こうして少女は最強となった

松本鈴歌

文字の大きさ
226 / 464
第六章 王都への帰路

王都への帰還

しおりを挟む
6章最終話。今回はちょっと長めです。

☆★☆★☆

 それから2週間後、特に何事もなく王都の外壁が見えるところまで戻ってきていた。ただし、何回も数十頭単位の魔物に襲われたことが何事もなくと言えるかどうかは人によっては微妙だろうが、怪我人が誰一人として出なかったのだから何事もなかったと言って良いだろう。

「こうして見ると王都って大きいね~」
「そうね。エイセルも大きい街だと思ったけど、比べ物にならないわ」
「そうだな」
「王都ってこんなに大きかったんだな」

 元々の王都組4人はしみじみと王都を見ていた。

「……」

 リオナはただ無言で呆然としていた。

「……オウト、オオキイナ」

 グレンは片言だった。

(流石に僕だって気づく。龍の里の方が大きいなんて絶対に言っちゃ駄目なやつだ)

 段々と空気を読む術が上がっていた。

「……話には聞いていたが大きいな」
「……ああ」

 王都は初めてのDランク冒険者の2人の反応が一番普通だった。
 ちなみに行商人たちは王都に来るのもこれまで数え切れないほどあったため自然体だった。
 ある者は唖然として、またある者は極々普通に、ある者は固まったまま他の者に引っ張られて、13人は王都に入る審査待ちの列に並んだ。

 30分ほどで順番が回ってきた。

「……兵士が変わっていますね」
「……2か月も経っているんだ。顔ぶれぐらい変わるだろう」

 アレキスは首を傾げたが、アルフォードの言葉にどうにか納得した。

(忘れていたな。ここの兵士の悪事を伝えたんだった。自分に関係がなかったから……)
(へ、兵士さんが変わるのは普通だよね!?偶々前の兵士さんたちが休みの可能性もあるし!)
(待って!この前手紙を送るところを見られていたはず……忘れてくれていると良いけど)
(なんで皆して忘れていたのかしら?商人は記憶力が良いとは聞いていたけど、忘れていることを願いましょう……)

 事情を知っている4人は冷や汗ダラダラだった。

 特にアレキスたちから何かを突っ込まれるようなことはなく、兵士たちから通行料を取られるようなこともなく無事に王都に入ることができた。

「それではギルドに行きましょうか?」

 トレークとスコッチは報酬を受け取るため、マリアたち6人は依頼の事後報告と報酬の受け取り、および素材の買取のため、アレキスはその証明のために連れ立ってギルドへ向かった。

「おっ、マリアちゃん久しぶりだな!帰ってきたのか。そっちの嬢ちゃんは初めて見るな」

 ギルドに入ったところでマリアは顔見知りのCランク冒険者たちに声をかけられた。

「あっ、おじさんたち久しぶりですね。この子はリオナっていうんですよ。新しくパーティーに入ったんです」
「……そっちの坊主もか?」
「はい。グレンっていうんです」

 冒険者たちのリオナとグレンを見る目には、子どもだからといって侮るものはない。それはギルドにいる冒険者たちの大半がそうだった。
 中には話している冒険者たちが去ってから絡もうとした低ランク冒険者たちも少なからずいたが、顔色を変えた他の冒険者たち複数人にどこかへ連れ去られていった。

「そうか。リオナちゃんにグレン、俺はCランクパーティー、《氷雪の嵐》のリーダー、剣士のギルガルドだ。よろしくな」

 ギルガルドは厳つい顔で笑った。その顔は幼い子どもなら泣き出してしまいそうなほど怖かった。

「は、はじめまして、リオナです」

 リオナの声が少し震えていたことも仕方がないことだろう。

「グレンだ」

 グレンはどこ吹く風といわんばかりに堂々としていた。

「俺は弓使いのフェルトだ」
「僕は剣士のダスケルだ。よろしくな、2人とも」
「は、はい」
「ああ」

 Cランクパーティー《氷雪の嵐》、そのパーティーメンバーは皆揃って厳つい顔をしていた。そして同時に子ども好きだった。……いつも子どもに話しかけようとして泣いて逃げられるというある意味報われない者たちだった。だからこそ普通に話してくれるマリアのことをかわいがっていた。
 ちなみに泣かせてしまった子どもの親には後日菓子折りを持って謝りに行く律儀さを持っており、親たちからの評判はなかなか良かった。冒険者たちからも影では『どこまでも報われない男たち』と呼ばれており、応援している者までいる。

「マリアちゃん、噂は聞いたぞ」
「えっ?どんなですか?」
「《魔術姫》ってマリアちゃんのことだろ?なんでもCランク推奨のヨルの森でCランク以上の魔物を倒しまくったって聞いたぞ」
「俺も大規模な結界を張ったって聞いたぞ」
「もう!大袈裟です!」
「おっ、じゃあどこまでが本当だ?」
「私がやったのはちょっとウルフさんたちをいっぱい倒したぐらいです!」
「……マリアちゃんのちょっとってどれぐらいだ?」

 ギルガルドはちょっと多く魔物を倒したぐらいでは異名などつかないことをよく知っていた。

「ちょっと千単位で……」
「「「「「「「それはちょっととは言わねぇよ!」」」」」」」

 《氷雪の嵐》のメンバーと、その話に聞き耳を立てていた者たちの声が綺麗に揃った。

「え~、でもエリザもリオも同じくらい倒していましたよ?」

 マリアは納得がいかなかった。

「「「「「「「「「「自分のパーティーを基準にするんじゃねぇよ!」」」」」」」」」」

 冒険者たちは涙目だった。

「リオ、私の基準おかしいかな?」
「えっ?あ~、うん、ちょっと一般的とはいえないかな」

 冒険者たちはちょっとどころじゃないと叫びたいのを必死に我慢した。

「えっ?じゃあ一般基準だとどれぐらい?」
「……いっぱい?かな」

 冒険者たちはかなりを頭につけて欲しかった。

「……そうなんだ。おじさんたちごめんなさい」
「……いや、わかれば良い」

 まだ突っ込みどころが満載だが、とりあえずそれで良しとした。

「……ところでリオナちゃんだっけ?嬢ちゃんが《死神姫》なのか?」
「う~ん、そうなるのかなぁ?」
「?どうしてだ?」
「だってその名前を知ったの、ブルメルの街を出た後なんだもん」
「……そ、そうか」

 色々と突っ込みどころが多い会話は、アルフォードたちが手続きを終えて戻ってくるまで続いた。なお、《撲殺女王》の名はここでも出ることはなかった。

☆★☆★☆

次回から2種類ほど閑話を挟んで新章に入ります。

※魔術の設定を一部訂正しました。話には全く影響がありません。また、魔術の等級についても追加したので、よろしければご覧ください。
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...