こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

アーティスの受難(5)

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「グレン」
「……なんだ?」

 アーティスの呼びかけにグレンは訝し気に振り返った。

「……手の内を全て晒すな」

 暗に魔術は使うなと言ったつもりだった。その言葉でグレンがどれだけ察してくれるかは半ば賭けだった。

「わかった」

 それでも今のアーティスにはそれ以外とる道がなかった。
 別に冒険者が他の者に手の札を晒さないことは珍しくない。デリーたちもただの念押しだろうと特段気にはしなかった。

 さらに進むこと5分ほど。一行はようやく目当てのファイアバードを発見した。

「……いたぞ。アーティス、頼む」
「……わかった」

 アーティスはいつものようにアイテムポーチから弓矢を取り出すと、矢をつがえた。そして慎重に25メートほど先の木の上で羽を休めているファイアバードに照準を絞った。
 その脇でグレンも槍を取り出し構えた。

ザシュッ

 放たれた矢は狙いと寸分違わずに羽の根元に命中した。だが──。

「……効いてないか」

 矢はファイアバードに当たると燃え上がった。そして目に怒りの炎を燃やしてアーティスたちの方に飛び立った。そしてアーティスたちの頭上まで来ると大きく翼を羽ばたいた。

「っ!?まずい!避けろ!」

 すると、翼から拳大の火の球がいくつもアーティスたちに降り注いだ。

「チッ!?」

 アーティスは大きく前に跳ぶことで、グレンは器用に火の球の間をぬうことで避けきったが、デリー、ロン、リンの3人は避けきれず大なり小なりいくつも火傷を負った。

「お前らなんで今のが避けられるんだよ!?」

 アーティスもグレンもデリーの叫び声は無視して自身の武器を構えた。それを見てロンとリンも慌てて武器を構える。

(デリーさんは不合格かな。状況の判断ができていない。戦闘中に他のことに気をとられるなんて。他の2人は……おまけで合格ってとこかな)

 アーティスはすでにもう2度と依頼を受ける気はなくなっていた。

 牽制の意味で続けざまに矢を放ちながら、グレンに目で合図した。
 グレンは小さく頷くと、手にしていた槍を大きく振りかぶった。

「とぅ!」

 少々間抜けな声とともに放たれた槍はほぼ垂直に飛び、アーティスの矢に意識が集中していたファイアバードの頭を綺麗に吹き飛ばした。グレンは重力に従い落ちてきたファイアバードを両手でキャッチした。

「なっ!?」

 デリーは驚愕したが、それだけでは終わらなかった。

「あっ、デリーさん。危ないから1歩前に出てください」
「?何だってんだ?」

 アーティスに言われ、首を傾げながら数歩歩いた次の瞬間──。

ザクッ

 天から降ってきた槍が先ほどまでデリーがいた地点に突き刺さった。

「「「……はっ?」」」

 デリーたち3人は固まった。
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