こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

グランファルト子爵家の改革(2)

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「なんだって!」
「嘘だろ……」

 グランファルト子爵家の一室で次男ガルティスと三男アーノルドは驚愕の声を上げた。

「残念ながら本当のことだ。そしてアーティスは今現在逃走中だ」

 ギルゲルムから今の状況を聞かされたところだった。

「アーティスは今回が10回目だってわかってるの?」
「……それはわからん。そろそろだとは思っているだろうが」
「……そう」

 ガルティスからの質問にギルゲルムは率直に自分の予測を答えた。

「……とりあえずさっさと親父と当主交代をすれば良いんだろ?」
「アーノルド、せめて父上か父様と呼びなさいと前に言ったよな?あんなんでも一応僕たちの父親なんだからな」

 ギルゲルムはアーノルドを睨んだ。

「……わ~てるって」
「……アーノルドとは一度じっくりとお話しなければいけないみたいだね」

 ガルティスは柔らかく微笑んだ。

「汚い言葉を使ってすいません!兄さん!」
「うん、わかれば良いよ」

 ガルティスは怒れば怒るほど笑みを深くする。アーノルドにとってガルティスの笑顔は恐怖の代名詞だった。

「それで例の計画を実行に移す日が来たわけだがな……。ただ」

 ギルゲルムは何事もなかったかのように話を戻した。

「「ただ?」」

 2人はオウム返しに尋ねた。

「……どうも王家の方で近々大規模な粛清があるようだ。もしかしたらうちも王家に反意ある者として粛清の対象になるかもしれん。そこは覚悟しておいてくれ」

 アーティスがアルフォードの友人である限り、そのようなことはあり得ないのだが、兄たちはそのような事情は知らなかった。
 2人は神妙な顔で頷いた。

「わかった。でもそんな機密情報、どこで手に入れてきたの?」
「……内緒だ。いずれ教えてやる」

 ギルゲルムは冗談めかして笑った。

 その後は話が反れることもなく、計画の最終調整と確認をしていった。

「……よし、実行は早い方が良いだろう。すぐに動くぞ」
「わかった。アーティスも可哀そうだしね」
「ちょっと待て!なんでアーティスの穴を俺が全部埋めなきゃなんねぇんだよ!?」

 ガルティスは溜息を吐いた。

「先ほどのお仕置き」
「うっ」

 にっこりと笑ってそう言えばアーノルドは静かになった。

「……それと、自分のことは僕か私と言いなさいと何度も言ったよね?」

 ガルティスの笑顔が満面の笑みと呼べるものに変わった。

「……はい」

 ギルゲルムはそんな2人を見ながら思う。

(2人の名前って、絶対逆の方がしっくりくるよな)

 アーティスはともかく、兄たちの方はそんなやり取りができるだけの僅かばかしの平穏があった。
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