こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第八章 ベルジュラック公爵家

断罪(5)

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 その場の空気がさらに緊張を帯びたことに気づいているのかいないのか、宰相の言葉は淡々と続く。

「成人したばかりの女子を中心とした婦女子への暴行。被害者には未成年の男児も幾人か……。被害届が出ているものだけで100件近いですが、届が出ていないものも鑑みると少なくとも数倍、場合によっては1000件を超える可能性もあります。……相手が貴族というだけで諦める平民も多いそうですから」

 何人か何か思い当たったことがあるのか痛々し気な表情を浮かべる。

「……続けろ」

 国王も顔を顰めたが先を促す。

「はい。後は領内の孤児院への王国からの支給金。その横領ですね。中には完全に援助が打ち切られ、自給自足の暮らしをしているところもあるようです」
「……嘆かわしい。あれは未来ある若者たちへの大事な投資だというのに」

 国王は嘆息し、続けるように言った。

「……皆様も耳にしたことがあると思いますが、6年前の帝国戦における冒険者たちの謎の全滅。その指揮官がマクシミリアン・ベルジュラックであることが判明いたしました。ご存知の通りこの件は他ならぬベルジュラック公爵とその他上級貴族たちの進言により捜査が打ち切れました。それを受けて事実の揉み消しに対する罪が加えられます」
「……その件はそれだけではなかったはずだが?」

 宰相は深く頷くと続きを話し始める。

「……犠牲者の中にはかの有名な『神速』を始めとしたAランク、およびBランクの上位の者が複数います。それを鑑みますと……」
「……意図的に内部の者に殺された可能性が極めて高い、か?」
「はい」

 室内の空気が重かった。いつの間にかやって来ていた侍医がマリアとアルフォード、両者を隣室に移動させるようにと指示する声がやけに響いた。

「……加えて、被害者遺族に遺品として回収した物の中には似てはいるが被害者の物ではないという訴えも何件か……これはマジックアイテムが中心ですね」

 国王は静かに目を伏せ、頭を押さえた。

「……遺品を盗んだのか」

 何人もが沈痛な面持を浮かべた。

「……らが、あいつらが悪いのだ!小汚い冒険者などという分際でこの私の言うことに文句をつけるからだ!」

 黙ったままだったマクシミリアンがここでようやく口を開いた。

「挙句の果てにはこの私の逆らう始末。……死んで当然だ。それにマジックアイテムなども平民などよりこの私のような人間に使われた方が良かろう?」

 マクシミリアンは高笑いし、その場にいた者は皆顔色を変えた。
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