こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

盗賊の引き渡し

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「これはいったい何事ですか!?」

 街の門に辿り着くよりも先に門の兵士たちが飛んできた。

「賊を捕まえてな。ちょっと気になることがあるので王都の方に送るのは少し待ってくれんか?」

 年長者が相手をした方が良いだろうと、レリオンが代表して答える。

「……賊を捕らえてくださったことには感謝いたしますし、それ相応の報奨金もお渡しいたします。ですが、王都に送ることを遅らせるわけにはいきません」
「どうしてもか?」
「はい。例えどんなに金を積まれようとも。規則ですので」
「……規則とは面倒な。儂は権力を振りかざすことは好まぬのだがな」

 溜息を吐きつつ外していた指輪をはめ直すレリオン。

「この紋章に見覚えはあるかの?」

 そう言って指輪を翳して見せる。

「……そ、その紋章はシュタット辺境伯家の」

 どこのものか理解してくれたことにレリオンは満足そうに頷く。

「その通りだ」
「……貴族様の指輪の偽造は大罪だぞ!ひっ捕らえろ!」
「……えっ?なぜそうなる!?」

 あまりに突然の事態に、抵抗する間もなくあっさりと捕まる一同だった。

「……俺らはどうなるんだ?」
「さあ?」

 盗賊たちは顔を見合わせあった。そしてそのままマリアたちとは別の場所へと連れて行かれた。後には困ったような表情のユニコーンたちだけが取り残される。

「ブルッ?《どうする?》」
「……ブルル《……とにかく長に伝えるぞ》」

 ユニコーンたちが頷きあうと足元に魔法陣が展開される。そしてその姿は光に飲み込まれていった。その光景を目撃した者は幸か不幸か存在しなかった。

◇◆◇

「だから儂が前シュタット辺境伯のレリオン・シュタットだ!確認をとってもらえばわかるはずだ!」

 レリオンは何度目になるかわからない言葉を口にする。
 この場にマリアたちはいない。他の者たちは牢に纏めて押し込められていた。

「……ですから、本人だという証拠を見せてください」

 返答もまったく同じものが返ってくる。

「……その指輪が何よりの証拠だ。そちらこそ何をもって儂を偽者と決めつけるのだ?」
「……前辺境伯ともあろう方が、街道を馬車にも乗らずに大した共も付けずに移動?格好こそ立派ですが、不自然なところが多すぎますね」
「うっ……だがこちらにも事情がある」

 不自然と言われ、事実なだけに言葉に詰まる。

「事情?どのような?」
「……それは答えるわけにはいかぬ」

 国王直々に御忍び旅行だからそのつもりでいろと言明を受けていた。絶対に自分以外の正体を明かすなとも。

「……答えられない?それはあなたが偽者だからではないですか?」
「だから儂が前シュタット辺境伯のレリオン・シュタットだ!」

 そして会話は振出しに戻る。

 結局終わりが見えない尋問は、兵士が疲れきるまで続くのだった。
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