こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

エーデル王国の流行

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 エルドラント王国の普通の街に比べ、幾分か立派な門を抜けると、そこは様々な色彩が踊っていた。

「わぁ~」

 エルドラントの多くの者が汚れが目立たないことを主眼に置かれた服を着ているのにに比べ、エーデルは暖色系から寒色系、濃色から淡色と、服の色1つとってもバラエティに富んでいた。
 マリアは思わず目を奪われ、その場で足を止めてしまう。
 と、同時に、アルフォードが今の服装では目立つと言った意味を理解した。

「そこに立っていると他の人の邪魔になるぞ」
「……あっ、そうだよね」

 軽く背中を押され、止めていた足を再び動かす。
 街を歩き始めて気がつくことは服の違いだけではなかった。

「この街って水路が多いんだね」
「そうだな。この街に限らずこの国は街中を縦横無尽に水路が走っていることが多い」
「へぇ~。水も綺麗だしすごい」

 大通り沿いにある小舟なら3隻ほど通れそうな幅の水路を見ながらマリアは感嘆の溜息を吐いた。

「洋服屋さんってどこかな?」

 気を取り直してキョロキョロと辺りを見回し、服屋を探すが、それらしい看板は見当たらない。

「さあな。街の人に訊いたらどうだ?街のことなら住んでる人間の方がよく知っているだろうしな」
「うん、そうだね」

 頷くとマリアは目に入った串焼きの屋台に駆けていった。

「すいません!串焼きを……えっと、7本ください」

 とりあえず普通に注文する。

「あいよ。全部で銅貨14枚だが、嬢ちゃんはいっぱい買ってくれたから12枚で良いぞ」
「本当!?」

 思いがけない申し出に思わず歓声を上げる。

「おうよ。俺は嘘は吐かねぇよ」
「ありがとう!」

 マリアは満面の笑みでお礼を言うと、腰のポーチからお金を取り出して渡す。

「今焼くからちょっと待ってな。どうせなら嬢ちゃんも焼きたての方が良いだろ?」
「うん!」

 屋台の店主はそう言って新しい串を取り出すと、マジックアイテムらしき箱から取り出した肉を刺し始めた。

「あっ、そうだ。おじさん、この街でどこかお薦めの洋服屋さんってない?私、エルドラント王国から来たばかりで……おじいちゃんがこの国なら服も安いから好きなだけ買ってくれるって言ってたの」

 焼けるのを待ちながらマリアはそう尋ねる。

「服屋か……嬢ちゃんぐらいの年齢の子どもだったら、ここからは少し遠いいが『フェアリー・ガーデン』っていう店が値段も手頃だし良いと思うぞ」
「それってどこにあるお店?」
「このまま大通りを真っ直ぐ進んで、『フラワー・スノウ』っていう店の角を右に曲がって、4つ目の角を左、2つ目の角を右に曲がって真っ直ぐ進むと道が3つに分かれているから真ん中の……」

 あまりにも説明が長すぎて流石に1度聞いたぐらいでは覚えきることなど不可能だった。

「……そんなに覚えられないよ」
「おう。俺も無理だと思うぞ」
「……じゃあなんでそんなお店を教えたの?」

 意地悪だと、マリアは頬を膨らませた。

「んっ?なんだ嬢ちゃん、水上タクシーを知らないのか?」

 店主は不思議そうにマリアを見た。

「水上タクシー?」

 聞き慣れない言葉に思わず首を傾げる。

「ああ、そういえばこの国に来たばかりだと言っていたな。この街はあっちこっちに水路が通っているだろ?」
「うん」
「その水路を使って目的地まで舟で運んでくれる。無論金はかかるが、1回あたり銅貨3、4枚だから使うやつも多い」
「……そんなものがあったんだ」

 マリアは焼けた串焼きを受け取ると、お礼を言ってアルフォードたちのところに戻った。

「はい、皆で食べよう。あっ、ベルは私と1つね」

 1人1本ずつ渡すと本題に入る。

「『フェアリー・ガーデン』っていう店がお薦めだって。ちょっと距離があるから水上タクシーを使った方が良いって言われた」
「そうか、じゃあ行ってみるか。確かあっちで乗り場を見た記憶が……」

 そう言って歩き出したアルフォードの後を、一行はぞろぞろと付いていった。
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