こうして少女は最強となった

松本鈴歌

文字の大きさ
285 / 464
第七章 それぞれの過ごす日々

しおりを挟む
「失礼しま……えっ?」

 アーティスはアーノルドに続いて案内された部屋に入り、そして国王の姿を捉え固まった。

「アーティス、入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 グレンを自分の従者として連れてきたにも関わらず、普段と態度も口調も同じことに気づくことはなかった。本来ならばこの数日間の努力が無駄だったことに嘆いていたことであろう。

「……この空気は何ですか?」

 ようやく落ち着きを取り戻し改めて部屋の様子を見れば、室内はおかしな空気が流れていた。なぜだか国王が怯えている。ギルゲルムは普段と変わらない。

「……交渉が纏まったところだ」

 国王の内心は穏やかではなかった。どんな者たちが来るのかと気が気ではなかった。だが、アーティスがアルフォードから聞いていた話の通りの人物であろうことはすぐにわかった。しかし問題は──。

「……ギルゲルム、なかなか個性的だな、お前の弟は」
「……褒め言葉として受け取っておきます」

 アーノルドは落ち着きなくキョロキョロと室内を見回していた。
 ギルゲルムの微笑みは僅かに引きつっていた。

(これはあとでガルティスに頼んで説教だな)

 ギルゲルムは脳内メモのガルティスに頼むことリストに追加した。

「アーティス、そっちはどうだった?」
「……断られました。どうもうちに関してあまり良く思っていないようで」
「……仕方ないさ。それぐらい想定内だしね」

 ギルゲルムはアーティスに笑いかけたが、それはどこか寂しげだった。

「……でも当主が代われば検討すると言質は取りましたから」
「……そうか」

 そのやり取りは国王にはとても微笑ましく思えた。

(うちはとても仲が良いとは言えないからな)

 ランフォードは何よりも自分を優先し、協調性というものがなかった。ジョージアは貴族たちの体に良い傀儡。自分でものを考えようとせず、貴族たちに吹き込まれたことをすべて真実として鵜呑みにしてきた。唯一リオンとアルデヒドの仲だけは良好だったが、リオンが亡くなってからはそのような光景を目にする機会はなかった。

「……アーティスといったか?」
「は、はい!」

 何の前触れもなく名を呼ばれ、体を固くした。

「お前の話は常々聞いている。今のえにしを大事にしろ」

 誰からは言われなくてもわかった。

「……はい」

 グレンはその言葉に少し羨ましそうだった。

(僕は……家族の縁なんてないからな)

 今さら悲しいとは思わないが、こういった時だけ少し虚しくなった。

「グレン、とはお前のことだろう?」

 不意に話しかけられ、グレンは少し俯いていた顔を勢いよく上げた。
 国王は優し気に微笑んで言った。

「……お前のことも話は少しだが聞いている。今周りにいる者を大事にしなさい」

 その言葉はグレンの心に強く響いた。

「はい」

 今は1人ではない。そのことを思い出させてくれた。
 グレンの目には僅かに涙が溜まっていた。

(……あの子何者だ?)

 グレンについて何の予備知識のなかったギルゲルムの中で、謎が深まっていった。なお、アーノルドは特に気にしてはいなかった。その辺りに性格の差が出ている。
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...