こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第八章 ベルジュラック公爵家

断罪(6)

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「当然?ふざけるな!上級貴族だからって何でも自分が正しいというんだったら大間違いだ!」
「そうだ!権力を振りかざせばどうにでもなると思っているんじゃない!」

 ブチ切れたのは下級貴族──それも下級中の下級の貧乏貴族たちだった。

「自分たちがこうして暮らせるのも、領民の暮らしがあってこそだ!それが黙って聞いていればなんだ!」

 彼らは自分たちの暮らしがどれだけ領民たちに助けられているのか理解していた。それと同時にどれだけの負担を強いているのかも……。
 だからこそ彼らは他の貴族にどれだけ笑われようとも衣装1つあつらえることすら躊躇い、農民たちと変わらない食事をし、時には農民に混じって鍬を握ることすらあった。不作の年などはその財を切り崩すことさえあり、領民に慕われている。
 それでも村では養いきれず、冒険者への道を選ぶ者を何人も見てきた。そしてその訃報を聞くことも珍しくはなく、我がことのように嘆くこともあった。

「お前らみたいな奴がいるから、俺らは白い目で見られるんだっ!」

 そして何よりも豊作の年に日頃のお礼だと、通常よりも多めに税を納める領民たちの姿を、他領の者や行商人たちに向けられる目は冷ややかで、どうせお前らが命令しているんだろうと言っているようで、それが無性に物悲しかった。

「黙れ!ただの温情で貴族の末席に名を連ねているだけの蛮族が!」

 マクシミリアンは必死に言い返したが、その言葉は彼らには何の感情も抱かせなかった。ただただ呆れるだけだ。

「蛮族?我々が?それを言ったらあなたは……野を駆ける獣以下だ。……おっと、これでは動物に失礼ですね」

 もはや怒りという名の感情をぶつける価値もないとばかりに、その声はどこまでも平坦で、感情が全く読み取れなかった。

「黙れ黙れ黙れっ!」
「……それに今のこの状況であなた自身にどのような力があると?……あなたが馬鹿にしている平民たちの方がよっぽど力を持っていますよ」

 マクシミリアンに向けられた目に浮かんでいるのは憐み。それも人間に向けるような類のものではなく、例えるならば今にも死にそうな小動物を見る時のものと同種の眼差しだった。

「黙れと言っている!」

 その言葉は叫び声に限りなく近かった。

「……まだ自分の立場がわかっていないんですね」

 だがそれに返ってきたのはどこまでも冷たい視線だった。

「……国王様、お騒がせいたしました。話を遮ってしまい、申し訳ございません」

 諦めの色を浮かべると彼らは静かに頭を下げた。

「いや、構わぬ。お前たちが怒らなければ遅かれ早かれ他の者が怒り出していたであろうからな」

 国王の表情はどこまでも穏やかだった。そして彼らはそのことにホッと息を吐くのだった。
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