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第九章 夏季休業
エーデル王国の街までの道中
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国境からユニコーンたちに揺られることおよそ3時間。ようやく国境から一番近い街、フィマエルが見えてきた。
ここまでの道中、小さな翡翠色の水をたたえる湖や、滝が幾本も流れ落ち、小さな虹を幾重も作りあげる滝壺等、目を奪われるような美しい光景を見ることができたのだが、ユニコーンたちが妙に張り切り過ぎたために、乗っている者たちは振り落とされないようにその背に必死にしがみつくだけで精一杯で、辺りの景色を楽しむ余裕など一切なかった。
「うぅ、気持ち悪い……地面が回ってる気がする」
街まで歩いて10分程の距離でようやく止まったユニコーンから降りると、マリアは口元を手で覆った。
「大丈夫か?」
「う、うん。だいじょ……うぷっ」
あまりの揺れにマリアは完全に乗物酔いをしていた。
心配そうに声をかけるアルフォードの顔色も心なしか悪い。
「無理をするな。少し休め」
「大丈夫だって……」
「いや、どう見ても大丈夫な顔じゃないからな」
「アル坊の言うとおりだ。無理をするな」
レリオンは心配そうに、それでいて厳しい眼差しでマリアを見る。そして荷物から厚地の黒い布を取り出すと適当な地面に敷き、そこに座るように促した。
「……大丈夫」
「いや、ベルちゃんもだいぶ調子が悪そうだぞ」
「えっ?」
大丈夫だと再び断ろうとしたマリアだったが、ギルガルドに背中を指され、慌ててフードの中からベルを出した。
「……ベル、大丈夫?顔が真っ青だよ」
自分よりも明らかに体調が悪そうなベルの様子に、マリアは自分の吐き気は瞬時に吹き飛んだ。
「ダ、ダイ……」
それより先は言葉にならない。
「ベルちゃんがこの状態だ。少し休め」
「……うん」
流石にマリアはこれ以上大丈夫だとは言い張れなかった。素直に頷くと布の上に座り、膝の上にベルを乗せる。
「ベル、大丈夫?」
「ダイジョウブジャナイ……」
ベルはグッタリとマリアのお腹に背を預け、目を閉じた。
「そうだ。……『光よ、彼の者を癒せ、《ヒール》』」
マリアは普段使っているものより汎用性の高い回復魔術を思い出し、ベルに行使した。
「……アリガト」
多少は体調がマシになったのか、頬に赤みが戻る。
「その様子だったらもうちょっと休めば大丈夫かな?」
「ウン」
その後10分程休むと、一行は再び街を目指して歩き出した。
ここまでの道中、小さな翡翠色の水をたたえる湖や、滝が幾本も流れ落ち、小さな虹を幾重も作りあげる滝壺等、目を奪われるような美しい光景を見ることができたのだが、ユニコーンたちが妙に張り切り過ぎたために、乗っている者たちは振り落とされないようにその背に必死にしがみつくだけで精一杯で、辺りの景色を楽しむ余裕など一切なかった。
「うぅ、気持ち悪い……地面が回ってる気がする」
街まで歩いて10分程の距離でようやく止まったユニコーンから降りると、マリアは口元を手で覆った。
「大丈夫か?」
「う、うん。だいじょ……うぷっ」
あまりの揺れにマリアは完全に乗物酔いをしていた。
心配そうに声をかけるアルフォードの顔色も心なしか悪い。
「無理をするな。少し休め」
「大丈夫だって……」
「いや、どう見ても大丈夫な顔じゃないからな」
「アル坊の言うとおりだ。無理をするな」
レリオンは心配そうに、それでいて厳しい眼差しでマリアを見る。そして荷物から厚地の黒い布を取り出すと適当な地面に敷き、そこに座るように促した。
「……大丈夫」
「いや、ベルちゃんもだいぶ調子が悪そうだぞ」
「えっ?」
大丈夫だと再び断ろうとしたマリアだったが、ギルガルドに背中を指され、慌ててフードの中からベルを出した。
「……ベル、大丈夫?顔が真っ青だよ」
自分よりも明らかに体調が悪そうなベルの様子に、マリアは自分の吐き気は瞬時に吹き飛んだ。
「ダ、ダイ……」
それより先は言葉にならない。
「ベルちゃんがこの状態だ。少し休め」
「……うん」
流石にマリアはこれ以上大丈夫だとは言い張れなかった。素直に頷くと布の上に座り、膝の上にベルを乗せる。
「ベル、大丈夫?」
「ダイジョウブジャナイ……」
ベルはグッタリとマリアのお腹に背を預け、目を閉じた。
「そうだ。……『光よ、彼の者を癒せ、《ヒール》』」
マリアは普段使っているものより汎用性の高い回復魔術を思い出し、ベルに行使した。
「……アリガト」
多少は体調がマシになったのか、頬に赤みが戻る。
「その様子だったらもうちょっと休めば大丈夫かな?」
「ウン」
その後10分程休むと、一行は再び街を目指して歩き出した。
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