こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第八章 ベルジュラック公爵家

ベルジュラック公爵

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「……ここだな」
「……ええ、そのようです」

 誰も怪我1つしていないにも関わらず、全員がどこかホッとしたような疲れた笑顔を見せていた。

「……あれは……ない。なんか精神的疲労が酷いんだけど……」
「……気持ちはよくわかる。あれは酷かった」

 ここまで皆が疲れているのはここまで来る道中にあったことの所為だ。ナイフを持った5~8歳ぐらいの幼子たち(全員奴隷)に突進されたり、階段を登ったところで床が抜け、下の階に落とされたりと、4人にとっては肉体的には大したことではなくとも、精神的には色々と辛い。

「……とにかく入るぞ。ようやくここまで来たのだからな」

 サンドライトはフードを深く被り、エルマンも同じようにしたことを確認すると静かにドアを開いた。ちなみに公爵がこの部屋にいることは途中で使用人たちから訊き出してある。

 開いた扉の先には重厚な木製の執務机、それに豪奢でありながらどこか気品を感じるような応接セットが置かれていた。そんな部屋に太った見苦しい男がいるのが酷くアンバランスだった。

「っ!?何者だ!?ここがどこだと思っている!?」

 公爵は開かれた扉を驚いたように見つめ、勢いよく座っていた椅子から立ち上がった。

「えっ?どこって……ベルジュラック公爵の屋敷じゃないの?」

 どこか小ばかにしたようなマリアの物言いに公爵は顔を真っ赤にした。

「……あなたこそ私を誰だと思っているのよ」

 マリアはノリノリだった。恐ろしいくらいに生き生きとしている。

「そんなこと知るか!?それに貴様が誰だと関係ない……貴様らはここで死ぬのだからな」
「……うっわ~、ホント救いようがない。……アル、もうやっちゃって」
「……かしこまりました。姫様」

 実はあまりに精神を抉るようなことの数々にサンドライトが途中で切れ、急遽このような茶番劇を演じることとなった。

 アルフォードは軽く頭を下げるとどこからか投げナイフを取り出し、無造作に投げた。

「ひっ!……私を誰だと思ってる!?こんなことをして許されると思っているのか!?」

 ナイフは公爵の顔のすぐ脇を通り過ぎて壁に突き刺さった。

「……誰って、マクシミリアン・ベルジュラック公爵でしょう?違うの?それにね……」

 マリアは一旦言葉を切って意味深に公爵を見上げた。

「……許されるも何もこれは国王様の指示だよ?」

 そして首を傾げながら止めを刺した。

「……あの無能な邪魔者の指示だと」

 その言葉にサンドライトの肩が小さく動いた。

「……邪魔者?あなたにとってはそうなんだね」

 マリアは蔑みの眼差しを向けた。それはどこかかわいそうなものを見るようだった。

「事実を言って何が悪い!?」

 その後公爵の自分勝手な罵倒が続いた。
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