こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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閑話

遺品の行方(4)

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「……剣もあるがどうする?」

 そう言って見せられたのは一見何の変哲もない鉄剣。鍔の部分に龍とその頭の上に乗る小鳥、そしてその周りをお互いに尻尾を咥えあった蛇の彫刻入っていた。それぞれの目の部分にだけ金、青、緑の石がはまっている。長さは通常よりも長く、マリアの今の身長で扱うことは無理そうだった。

「……一応受け取っておきます」
「そうか。それと1つ頼みがあるのだが……」
「……国王様が私にですか?」
「ああ」

 国王の頼みと聞いて思わず身構える。

「……学園もそろそろ夏季休業だろう?」
「待ってください。夏季休業って何ですか?」

 前置きから知らない言葉が出て戸惑う。

「……夏季休業を知らなかったか」

 国王もまさか知らないとは思わず瞠目する。

「そろそろ夏だろう?学園は夏季休業といって夏には2月ほどの長い休みがあるのだ」
「……なんで夏になると休みになるんですか?」

 マリアにはそれが理解できなかった。基本的に毎日働いて休みは週に1、2回。それが常識だった。

「そのようなことは私も知らん。大方暑いと勉学に集中できないとかそのような理由ではないか?詳しいことは学園の教師にでも訊け」
「……そうですか。それで休みがどうしたんですか?」

 納得はできてはいないが、とりあえず話の続きを訊く。

「……ちょっとアルと旅行に行ってくれないか?」

 言い辛そうに頼まれたのは行き先も不明な旅行だった。

「……はい?」

 言葉は理解できても内容が入ってこない。

「ああ、もちろん他の者も誘って良いぞ」
「……えっと、旅行ってどこにですか?」
「行先はお前に任せる。移動方法もな。最近あいつは少し働き過ぎだ。息抜きをさせてやってくれ」
「何も決まっていないのが一番困るんですけど……。それにアルは了承しているんですか?」

 それが一番の気がかりだった。本人の了承を取るのは一番最後、そんな予感がした。

「……まだだが大丈夫だ。絶対にあいつは了承する」

 国王は謎の自信に満ち溢れていた。

「……それなら良いですけど、アルが断ったら知りませんよ」

 マリアは渋々了承した。一般市民なマリアに国王の頼みを断れるはずがなかった。
 普通の一般市民は国王から直接頼みごとなどされることはないのだが、そんなことはマリアの頭にない。

「わかった。それで良い。ああ、なんだったら侍医を連れていくか?」
「……レリオンさんをですか?良いんですか?」
「偶には侍医にものんびりして欲しいからな。心配せずとも代わりの者はいる。2月ぐらいなら大丈夫だ」
「……そうですか」

 マリアは見たこともない代役の人に同情の念を覚えた。
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