こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第五章 エイセルの街

アルフォードの場合(2)

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 書類の山を少しずつ減らしていき、最初は数百枚はあると思われた山が三分の一ほどになった頃、レインが帰ってきた。

「やはり今回の事件についてでした。冒険者ギルド側は今回の事態を重く捉えて、事件を起こした者の冒険者ギルドから除名、程度の低い者に関してはGランクへの降格処分にするそうです」

 レインは部屋に入るなりそうまくし立てた。

「えっと、それはどれぐらいのことなんだ?」

 アルフォードにはそれがどれぐらい凄いことなのか理解できなかった。

「通常でしたらギルドからの除名処分は殺人を犯した者にのみ降されます。通常なら精々ギルドランクが一つ下がるか、特に何も処分をされないことも多いですね」
「……なんだそれは。あり得ないだろう?」
「その通りなんですが、裏で色々事情がありまして……」

 レインは言葉を濁した。

「どうせ権力争いとかその手のことだろう?」
「……おっしゃる通りです」

 ギルドマスター、もしくはギルド長と呼ばれる者たちは権力争いには興味がなく、この手のことに頭を悩まされていた。処分をしようとしても、幹部たちが何かと過去にそのようなことをした者はいない、前例がないと、何かしら言いがかりをつけてきて何もできない。そしてギルドが何もしないので冒険者たちも増長する。悪循環だった。
 毎年年度末に行われるギルマスたちの会合でもこの件は問題になっており、最後は皆で愚痴を言い合って終わるのがこの十数年の恒例となっていた。

「サブギルドマスターがそれぞれの支部に3人いることはご存知ですか?」
「いや、初耳だ」

 アルフォードはてっきりサブギルマスも1人だと思っていた。

「その3人が権力争いをしているんです」

 レインは溜息を吐いた。

「少しでも自分の利益になるようにそれぞれが画策した結果が今のギルドマスターが動けなくなっている状態です」
「そ、それは……何というか」

 アルフォードは言葉に詰まった。

「今ギルドマスターたちの間で、サブギルドマスターを減らすかどうかの会議が極秘裏に行われています。決定されるのも時間の問題でしょう」
「……すぐに可決されそうなものだが、それはサブギルマス対策か?文句を言う奴もいそうだしな」
「その通りです。つまり今を乗り切れば近いうちにこのようなことは起こらなくなるでしょう」
「そうか。……そう言えばこんなのがあったんだがどう思う?」

 アルフォードが見せたのは先ほどの条例の見直し案だった。

「これは……ギルドマスターの動きを考えると一時保留が妥当だと」
「だな」

 レインも椅子に座り、書類に目を通し始めた。

コンコン

 書類仕事を再開してすぐに部屋のドアが叩かれた。

「失礼します」

 入ってきたのはこの屋敷の警備をしている兵の1人だった。

「どうしました?」
「それが……街の警備兵が、レイン様の知り合いだと名乗る男を捕らえたと言っていまして。どうも人攫いだと思われたらしく……本人は否定しているそうなんですが。確認をしてもらいたいと」
「わかりました。すぐに行きます。……というわけでちょっと行ってきますね。仕事が進まなくてすいません」
「気にするな」
「できるだけすぐに戻りますから」

 レインと兵が出ていくと、アルフォードは重い溜息を吐いた。

「何をやってるんだ?アーティスのやつ」
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