こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

アルフォードの1日(2)

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「……よくよく考えたら、それで取り潰せるなら御爺様がすでになさっていますよね?」

 アルデヒドの追及は止まらない。

「……そうだな」
「それがわかっていてなんでこのような案を出したんですか?」
「……すまない」
「馬鹿なんですか?阿保なんですか?父上はいつもそうやって後先を考えない。いや、後先どころか前提さえもですね。それで解決できたら、こんなに苦労していませんよ」
「……そうだな」

 次第に罵倒が混じり始めた。

「そもそもなんで視察で父上自らが行かれるのです。そんなもの適当な騎士にでも頼めば良いではないですか」
「い、いや、騎士では舐められるし……」
「今回の件で言えば、騎士の方が兵士より役職は上です。そんなことだから仕事が溜まるんです」
「い、いやしかし、今回は裏に貴族がいてだな……」
「それぐらい、報告を受けてから父上が動いても十分なことです。それとも騎士団には自分の信が置ける者が1人もいないと?」

 段々と国王の威厳がなくなっていく国王だった。

「い、いや、そのようなことは……」
「それではなぜです?」

 国王は冷や汗ダラダラだった。

(自分の目で確かめないと安心できないんだもん。仕方ないじゃないか!でもアルに正直に言えば、また前のようにエンドレスの説教コース。どうすれば……)

 一部の場合を除き(主にベルジュラック公爵家関係)、優れた才覚を発揮する国王だったが、中身はかなり残念だった。少なくとも実の息子に口で丸め込まれるぐらいには。

「……リ、リンリーから報告を受けたのだ。裏であの家が関わっている可能性が高いと」

 嘘だった。
 アルデヒドは国王をじっと見つめてから言った。

「……そうですか。今はそういうことにしておきますね」

 アルデヒドは爽やかに微笑んだが、国王にはそれが悪魔の笑みにしか見えなかった。

(誰だ!?あの可愛かったアルをこんな性格にしたのは!?)

 国王は涙目になりながら、黙々と書類を減らしていった。

(後で要確認……だな。どうせ嘘だろうが)

 エルドラント王国国王サンドライト。彼はすでに息子に自身以上に性格を熟知されていた。
 その晩王の寝室からは国王の泣き叫ぶ声が聞こえ、翌朝目を赤く腫らしていたというが、それはまた別の話。王妃の機嫌が1週間ほど悪かったことも余談だ。その裏で何があったのか、深くは語らない。ただ、アルデヒドとクリスティーナ、両者の仲は非常に良いとだけ言っておく。

☆★☆★☆

補足

国王とアルデヒドは別に仲が悪いわけではない。半分罵倒混じりのアルデヒドの言葉の数々はなんでも自分でやらないと気が済まない国王の体を心配してのこと。国王もそれは理解している。ただその反動か、アルデヒドの私的なことでは揶揄うネタを見つける度にわざわざ呼び出して揶揄っている。

補足2

アルの口調はその時の立場で変わる。王子モードの時は基本的に敬語。この切り替えは無意識の癖だったりする。国王は密かに二重人格ではないかと思っている。
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