こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

エーデル王国とは

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 重苦しい沈黙が訪れる中、遠くに見えた明かりが段々と大きくなり、一行はついに山の反対側に抜けた。

「あっ、そうだ」

 エルドラント王国側とほとんど変わらない審査を受けた後、不意にアルフォードがそう口にした。

「アル?どうかしたの?」
「大事なことを思い出した」

 アルフォードは神妙そうな顔でそうマリアに告げた。

「大事なこと?」
「ああ。良いか、よく聞け。エーデル王国で買い物をする時は絶対に言い値で金を出すな」
「……えっ?」

 どんなことを言われるのかと身構えていたマリアは、予想よりも大したことがなかったことに少し拍子抜けしたように声を漏らした。

「ふっかけられるってこと?」
「ああ」

 アルフォードは何を思い出したのか声を震わせた。

「エーデルで金払いが良い人間はカモでしかない。マリア、お前は自分が同年代の者よりも金を持っていることを自覚しろ。金を持った子どもなんてネギを背負ったカモでしかない」
「……う、うん。わかった」

 マリアはいったい何があったのかは怖くて訊けなかった。

「値切るのを忘れるなよ」
「う、うん……」

 アルフォードのあまりに鬼気迫る表情にマリアは引いた。他の者たちも呆れたような、困ったような、複雑そうな顔をしていた。

「アル、それぐらいにしておけ。マリアが引いているぞ」

 ギルガルドが溜息を吐きながら話に割り込んだ。

「えっ?」

 アルフォードは言われて初めてマリアが引きつった笑顔をしていることに気がついた。

「あっ、ごめんな。つい……」

 アルフォードは決まりが悪そうにそう謝った。

「……ううん、別に良いよ。他に何か注意事項はある?」
「そうだな……。これは注意事項というわけじゃないが、僕たちはともかく服マリアは新しく買った方が良いかもしれない」
「えっ?なんで?このままじゃ駄目?」

 無駄な出費になるのではないかとマリアは渋る。服は1着でも結構高いのだ。下手な大人よりもお金は持っているのにマリアは変なところで考えが庶民的だった。

「駄目というわけではないが……目立つぞ」
「えっ?」
「向こうとこっちでは女性の服の流行がかなり違う。それに値段自体も……お前が考えているよりもかなり安いと思うぞ」
「えっ?なんで?」
「……技術力の差だな。エーデルは産業がかなり発達しているから、布自体がかなり安いんだ」
「あれ?それならなんでエルドラントだと高いの?」

 マリアは不思議に思う。隣の国なんだから安いのが普通なのではないかと。

「高い関税をかけているんだ。でないと……路頭に迷う人間が大量に出る」
「えっ?」
「今売られているものよりも安くて高品質なものが売られてみろ。布を作っている人間が職を失う」
「あっ」

 マリアはそこまでは考えていなかったと落ち込む。

「いや、普通そこまで考えられないからな」

 ギルガルドが突っ込んだが、誰も聞く者はいなかった。

 ともあれ、ひとまず適当な街で買い物をすることが決定したのだった。
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