街で犯罪が起きるのが防げないなら、法で縛るということか。確かに抑止力にはなるだろうが、気をつけなければ住人からの反発を受け兼ねん。……これは後回しだな。……何だコレ?」

 声に出しながら処理を進めていくと、おかしなものが紛れ込んでいた。

「大規模な菓子工房建設計画?公共事業として進めていくだと?どこの書類だ、これは」

 アルフォードが書類の最後を見ると、貴族院代表アレリーナ・オルコットと書かれていた。

「あいつか……」

 アルフォードはその名前を見て頭を抱えた。
 第四王子直轄領──マイエルでは議会制を採用している。各街は能力に秀でた代官が治め、全体に関わるようなことは議会で話し合って決める。議会では貴族で構成された貴族院と一般庶民で構成された庶民院があり、両議会で意見が食い違った時のみ領主であるアルデヒドのところに書類が送られてくる仕組みだった。
 貴族院では私利私欲に忠実な者が多いため、こういったことが比較的多くある。また、庶民院の出した案を跳ね除けることは当たり前となっており、アルフォードの頭を悩ませていた。
 なお、この決まりを破った場合は誰であれ私財を全て没収の上奴隷に落とされることになっている。そのため、貴族が好き勝手するというような、最悪な事態だけはなんとか回避することができていた。

「却下と」

 アルフォードは不承認の印を押すと、処理済みの書類に加えた。
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