こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第七章 それぞれの過ごす日々

アーティスの受難(12)

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 飛んでくる警備兵の姿を視界の端に捕らえ、面倒なことになる前に退散することにした。目を軽く合わせると3人は各々動き始め、警備兵が到着する前にその場から立ち去ることに成功した。
 人混みをかき分け、ようやく人だかりの中心に到着した警備兵たちが見たのは頭に大きなこぶを作り、倒れている冒険者の姿だった。頭を抑えて呻いている。

「おい!何があった!?」

 冒険者は警備兵の姿を見てホッとした顔をした後、ガタガタ震え始めた。

「な、何でもない!」

 すでにこの冒険者にとってアーティスたちはトラウマとして刻み込まれていた。

「……何でもないっていう顔じゃないぞ?」

 その後警備兵たちがいくら訊いても彼は何でもないと繰り返すだけだった。辺りにいた人も彼が何も言わないならと、黙秘を貫いた。

◇◆◇

「……ここか」
「存在は知ってはいたけど、実際に来たのは初めてだね」
「?」

 3人の目の前にあるのはレンガ造りの建物だった。サイズは通常の家の数10倍もある。

「すいませ~ん!」

 入り口で大きな声で呼びかけて出てきたのは黒いベールを被ったシスターと子どもたちだった。

「……兄ちゃんたちって冒険者ってやつか?」
「お兄さん、もしかして貴族?」
「えっ?冒険者!ドラゴンを倒したことある?」

 主に男の子たちはアーティスとグレン、女の子たちはアーノルドに群がった。

「はいはい、皆さん。困っておられますよ。久しぶりのお客さんが嬉しいのはわかるけど、質問は後にして差し上げてね」
「「「「「「「は~い!」」」」」」」

 シスターは軽く溜息を吐いた後、3人に向き直った。

「……この孤児院に、どのような御用でしょう?」
「んっ、ああ。今うちで使用人が不足していてな。必要最低限は何とかなるんだが、何分年寄りが多くてな。今のうちに後進を育てる必要がある。それで何人か使用人として引き取りたいと思ってな」

 流石のアーノルドも、女性相手には多少配慮したようだった。

「……どこの家の方でしょう?」

 だがシスターの顔には警戒の色が浮かんでいた。

「ん?ああ、まだ名乗っていなかったな。私はアーノルド・グランファルトだ」

 そんなアーノルドを見ながらアーティスは思う。

(なんでさっきその口調ができなかったんだよ!?)

 当然といえば当然のことだった。

「……グランファルト…子爵家の方?」
「ああ」

 シスターの顔は恐怖で引きつっていた。

「お、お断りします。あのような家にやるような子はここにはおりません!」

 その目には確固たる意志が宿っていた。
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