こうして少女は最強となった

松本鈴歌

文字の大きさ
286 / 464
第七章 それぞれの過ごす日々

ヒエロニムの行く末(想定版)

しおりを挟む
 その後軽く国王と世間話をした後、アーティスたちは城を辞した。

「……で、その子は何者だ?」
「えっ?」

 屋敷までの道中、丁度全体の三分の一ほどを歩いたところで不意にギルゲルムはグレンを指し示しながらそう尋ねた。

「いや、僕はその子とは初対面だろ?」
「……あっ」

 言われて初めて兄たちにグレンを紹介していないことに気がついた。

「ごめんなさい。忘れたてた。こいつはグレン。今冒険者として活動している時に同じパーティーを組んでいる」
「初めまして、グレンです」

 グレンはにこやかに微笑んで頭を下げた。

「……グレン、今さら猫を被っても遅いぞ」

 アーティスのその言葉にギルゲルムは吹き出しそうになった。

「……ご丁寧にどうも。改めまして、僕はアーティスの長兄、ギルゲルム・グランファルトだ。無理に丁寧な言葉を使わなくても別にいつも通りで構わない。で、そっちのとても貴族には見えない行動をしているのが三男のアーノルドだ」

 ギルゲルムは馬の手綱を引いて歩きながら、馬にちょっかいをかけているアーノルドを何とも言えない顔で見た。

「……そうか。よろしくな」

 グレンも視線を追ってその姿を見たが、無視することを決め、視線を逸らした。アーティスは溜息を吐いている。

 屋敷に着くとすでにガルティスは戻っていた。

「……思ったよりも集まったな」

 ギルゲルムのその言葉通り、屋敷に入ってすぐの玄関ホールにはガルティスの他に10数人の男女がいた。誰もが奇麗とは言えない服で、そこがちぐはぐな印象を与える。

「思ったよりも僕らに好意的な人が多かったからね」
「……あっちの殺気立っているやつらは何だ?」

 ギルゲルムはレーリルを筆頭とした比較的年配の者たちの殺気に頬を引きつらせた。

「ああ、父上に一発入れたいらしいよ」

 一発で済ませるなんて優しいよねと、ガルティスは笑った。

「……そうか」

 ギルゲルムの頭には一発で済むのかという懸念が頭を擡げていた。

「……流石に殺されそうになったら止めるよ?」

 その言葉にホッとした。だが──。

「……だって父上には今までの行いの分を馬車馬のように働いて返して貰わなきゃいけないからね」

 にこやかに続いた言葉に固まった。

(父上……これもあなたが悪いんです。自分の行いを心から反省されれば助けて差し上げますから……)

 そっと心の中で両手を合わせた。だがヒエロニムが自らの行いを悔いることがないだろうと、どこか確信めいた予感があった。
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...