こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

グランファルト子爵家の改革(6)

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「……復讐したいかって?当然じゃろ。儂は……儂はきちんと自分の仕事をこなしていたというのに、あやつは、あやつは……ただ機嫌が悪かったというだけで儂から職を奪った」

 レーリルの目には増悪の炎が踊っていた。

「……それにあの男のことだ。職を失った者も儂以外にも何人もいるんじゃろう?」
「……ええ。お察しの通りです」

 15年前、アーティスがようやく言葉を話し始めた頃、グランファルト子爵夫人、レーナリアは流行り病を患い天に召された。
 最愛の妻を失ったヒエロニムは激しく己を責め立てた。レーナリアが亡くなったのは自分に力がなかったからだと。ヒエロニムが野心を持ち始めたのはその頃だ。
 レーナリアが存命の頃は今の姿からは想像ができないほど温厚な人物だった。だがレーナリア死から1月が経った頃からヒエロニムの性格はガラリと変わった。その時のことをガルティスはよく覚えていた。
 優しかった父親は使用人に当り散らすようになり、少しでも気に食わないことがあれば辞めさせた。中には見限り自分から屋敷を出ていった者もいた。今屋敷にはその当時の使用人は1人もいない。
 そのあまりの変貌ぶりにガルティスは怯える2人の弟を宥めるだけで精一杯だった。当時7歳という年齢を考えればそれだけでも凄いことかもしれない。
 ギルゲルムはそんな弟たちと使用人たちを守ろうと、ただ1人ヒエロニムに立ち向かった。だがただの10歳の子どもにできることなどたかが知れており、弟たち物理的な被害が及ばないようにすることしかできなかった。
 当時3歳と1歳だったアーノルドとアーティスはその当時のことを覚えていない。2人にとって父親とは今の傍若無人の男だった。
 ギルゲルムとガルティスは悔やんでいた。もしあの時ヒエロニムの変貌の予兆を少しでも感じ取れていたらと。もしもっと力があったらと。
 その日からギルゲルムは一切の涙を人に見せなくなった。ガルティスも笑顔という仮面を被るようになった。
 だがそのようなことがあっても、これだけ長い間ヒエロニムを放置していたのはいつかもとの心優しい人物に戻るのではないかと淡い期待を抱いていたのかもしれない。
 レーリルは当時グランファルト家で執事長として働いていた。この兄弟が母親の死から立ち直れたのは彼の存在が大きい。

「……実は僕たち、あいつを、あの男からグランファルト子爵の位を取り上げようと思っていまして。協力していただけますか?」
「……それはいったいいつ?」

 ガルティスはニッコリと笑った。

「すでにあいつは縛って屋敷に放置してあります。邪魔する使用人も縛り上げて別室に捕らえてあります」
「……それでは儂に何をしろと?」
「使用人、長く続いている者ほど裏社会の人間とくっついているんですよね。この際全部入れ替えようかと思いまして」

 レーリルはその言葉だけでその先の言葉を察した。

「……元のように戻ってきて欲しいと?」
「ええ。使用人を一から育てるのは大変ですし、あいつの被害者への僕たちのせめてもの贖罪ですよ」
「……あやつの頬に1発入れてやっても良いかの?」
「ええ、それぐらいでしたら」

 ガルティスはそれぐらいお安い御用だと頷いた。
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